呪いを解く白炎(5)
「ここまで良くやりました」
俺達は屋敷の庭園に移動し、移動後開口一番にラピスはそう言った。
「ですがオーキ、貴方はわかって居る筈です。どんな技術も実戦で使えなければ意味は無いと」
「…そうだな。俺もこれで終わりだなんて思ってないさ」
「よろしい…では」
ラピスはそう言うと、自身が着ていたドレスを脱ぎ捨てた。
ドレスの下は、彼女が戦闘時にいつも着ているバトルコスチュームであり、そしてその手にはいつの間にか、大きな刃の付いたハルバードを携えていた。
あのハルバードこそ、彼女の杖である。魔術士の杖は通常、その魔術の発動の補助や威力の底上げを行う等の『術のサポート』を目的とした物が殆どだ。因みに俺は、封魔のカードを始めとした魔具を使用する為に両手を空けておきたいので、杖は使用しない。
当然ラピスのハルバードにもそういう機能は当然備わっているのだが、それよりも彼女は術でハルバードや身体能力を強化して、それで戦うスタイルの魔術士であり、あのハルバードもそれに適した調整が施されている。
そう、ラピスは近接戦闘を主とした魔術士なのだ。どちらかと言うと、クウゴの魔力を込めた剣技に近い。
「オーキ、貴方はこう言ったのを覚えてますか? 『アンタの全てを俺に叩き込んで欲しい』と…お望み通り、私の全てを貴方に叩き込みましょう」
「お、おい!! ラピス…!!」
ハルバードを構えるラピスを見て、ウィンリッヒが止めようと前に出ようとするも、俺はそれを制止した。
「大丈夫だよ親父、俺もこれを望んでた。それに…」
俺はラピスの方を向き、こう言い放った。
「アンタくらい倒せなきゃ、ハマドウに勝つなんて夢のまた夢、だからな」
「言うようになりましたね…来なさい」
俺の言葉を聞いたラピスは、笑みを浮かべた。それはもう、とびっきりの邪悪な。
「…痛てて」
その後、ラピスにボコボコにされた俺は、地面に転がされていた。
「ぼっちゃま…大丈夫ですか?」
「ラピス…いくら何でもこれはやり過ぎでは…?」
爺やが心配そうに俺の顔を覗いている。その横でウィンリッヒが、ラピスに向かって苦言を洩らしていた。
「だ、だって!! この子が全てをぶつけてって言うから…それに、流石に死なない程度に加減はしてましたし…!!」
そう言ってラピスはオロオロしながら反論していた。
「ははははは!!!!」
俺が笑うと、皆はそれに驚いてビクッと体を震わせた。
「お、オーキ? まさか、頭の打ち所が…!?」
「ちょっとウィン!! 変な事言わないで!!」
「そんな!! ぼっちゃま!!」
俺が気が触れたのかと思ったのか、何か三人が慌てふためき始めた。俺は起き上がり、自分が何ともない事を伝えた。
「いやごめん、大丈夫だよ。ただ、やっぱお袋強えなあって思って、そしたら何か、笑えてきた」
「もう…あんまり脅かさないで…」
そう言ってラピスは息を吐き胸を撫で下ろした。
「…お袋、もう一回頼む。時間が惜しい、早く強くならないと」
「オーキ…わかりました。何度でも付き合いますよ」
ラピスは再び構え、俺はまたラピスに向かっていった。
こうして何度もぶっ飛ばされ、転がされ、気絶させられ、そんな事を繰り返した。
何度も、何度も、最強に追いつく為に。




