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暗礁(1)

「リタ王女、これは?」


「それはあちらに運んで下さい」


「わかりました」


俺は返事をして、リタ王女の指示した場所に物資を運んだ。


現在、俺達はアイオーンに来ており、その復興作業を手伝っていた。


ルクスブルグのでっち上げの件が公表された事で魔族との繋がりの疑いが晴れたアイオーンは、エルーシャとグラナから表立った支援を受ける事が出来るようになり、本格的な復興作業が進められる様になった。


そして、それを聞いた俺達も、何か手伝える事が無いかリタ王女に相談した所、こうして復興作業を手伝っているという訳だ。


「よし!! アルケー、次はこっちだ!!」


ディンは幻召魔身で呼び出したアルケーを引き連れ、壊れた建造物の修復作業を手伝っていた。


アルケーが両手の糸を伸ばすと、資材置き場に置かれていた木材に繋がれていく。すると、大量の木材が糸に操られて動き出し、それらを必要な場所に送っていく。


「ありがとう嬢ちゃん!! いやぁ最初見た時驚いたけど、凄い魔術だなそれ!!」


木材を受け取った屋根の上にいる男が、そう言ってガハハと大声で笑った。


アルケーの操身の糸は生物だけでなく、物質を動かすのにも使う事が出来る。なので、こうして使えばクレーン車さながらの重量物の運搬も容易いのであった。


そして、ディン自体も特に強力な魔族である為力持ちであり、こういう力仕事は得意な様だ。


そして、俺とソニアはというと、帰還魔術を利用して、エルーシャとグラナから支援物資を運び込んでいた。


こうする事で、長い距離をほぼ一瞬で物資を運ぶ事が出来る為、これも復興の促進に大いに役立つ事だろう。


そうして、アイオーンの復興は順調に進んでいった。


そんな中、俺達はこんな事を耳にした。


「おい聞いたか? この間の侵攻であの村やられたらしいぞ?」


「ああ聞いたよ。あの村に俺の親戚が居たんだが…皆死んじまった! くそっ…!!」


「わりぃ…そうか、やな事聞いちまったな…」


「畜生…魔族なんて…」


「…」


アイオーンだけではない。エルーシャとグラナから物資を運ぶ際にも、何度かそういう魔族への恨み言の様な話をチラホラ耳にしていた。


人間達の間で、魔族への憎しみが大きくなりつつある。確実に、人々の心は戦争により荒んでいっていた。


「…ディン、気にするなよ」


「…わかってるさ。我は大丈夫だ」


ディンはそう言って笑い、何ともない様に振る舞っていた。


そして、そういう話は魔族についてだけでは無かった。アイオーン城にて、兵士達の立ち話でこんな話が聞こえた。


「…なあ、お前らって勇者ってどう思ってる?」


「たった一人で魔族の軍隊を三つ一気に殲滅しちまったって話だろ? おっかねぇよなぁ、み~んな皆殺しでさぁ」


「!!」


「なぁ、ホントに大丈夫なのか? 魔族が全滅して、世界が平和になったと思ったら今度は勇者が世界の敵になるとかって、100年前は相討ちしてくれたって聞いたけどよ…」


「ルクスブルグでも強化勇者ってのが量産化してるって話だし、ホントおっかねぇよなぁ勇者って」


俺含めた勇者達についての恐怖の声だ。確かに、アイオーンはかつて勇者によって滅ぼされかけた過去がある。そういう意見もあってもおかしくなかった。


「アイツら…!!」


怒気の籠もった顔で兵士達に詰め寄ろうとするディンを、俺は制止した。


「俺は大丈夫だから…ありがとな、ディン」


「クウゴさん…」


「ソニアも…俺は大丈夫だから」


心配そうな顔をするソニアにも、俺は笑って返した。内心、ちょっとへこんでいたのは確かだが、俺は何ともないと言い聞かせた。


戦争は人を、心を荒ませる。俺らはその事を改めて知った。

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