お金を稼ごう(5)
「ありがとうございました。本当に助かりました」
街に着くと、女冒険者二人は俺達に深々と頭を下げた。俺達は村まで荷馬車を引き、その後街まで戻ってきていた。
その後報告の為に街の集会所に向かう女冒険者達を見送った後、ディンが口を開いた。
「…なぁ、思ったんだが、さっき我々が倒した魔物、討伐依頼出てたヤツだったな? そして、この荷馬車の護衛。これって、最初から我々が依頼受けてたら、報酬総取り出来たのでは…」
「…俺も思ったけど、それ以上は言うな」
実質二つの依頼をこなした訳なのだが、俺達は依頼を受けていない為報酬は貰えない。この数刻、俺達は完全なタダ働きだった。
「まぁ、これで助かる人も居たから、良かったじゃないですか…」
「…そうだな」
こうして、俺達は森に戻り、薬草採集を再開した。集め終わった頃には、すっかり日が暮れていた。
そして、
「我の薬草が換金出来ないとはどういう事だぁ!!?」
ディンが集会所の受付嬢の胸倉を掴んで喚いている。
「でぃ、ディンさんが持ってきたのは良く似た別の草でして…!!」
ディンは採集した20本の薬草は、全部違う草だった様だ。どうやらディンは間違って採集してしまったらしい。
「あれほどちゃんと確認しろって言っただろうが…」
喚くディンの様子を眺め、俺は頭を抱えた。
そして、俺とソニアのはというと、
「あの、申し上げにくいんですが…ソニアさんのは問題無いのですが、クウゴさんが採集した薬草は全部病気になってる草でして、こちらも換金出来ません…」
「嘘ぉ!?」
俺の採集した薬草は、種類は間違って無かったみたいだったのだが、全て病気に罹っている草だったらしく、これもポーションの材料には出来ないから換金出来ないとの事だった。ディンのノルマを肩代わりした10本含めた、40本全て。
こうして、まともに依頼を達成出来たのはソニアのみであり、俺達の一日の稼ぎは微々たる物となった。
「…お金を稼ぐのって、大変だな」
「…そうだな」
「まあまあ、明日また依頼受けに行きましょうよ」
食卓で項垂れている俺とディン。そんな俺達をソニアは優しく励ましてくれた。
「そうだ! そろそろご飯にしましょう!私、準…」
ソニアが席を立とうとすると、それより先に俺とディンが立った。
「了解した。俺達が準備する」
「今回全く良い所の無かった我々が食事の支度をしよう」
「え…でも…」
「働かざる者食うべからず、一銭も稼げなかった俺達の仕事だ」
「そういう訳だ、行くぞヒモ勇者」
「了解した、ヒモ魔王」
「びっくりする位に卑屈になってる…」
こうして俺とディンが厨房に立ち、食事の支度を始めた。
「おいクウゴ!! 鍋、鍋吹きこぼれてるぞ!!」
「何っ!!? アチャチャッ!!!」
「しまった!! 砂糖と塩間違えた!!」
しかし、料理なんて碌に出来ない俺らは言うまでもなく悪戦苦闘し、厨房はどんな戦場よりも凄惨だった。
そして、どうにか食事の用意が出来た頃だった。
「あれ? ソニアは?」
食席に座っていた筈のソニアが居なくなっていた。すると暫くして、ドアからソニアは入ってきた。何か箱の様な物を抱えている。
「あの…食事の準備が出来るまで、オーキさんの工房の掃除でもしようとして、そしたら、机にこんな物が…」
ソニアからその箱を受け取り、中を確認する。
「は?」
箱の中には、大量の紙幣が入っていた。そして、何か紙が同封されており、それを広げる。
『皆へ 俺がいない間の生活費置いときます。足りなくなったら、俺ん家に来て下さい。オーキ』
と、その紙には書かれていた。
「…」
書き置きを読んで、俺は絶句した。そして、
「あの小童ぁぁぁ!!!! そういう事はちゃんと伝えとけぇぇぇ!!!!」
激昂したディンは咆哮し、書き置きをビリビリに引き裂いた。
こうして、当面の生活費の心配は無くなったのだった。




