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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

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第二十一話

「ヴェントよ、ヴェントよ」


竪琴の音に重なって、子どもの声がもう一度聞こえた。ミアが顔を上げると、階段のそばで先ほどの子どもが歌詞を確かめるように口ずさんでいる。隣にいた女性も、覚えたばかりの旋律を小さくなぞり始めた。


ミアは二人の声が届く速さに合わせて、弦を爪弾いた。同じ節をもう一度繰り返す。子どもは今度は迷わず歌い、近くにいた人も「ヴェントよ」のところで声を重ねた。知らない曲でも、そこだけならすぐに覚えられる。ミアが旋律を繰り返すたび、加わる声が少しずつ増えていった。


「……風の唄歌いだ」


子どもの隣で、女性が呟いた。聞き返されると、少し照れたように笑う。


「祖母が、風と歌を交わす人をそう呼んでいたんだよ。昔話の中にしかいないと思っていたけどね」


その言葉が周囲に伝わると、人々はミアと、彼女の歌に合わせて吹く風を見比べた。誰かが手拍子を打ち始める。最初はばらばらだった音が重なり、子どもたちがそれに合わせて足を踏み鳴らした。


ミアは笑って、旋律を少し変えた。手拍子に乗りやすいように弦の拍を刻み、それでも「ヴェントよ」の節に戻るときには、皆が声を合わせられるようにする。階段の下では踊り出す者がいて、その輪を避けて歩こうとした人も、結局は笑いながら足を止めた。


一曲が終わると、広場のどこかから別の歌が始まった。ミアの知らない、この街の歌だった。彼女はしばらく耳を澄ませてから、覚えた節を竪琴で追いかける。歌い手が驚いて振り向き、もう一度初めから歌ってくれた。


曲が途切れるたびに人々は水を飲み、腰を下ろし、また誰かの声に誘われて立ち上がった。ミアも休みながら弦を鳴らした。昼の光が傾き、風車の影が広場を横切っていく。夕暮れには灯りがともり、それを見届ける頃には、最初からいた者も途中で加わった者も、それぞれ好きな歌を口ずさんでいた。


ようやく竪琴を膝に置くと、ミアは指先をそっと開いた。少し熱を持っている。広場にはまだ話し声があり、子どもが帰り道で「ヴェントよ」と歌うのも聞こえた。


軽く頭を下げたとき、足元に硬貨がいくつも置かれていることに気づいた。演奏の合間に、誰かが少しずつ置いていったらしい。ミアは一枚拾い上げ、レースの向こうで目を丸くした。


「……たくさん稼いじゃったね」


風が頬を撫でて通り過ぎる。ミアは硬貨をしまい、まだ歌の聞こえる通りへ目を向けた。

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