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星眼の魔女 第二部  作者: しろ
第一章

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第百三十話

ミアの言葉は静かに落ちたが、その一つ一つは軽くなく、書斎の空気に沈み込んでいくたびに、逃げ道のない選択を自ら塞いでいくような響きを持っていた。


「……罪深い、とは分かっています」


それは弁明でも、許しを乞う響きでもなかった、ただ事実として受け入れているという宣言に近い。


選ぼうとしている道がどれほどのものか、理解した上でなお手放さないという意思がそこにあった。


老師は何も言わない、遮らない、その沈黙が続きを促す。


「だからこそ、私は魔女なのだから」


小さな身体に似合わないほど、言葉は重く、確かな輪郭を持っていた。

魔女という在り方、それはただ力を持つ者ではなく、時に均衡を崩し、時に世界に楔を打ち込む存在。

その自覚があるからこそ、引き受ける覚悟もまた伴っている。


「罪を背負ってなお、行きます」


短く、揺らぎのない断言だった。


もしも自分が聖者であったなら、とミアはほんの一瞬だけ考える、傷つけず、誰も失わず、すべてを救う道を探すことを求められる存在、だが自分はそうではない。

そうであろうとすれば、おそらくどこかで歪む。

それを綺麗事のまま貫けるほど、この世界は単純ではないと、もう知っている。


「聖者であるなら、無血の道を探したでしょう」


言葉にすると、その距離ははっきりする、自分が立っている場所との違いが、くっきりと。


「でも、私はそうではない」


視線は逸らさない、逃げない。


「生と死の営みの中で……あえて、足掻き、もがき、苦しみたいのです」


それは美化された苦難への憧れではなかった。

むしろ逆で、避けられるなら避けたいものを、それでも避けずに選び取るという歪な覚悟だった。


楽ではないと分かっている、綺麗では終わらないと理解している。


それでも、その中でしか掴めないものがあると信じているからこそ、退かない。


言葉を終えたあと、静寂が戻る。

書斎の中で、薪のはぜる音すら聞こえないような沈黙。


老師はしばらく何も言わなかった、ただミアを見ている。


その視線には試す色も、叱る色も、今はもうほとんど残っていない。


代わりにあるのは、もっと別の、重さを測るような静かな観察だった。


やがて、ゆっくりと息を吐く。


「……そうか」


短い言葉。


だが、それはただの相槌ではなかった。


完全な肯定でも否定でもない、しかし確かに“受け取った”という響きを持っていた。


「ならば、その覚悟」


わずかに声が低くなる。


「最後まで貫け」


それは許可でも命令でもなく、条件だった。


ここから先に進むなら、途中で投げることは許されない。

その重さを理解した上でなお進むのなら、最後まで背負えという、静かな確認。


書斎の空気は依然として重いままだったが、その質はわずかに変わっていた。


押し返される圧ではなく、踏み込むことを許された者だけが感じる重みへと。

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