呪いを解く白炎(3)
こうして、リンゴを焼くのと製作、それらを繰り返す日々が続いた。
そして、遂に人工の勇者紋が完成したのだった。
「…よし。オーキ、どうだ?」
軽装な鎧を着た俺に、ウィンリッヒはその様子を尋ねてきた。
「ああ、問題ない。着心地は大丈夫だ」
「それは良かった。じゃあ、始めよう」
この鎧こそ、人工の勇者紋を組み込んだ外付けの魔臓、名付けて『魔臓鎧』だ。
今は、その魔臓鎧の試運転を行おうとしていた。ウィンリッヒに加え、ラピスもその場に立ち会っている。
「じゃあ…行くぞ」
俺はそう言うと、鎧を起動した。
鎧に組み込まれた勇者紋が輝き、俺の身体にはすぐに変化が訪れた。
「!!」
「ど、どうだ?」
「…すげぇ、これが『一人前』の魔力、なんだな」
いつもの様に魔力を練ろうとすると、その違いに俺は驚愕した。いつもより、遥かに多くの魔力を練る事が出来たからだ。
魔臓鎧は、常人の1/2程度の魔力出力の勇者紋が内蔵されており、これを着るだけでもそこからの魔力供給により、『今までの俺程度の』魔術を使用する事が出来る。
俺の常人の1/2の機能しかない魔臓と合わせる事で、漸く俺は常人『一人前』の魔力を使用する事が出来る様になる訳である。
多くの失敗と見直しを経て、漸くそれが完成し、俺はやっと、『一人前』の魔術士になれたのであった。
「ふふふ…」
「オーキ…?」
「ハハハハハハ!!! 遂に、遂にやったぞ!! 俺はとうとう弱点を克服し、正に俺はパーフェクトオーキ様だ!!!!」
高笑いする俺を見て、ウィンリッヒは苦笑し、ラピスは頭を抱えた。
「全くこの子は…」
「ハハハ、ハ…」
一頻り笑った後、俺は大きく息を付き、二人の方を向いた。
「…オーキ?」
やっと言える、言ってあげれる。
あの時から今まで、俺は二人に言いたかった事があった。
かつて俺は、ラピスを恨む者から呪いを受け、両親はその呪いから救う為に禁術まで使って助けようとした。
しかしその結果、俺の半身は死に、俺自身も魔臓に一生物の障害が残った。
俺は苦しんだ。魔術が満足に使えない事と、自分が助かる為に片割れを死なせてしまった事、何より両親にその負い目を感じさせてしまった事。
そしてそれ以上に、二人は苦しんでいた。
自身達の選択によって、俺に『解けない呪い』を負わせてしまった事に。
だから、ずっと言いたかった。その為に頑張ってきたのだ。今まで、ずっと。
俺は、呪いを解く為に、頑張ってきたのだから。
「親父…お袋…『呪い』、解けたよ」
俺は微笑みながら、そう言った。
「!!」
「オーキ…お前…」
やっと言えた。セレスワイズ家の呪いを解ける一言。
「あぁ…あぁ…!! 本当に、良くやった…」
ウィンリッヒはそう言って、涙を流しながら俺を抱き締めた。
「貴方って子は…本当に…」
ラピスも同様に涙を流し、俺とウィンリッヒを同時に抱き締めた。
こうして、長年セレスワイズ家を苛んできた呪いは、やっと全て解けたのだった。




