風凪ぐ時(5)
目が覚めると、俺の顔を心配そうに覗いているディンの顔が見えた。
「!! 小童!! クウゴが目を覚ましたぞ!!」
俺は上体を起こす。偽グランディンに斬られた傷は塞がっていた。オーキが治療した様だ。
「ディン…もう大丈夫なのか?」
「ああ、小童が呪いを解いた。その…済まぬ、世話掛けたな」
「そっか…やっぱ凄いなアイツ」
そうして俺は周囲を見回す。ソニアの姿がどこにも見当たら無かった。
「…ソニアは、どこに居るんだ? 俺を助ける為に、一緒に居たんだが…」
「…」
ディンは何故か黙り込んだ。その表情は、どこか暗かった。
「クウゴ、ソニアは…」
「おお、気が付いたんだな? 良かった良かった」
声の方へ振り返ると、オーキがこちらに向けた歩いてきた。
「オーキ、ソニアは…?」
「…」
俺が言うと、オーキは一度目を逸らした。そして、もう一度正面を向いて、影の差した表情で俺にこう告げた。
「…お前は、見ない方が良い。俺達で『回収』しとくから」
「!!」
オーキの言葉から、全てを察した。認めたくない現実を。
俺は立ち上がり、オーキが今来た方向へ向かおうとする。それをオーキは羽交い締めにしてきた。
「馬鹿野郎が…!! おいディン!! お前も止めろ!!」
(ソニア…!! ソニア!!)
「落ち着かぬか馬鹿者!!」
俺を抑えるのにディンも加わる。しかし、俺は二人を振りほどき、走り出した。
「くそっ…待てクウゴ!!」
森の中を走って行くと、その先で、俺は見た。
偽グランディンが放った滅界七星で消し飛んだ大地と、半身を消し飛ばされて息絶えていたリイン。
そして、リインと同じくその半身を失っていたソニアが、その傍らに横たわっていた。
「あ…ああ…ああああ…!!!」
脳が、拒絶した。目の前の光景を、俺に突き付けられた現実を、ソニアの、死を。
「あああああああああ!!!!!」
喉が焼ける程に、俺は咆哮した。
「…だから言ったんだ」
「クウゴ…」
初めて経験した、大切な人の死。
その痛みは、俺の心を怪我や呪いよりも苛み、責め続けた。
その痛みに藻掻き苦しみ、俺は数刻の間、その場から動けなかった。




