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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第一章

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第七話

「チビすけ」


轟焔が額を押さえたまま、露骨に嫌そうな顔で言った。


「会議の場に来い」


真紅の瞳が細められる。


「まずは尋問だ」


ミアは老師の腕の中で、ぱちりと瞬きをした。


それから極めて落ち着いた声音で答える。


「話すべきことは全てお話しました」


一拍。


「私は昼寝の時間です」


沈黙。


セルジュが吹き出した。


楼蘭が静かに視線を逸らす。


冥王は片手で顔を覆った。


轟焔のこめかみに青筋が浮く。


「何が昼寝だ」


低い声。


「今さら三歳児ぶるな」


するとミアは真顔のまま、自分の身体を見下ろした。


小さな手。短い足。幼い身体。


そして淡々と告げる。


「肉体はこの通り三歳なので」


「睡眠時間の確保は必要です」


「正論みてぇな顔すんな」


轟焔が即座に切り返す。


だがミアは全く怯まない。


「寝不足は判断力を鈍らせます」


「尋問効率も低下するかと」


「うるせぇなこのガキ」


老師が横でぼそりと呟いた。


「まあ実際、眠い時は機嫌悪くなるからなコイツ」


「老師」


「事実だろ」


冥王が深くため息を吐く。


「……この状況で眠れるならそうしろ」


半ば投げやりだった。


だがミアはすぐにこくりと頷く。


「承知しました」


そこまではよかった。


問題は次だった。


「ならば膝抱っこを要求します」


空気が止まる。


轟焔が目を剥いた。


「はあー?」


露骨に嫌そうな声。


「だ、誰がお前なんか」


そこまで言った瞬間だった。


ミアが静かに顔を上げる。


星眼。


藍の奥で金が揺れる。


轟焔の言葉がぴたりと止まった。


「……っ」


空気が微かに軋む。


魅了。


だが通常のそれとは違う。


強制的に欲望を煽る類ではない。


もっと根源的な、“守るべき幼子”として認識を書き換えるような異質さ。


轟焔の顔が盛大に歪む。


「クソ」


低く唸る。


「何だこのクソ強い魅了……!」


支配眼が無意識に発動し、周囲の魔力がびり、と震えた。


普通ならそこで相殺される。


だが星眼はなお静かに揺れている。


セルジュが腹を抱えて笑い始めた。


「っはははは!轟焔が負けてる!」


「笑ってんじゃねぇぞ精霊王!」


轟焔は額を押さえながら盛大に顔をしかめる。


「クソガキ……!」


「眠いです」


「知るか!」


「膝」


「断る!」


「では抱っこでも可」


「可じゃねぇ!」


回廊に怒声が響き渡る。


その横で楼蘭が静かに口を開いた。


「……魔王殿」


「何だ」


「もう抱いた方が早いのでは」


静かな正論だった。


轟焔の顔が引き攣る。


冥王はもう完全に頭を抱えている。


老師だけが遠い目をしていた。


「だから言ったんだ」


「星眼持ちを真正面から見るなって」

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