↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
140/179

第八話

「それ、着てくれてるんだ。ありがとう」


ニチカはふと視線を落とし、ミアの装いに気づくと、満足そうに目を細めた。


簡素に見えて、その実、常識外れの機能を詰め込んだ旅装束。布の流れひとつ、結び目ひとつにまで意味があるそれを、ミアはもう自然に着こなしている。


「ううん、こちらこそありがとう。すごく動きやすい」


くるりと軽く回ってみせる仕草に、布は音もなく追従する。余計な引っかかりもなく、身体の動きに吸い付くように馴染むその様子は、確かにただの衣服ではない。


ニチカはその様子を眺めながら、ふっと息をつくように笑った。


「……あの龍の前でも、紐を解いたら駄目だからね?」


声音は柔らかいのに、言っている内容は妙に具体的で、そして妙に執着が滲んでいる。


「わかってるでしょ?」


念押し。


「はいはい、わかりました」


ミアは軽く受け流すように返すが、そのやり取りの横で、空気がわずかに軋んだ。


ユエリーの眉間に、はっきりと皺が寄る。


言葉には出さない。だが、その視線だけで十分すぎるほど不満が伝わってくる。


ニチカはそれを気にも留めない様子で、さらに続けた。


「その服、ミアの成長に合わせてちゃんと大きくなる仕組みだから」


さらりと告げられた一言。


一瞬、間が空く。


理解が追いつくまでの、ほんのわずかな沈黙。


「……は?」


ナギが素で声を漏らした。

ミアも、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「できることなら、あんまり脱がないでね」


追い打ちのように重ねられる言葉。

その場にいた全員の思考が、同時に同じ方向へと傾いた。


どういう構造をしているのか。

どこまでを想定して作られているのか。


そして何より――どれだけの執念を込めれば、そんな機能を当然のように実装できるのか。


ぞわり、と。


言葉にし難い感覚が、場を静かに走り抜ける。


ナギは顔を引きつらせ、老師は無言で目を細め、ユエリーは露骨に不機嫌さを強めた。


ミアだけが、手元の袖をつまんで、少しだけ感心したように呟く。


「……すごいね」


その純粋な感想が、逆に恐ろしい。

ニチカは何食わぬ顔で肩をすくめた。


「でしょ?」


悪びれる様子は一切ない。


ただ、必要だから作ったとでも言いたげな、いつもの調子。


――その必要性の方向性に、全員が深く突っ込むのはやめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。