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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

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第二十六話

中央にそびえる大風車塔は、ただの象徴ではなかった。


街を見下ろすその巨体は、そのまま領主館として機能しているらしい。近づくほどに分かるのは、風を受けて回る巨大な羽根が発する低い軋みが、建物そのものに脈打つように伝わっていることだった。


重厚な扉の前で足が止まる。


ひと呼吸。


そして開かれる。


内側に広がっていたのは、外の喧騒とはまるで切り離された空間だった。


高い天井、磨き上げられた床、無駄のない装飾。風の都らしく、どこか軽やかさを感じさせる意匠でありながら、明らかに選ばれた者のための場所という空気が満ちている。


そして――並ぶ人影。


使用人たちが、整然と列をなしていた。


まるで最初からそこに待機していたかのように、乱れのない配置で。


領主が歩を進めると、揃って頭が下がる。


音はほとんどない。


ただ、その一連の動きだけで、この館の秩序がどれほど徹底されているかが分かる。


ミアはその中を進む。

視線を上げすぎず、下げすぎず。

ローブのレースの奥で呼吸を一定に保ちながら、歩幅を合わせる。


居心地が悪い。


それを顔に出すことはないが、空気の密度が明らかに違う。広場で感じた自由な流れとは対極の、整えられた緊張。


ユエリーは、やはり無言だった。

だがその気配は、外にいたときよりもさらに鋭い。


視線は動かさずとも、周囲すべてを把握しているような静かな圧。


歩みは変わらない。


ただ、ここでも守る位置は変わらないと示すように、一定の距離を保ち続ける。


やがて案内された先。

重厚な扉が、再び開かれる。


貴賓室。


中はすでに整えられていた。

長い卓。

灯りに照らされて並ぶ料理の数々。湯気の立つ皿、冷やされた器、香りが静かに満ちている。どれもが最適な状態で待っている。


そして席。


配置は明確だった。

卓の奥に一席、その向かいに二席。


ミアと、ユエリー、そして領主。

他に客はいない。


意図的に絞られた席数。


この場がもてなしであると同時に、対話の場でもあることを示している。


ミアは一瞬だけ、その配置を見た。


誰がどこに座るか。どの距離で、どの向きで対峙するか。


すべてが計算されている。

すぐに視線を落とす。

余計な反応は見せない。


領主がゆっくりと振り返る。


「さあ、どうぞ」


穏やかな声。

しかし、ここまで来て引き返す選択肢はない。

ミアは小さく頷き、静かに一歩を踏み出した。


風の音が、かすかに遠くで鳴っている。

この場所でも、それは消えてはいなかった。

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