↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
152/179

第二十話

喝采が少しずつ落ち着いていくなか、ミアは竪琴を抱えたまま、広場の声に耳を澄ませていた。風車の羽根はいつもの速さに戻っている。それでも、集まった人々はすぐには立ち去らず、風の通り道を見上げていた。


「昔、祖母が言っていたよ。道に迷ったら、ヴェントに風を頼めって」


階段のそばで、年配の女性が子どもに話している。子どもは「ヴェントって誰?」と聞き返したが、女性もすぐには答えられなかった。幼い頃に聞いた名を、久しぶりに思い出したらしい。


ミアはその名を胸の内で繰り返した。ヴェント。時の聖典で目にした、この土地に伝わる風の精霊の名だった。けれど、文字で読んだときには分からなかった温かさが、今の二人の声にはある。


指先が弦に触れる。先ほどの歌とは違う、ゆるやかな旋律が生まれた。女性の言葉と、広場を抜ける風の調子を拾いながら、ミアは歌い始める。


♪みえぬみちをゆくものよ

♪かぜはいつもそばにある

♪むかしきいたそのなまえを

♪もういちどよんでみよう


女性が顔を上げた。知らない曲だ。それなのに、祖母の声を聞いたときのような顔をしている。


♪ヴェントよ、ヴェントよ

♪いのちをはこぶもの

♪みちをうしなうときも

♪かぜはみちをしるす


子どもが、小さな声で「ヴェント」と繰り返した。その声に応じるように、風が二人の間を抜けていく。頬を撫でられた子どもは驚いて振り向き、女性もつられて笑った。


ミアは歌いながら、その様子を見ていた。自分が知ったばかりの名を、この街では誰かがずっと覚えていた。今は子どもも、その名を知っている。


竪琴の音に重なって、もう一度、幼い声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。