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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第一章

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第二十七話

火が、唸りを上げて噴き出した。

熱風が空間を焼き、石床すら赤く染める。直後、鋭い爪が風を裂き、遅れて毒を帯びた尾が軌道を変えて襲いかかる。

間断のない連撃。

獣の膂力と、人の知性が混ざり合った“殺し”の流れ。


だが――ニチカは、そのすべてを紙一重で躱していた。


炎の軌道を読む。爪の振り下ろしに合わせて体を捻る。尾の刺突を、わずかな重心移動で外す。


速い。だが、読めないほどではない。


(……あるな)


連撃の中に、“綻び”がある。

ほんの一瞬。

呼吸のように生まれる、微細な間隙。


問題は――(あの目だな)


マンティコアの視線。ただ見ているのではない。こちらの動きを“先読み”している。

知性が、厄介さを何倍にも引き上げている。


ならば。潰す。


ニチカの指が、腰の後ろに触れる。ナイフ。


一瞬。わずかな隙間。

その瞬間を――掴む。

ヒュンッ――


音すら置き去りにして、ナイフが飛ぶ。


一直線。迷いなく。目へ。

ぐしゃり、と鈍い感触。

マンティコアが、絶叫した。


「ギャァァァァッ!!」


人とも獣ともつかぬ悲鳴。

視界を奪われ、わずかに動きが鈍る。


その一瞬を――ニチカは逃さない。


踏み込む。間合いを詰める。


ショートソードが、閃く。斬る。


骨ごと断つ。太い前脚が、鈍い音を立てて落ちた。


巨体が、傾ぐ。


均衡が崩れる。ニチカは、その勢いを利用した。

地面を蹴る。砕けるような踏み込み。

身体が、宙へ跳ね上がる。


狙いは――眉間。

人であれば、急所。だがこれは、ただの人ではない。


(さて――どうだ?)


空中で、体勢を整える。両手の刃を揃える。落下の勢いを乗せる。


マンティコアの顔が、こちらを向く。

片目を潰されながらも、残る視界で捉えている。


その口が、歪む。


笑った。

まだ、終わっていないと。理解している。


それでも。ニチカの瞳は、揺るがない。

(関係ないな)

振り下ろす。全力で。

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