↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
167/180

第三十五話

花の匂いが、やわらかく満ちていた。


どこからか運ばれてきた朝の気配が、閉ざされたはずの室内にも静かに入り込んでいる。風の都らしい、気配の抜け方だった。


ミアはその匂いを無意識に吸い込み、小さく身動ぐ。


まだ夢と現の境目にいるような感覚のまま、意識だけがゆっくりと浮かび上がってくる。


頭に触れる感触。

やさしく撫でる手。


その一定のリズムに気づいて、重い瞼を少しだけ持ち上げた。


ぼやけた視界に、誰かの輪郭が映る。。


近くにある顔。

見慣れた線。


焦点が合っていくにつれて、それがはっきりとユエリーのものだと認識される。


「……おはよ、ユエリー」


声はまだ眠りを引きずっていて、わずかにかすれていた。


ユエリーは何も言わない。

ただ、いつもと同じように髪に触れている。

指だけで、流れを整えるように。


その手つきは静かで、丁寧で、どこまでも穏やかだった。


昨夜のことが、ふと頭の奥をかすめる。

触れた温度。

近すぎた距離。

けれどそれを言葉にするほどでもなく、ミアは何も言わない。


ただ、そのまま目を閉じかける。

指が髪を梳くたびに、意識がまたゆるく沈んでいく。


このまま、もう少しだけ――


そう思ったところで。

控えめな音が、静けさを割った。


――コン、コン。


扉を叩く、遠慮がちなノック。

現実が、戻ってくる。

ミアの瞼がわずかに震えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。