↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
141/179

第九話

「よし。――これで顔も隠れるね」


ニチカは手際よくローブを広げ、そのままミアの肩へとそっと掛けた。布は空気を含むように軽やかに落ち、音もなく全身を包み込む。仕上げに、顔周りへと薄いレースを垂らす。


繊細に編まれたそれは、外からの視線を柔らかく遮断しながらも、内側からの視界は驚くほど澄んでいる。まるで霞を一枚隔てたような感覚だけを残して、世界はそのまま見える。


ミアは軽く首を動かし、視界を確かめた。違和感はほとんどない。呼吸も、動きも、妨げられることはない。


「……ほんとだ」


小さく呟く声が、レースの向こうでわずかにくぐもる。


ニチカは一歩引き、全体を眺めるようにして目を細めた。


白で統一された装い。


無垢でありながら、どこか触れがたい。柔らかく光を弾きながら、決して本質を覗かせない。


その姿は、まさに白き魔女という名に相応しい完成度を帯びていた。


飾り立てているわけではない。むしろ削ぎ落としている。


それでもなお、際立ってしまう存在感。


隠しているはずなのに、こうして彼女を見つめる仲間の目には、その美しさも装いとひとつに調和して映っていた。


「うん、いい」


満足げに頷く。


作り手としての手応えと、それ以上にこれなら守れるという確信が、その一言に滲んでいた。


ユエリーは腕を組んだまま、その様子をじっと見ている。


覆われた顔。隠された気配。


守るための工夫であることは理解している。だが同時に、外界から切り離されるようなその装いに、どこか引っかかるものもある。


ナギは肩をすくめた。


「……もうこれ、誰だかわかんねえな」


率直な感想だった。


だが、それでいいのだろう。


誰にも気づかれず、誰にも触れられず、それでいて確かにそこに在る。


ミアはそっと自分の袖を見下ろし、次にレース越しの世界へと視線を向けた。


柔らかく、少しだけ遠くなった景色。


これから踏み出す旅路を、そのまま象徴しているようにも思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。