↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
149/179

第十七話

人目を引きながら歩くことにも、もう半ば慣れてしまっていた。


街道を行き交う者たちの視線は隠そうともせず、遠慮もない。珍しいものを見る好奇の目と、無意識に距離を測る警戒とが混ざり合って、二人へと向けられていた。


それでも歩みを止める理由にはならない。


やがて、街の関門が見えてくる。


石造りの門。その両脇に立つ門兵たちは、行き交う人々を手慣れた様子で捌いていた。太陽はすでに高く、影は短い。


ミアは足を止め、首元からペンダントを取り出す。


交差した二本の剣――草薙の紋章。


これを見せれば、身分の証明になる。そう思っていた。


「お嬢ちゃん、草薙の商人かい?」


門兵のひとりが気さくに声をかけてくる。


「いいえ、違います」


あっさりと否定する。


「ふーん、じゃあ傭兵?」

「いいえ、えーと……」


言葉に詰まる。

その一瞬、隣へと視線が流れる。


ユエリー。


何も言わない。だが、こちらを見るでもなく、ただ任せるという圧だけが静かに存在している。


逃げ場はない。


「あー……旅芸人?……です」


自分でも少し苦しいと思いながら、なんとか言葉を絞り出す。


一拍。

そして――


「ハハッ!」


門兵が大きく笑った。


「そりゃーいいや、娯楽も必要だよな!」


疑う気配はない。

むしろ歓迎するような声音だ。


「広場でなんかやってくれや。後で見に行くぜ。頑張れよ!」


快活に手を振る。

それで通行は終わりだった。

あまりにもあっさりと。


「……通れたね」


ミアが小さく呟く。

ユエリーは短く頷いた。


門をくぐる。

その瞬間、空気が変わる。


風が、街の中を巡っている。


建物の合間を抜け、通りを駆け、上空へと抜けていく流れがはっきりと感じられる。自然の風というより、意図的に通されている風だ。


視界が開ける。


そこに広がっていたのは、いくつもの巨大な風車群だった。


羽根がゆっくりと、しかし確実に回転している。軋むような音とともに、都市全体が風と連動しているかのような光景。


さらに奥。


細い路地を抜けた先に、ひときわ大きな構造物がそびえている。


塔のように高く伸びた、巨大な風車。


その根元には広場が広がり、人々の気配が集まっている。


「……風の都、エアリアル」


ミアは小さくその名を口にする。

風がレース越しに頬を撫でた。

この街は、生きている。


風とともに。

そして――


「広場でなんかやってくれ、か」


ぽつりと呟く。


自分で言った旅芸人という言葉が、じわじわと現実味を帯びてくる。


ミアは少しだけ考えてから、ふっと笑った。


「……やるしかないか」


視線を上げる。

風が強く吹いた。

まるで、この街そのものが応えるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。