暗礁(2)
その夜、俺達はリタ王女のご厚意に甘え、アイオーン城に泊まる事になった。
「皆様、今日は本当にありがとうごさいました。国を代表してお礼申し上げます」
会食の場にて、リタ王女は深々と俺にお辞儀をした。
「復興の目処が立って本当に良かったです。良かったですね、他の国から支援を受けられて」
「はい…これも全てクウゴ達のお陰です。本当に、何とお礼を言ったら良いか…」
「気にしないで下さい、俺は勇者ですから…」
俺はそう言って笑顔で返した。リタ王女もそれを見て笑っていた。しかし、徐に神妙な顔つきになり、話を続けた。
「…それで、話は変わるんですが、実は各国から支援を受けた際に、こんな話を聞きました…魔王グランディンの拠点が発覚したと」
「!! 何ですって…!!?」
「今、エルーシャとグラナとの共同作戦を立案中です。もしこれでグランディンを討ち取る事が出来ればら、この戦争は人間の勝ちで終わりです」
確かに今、魔族側は甚大なダメージを受け、その上で頭である偽グランディンを討ち取れるのであればそうなるたろう。戦争も、終わる可能性が高い。
もう人類側もあまり余裕が無い、三国が結束して偽グランディンを倒そうとするのも納得だった。
「そこで…言いにくい相談なんですが、クウゴ達にもこの作戦に参加して欲しいと思っています。どうでしょうか…?」
「成る程…」
根城が割れるタイミングが良すぎる等の、若干のきな臭さは感じるが、もう人類には余裕も無いのも事実。それに、
「あの村に俺の親戚が居たんだが…皆死んじまった! くそっ…!!」
さっきの街の住民の話を思い出した。もうこんな事、終わりにしなければならない。俺は意を決し、リタ王女に頷いた。
「…わかりました、参加しま」
「嫌です」
俺の言葉を遮る様にソニアが言った。
俺達はソニアの方を向く。そして、ソニアはキッとリタ王女を睨みつけていた。
「…ソニアさん?」
「…陰でクウゴさんの事を化け物扱いしておいて、必要な時だけ手を貸して欲しいって…そんなの、都合が良すぎませんか? クウゴさんが、どんなに苦しんでるのかも知らないで…」
「そ、ソニア!! あれは別にリタ王女が言ってた訳じゃ…!!」
俺が言い切る前に、ソニアが席を立ち、リタ王女に向けて言い放った。
「クウゴさんは…貴女達の使い捨ての道具でも兵器でも無いんです!! それを貴女達は…!!」
「ソニア!!」
俺が声を上げると、ソニアはビクッと体を震わせ言葉を詰まらせた。そして、会食の間を飛び出していった。
「ソニア!! すみませんリタ王女、ちょっと失礼します!!」
俺もソニアを追って、部屋を出た。
「…何があったかを、聞いても良いですか?」
「…ああ」
ソニア達が飛び出した後、我はリタ王女に先程の兵士達の話を説明した。
「…そうですか。すみません、うちの兵士達がそんな事を…」
「いや、わからんでも無いさ。なんせこの国は一度、勇者によって潰されかけてるのだからな。それはクウゴもわかっている。ただ、ソニアは…」
「大切な人がそんな風に言われたら、ああなるのも無理は無いですよ…私も、クウゴの事をどこか頼り過ぎていた所があったのは事実ですし」
「…リタ王女、今回の作戦の参加、少し時間をくれないだろうか? 奴等には時間が必要だ」
「…わかりました。他の国にもそう通達しておきます」
こうして、この日の会食はお開きとなった。




