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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

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第十九話

最後の一音まで、ミアは丁寧に爪弾いた。


弦の震えがゆっくりとほどけて、空気に溶けていく。音が消えてもなお、そこに何かが残っているような感覚だけが広場に満ちていた。


人々は足を止めていた。


通り過ぎるはずだった者も、用事を急いでいた者も、いつの間にか動きを忘れて、ただその場に立ち尽くしている。何を聞いたのかを言葉にすることはできない。ただ、耳ではなくもっと別のところで触れたものがあったと、誰もがぼんやりと理解していた。


風が、遅れて動いた。


そよぐ、というには少し強く、吹き抜ける、というにはどこかまとまりのある流れ。広場の中心から円を描くように巡り、階段を撫で、像の翼をかすめ、集まった人々の間をすり抜けていく。


その流れが、やがてひとつにまとまる。


ふっと押し上げるように、上へ。


巨大な風車の羽根が、それを受けた。


ぎし、と音を立てて軋む。


回転が、わずかに強まる。


日常の延長にあるはずの風景が、その瞬間だけ、ほんの少しだけ逸脱する。


誰かが息を呑んだ。

けれど、誰も声を出さない。

ほんの一瞬、広場に静寂が落ちる。


――理解が追いつくまでの、空白。


やがて、その空白が弾けた。

拍手がひとつ。

それに続くように、またひとつ。


波のように広がっていき、気づけば広場全体が音に包まれていた。笑い声や驚きの声が混じり合い、熱を帯びていく。


さっきまでとは違う風が、そこにあった。


ミアは竪琴を膝の上に置いたまま、その様子を静かに見ている。


風はもう落ち着いている。


けれど確かに、風車の音や歌を口ずさむ人々の声に風の歌は混じっていた。

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