呪いを解く白炎(2)
夜、セレスワイズ邸のウィンリッヒの工房にて。
「親父、これ見て欲しいんだけど」
「成る程…これは私が引き受けよう。オーキは…」
父ウィンリッヒと会話を交わしながら、俺達は『ある物』を作っていた。
俺が今まで集めた勇者紋の研究データと、ルクスブルグ潜入時に持ち出した勇者に関する研究データ。これらを合わせて俺はとうとう、ある物の製作に乗り出していた。
それは、人工の勇者紋、外付けの魔臓だ。
クウゴと出会ってから今に至るまでに集めた多くのデータから、それの設計がとうとう完了したのだ。が、どうしても俺では出来ない点が幾つかあり、そこをウィンリッヒに手伝って貰っている。
ハマドウとの戦いまでに、出来る事は全てやっておくべきだ。魔臓の障害を解消出来るこれを完成させ、俺は漸く『一人前』の魔術士となれる。
なのでこうして、日中はリンゴを焼いて夜は製作、これが実家に戻ってからの俺のルーティーンとなっていた。
「そういえば、クウゴ君達は置いてきたみたいだが、大丈夫か? 生活費とか」
作業中、ウィンリッヒが唐突に訊いてきた。
「ああ、当面の生活費と書き置き置いてきたから多分大丈夫だろ?」
「そうか、ならいいんだが…」
(…あれ? 金と書き置きって、最後どこに置いてきたっけ…?)
「…あ」
思い出した。確か工房の机の上に置きっぱなしであった。セレスワイズ邸に跳ぶ前に渡しておくつもりだったのだが、すっかり忘れていた。
(…ま、いっか。その内気付くだろ)
こうして、夜更けまで製作を行っていた。
次の日の朝、俺は眠い目をこすりながら、ダイニングルームに入っていった。
「ふぁ…」
「おはようオーキ、流石に随分眠そうだな」
既に着席していたウィンリッヒは、苦笑しながらそう言った。
「おはよう…まぁ、遅くまでかかっちまったからな」
人工勇者紋の製作は、現状難航していた。
設計通りに製作は出来たのは良いが、その試運転で色々と不具合が発生し、このままでは使い物にならない有様であった。
なので今は、その設計から一度見直していた。流石は勇者の加護、ままならない物である。
「あれ、お袋は?」
「…まだ寝ている」
「…相変わらず朝弱いんだな」
「はは…そういえば、こんな情報が入ってきたんだ」
「情報?」
「なんでも、魔王グランディンの拠点が発見されたとの事で、近い内にエルーシャ、グラナ、アイオーンの三国合同で魔族の討滅作戦を行うと…」
「何…!?」
「もしかしたら、クウゴ君達も…」
「…乗り込む可能性は、大いに有るな」
クウゴによって魔族側に大きなダメージが与えられ、そのタイミングで偽グランディンの根城が発見、確かにこれでグランディンを倒せれば人間側は勝利は確実だ。主要三国が同盟を組んででも攻め入るのも、まあわかる。
しかし、俺はどうにもきな臭いと思った。根城が割れるタイミングがあまりにも良すぎる。
クウゴ達に伝えるべきだと思うのだが、拠点や他の国に設置している帰還魔方陣はクウゴの勇者紋と同期したクウゴ専用であり、俺には起動出来ない。なので、伝えに行こうにも、俺から出向く事は出来なかった。
(…あまり無茶な事はすんなよ?)
些か不安だが、俺はクウゴ達を信じて静観する事にした。俺は今、やるべき事に集中しよう、そう思った。




