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闇めくトレジャーハンター・ゼロ ~異能の原石で誰もが能力者になれる8つの世界が交差するとき、その架け橋を【盗む】冒険の旅が始まる~  作者: ちーかま
第1章 闘技場編

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3話

 「サ(・)イ(・)キ(・)ッ(・)ク(・)」



 少年の声が聞こえた。


 すると次の瞬間、ゴリラの右手が逆再生のように横まで動き、後ろで左手と組まれた。

 次に、見えない手で足を払われたかのように、ゴリラが転んだ。

 そして大きな土煙を起こしながら、地面に倒れ込んだ。


 「あんた、大丈夫か?」


 目の前に、小さな右手が差し出される。

 俺はそれを掴むようにして、勢いよく立ち上がった。

 右手の主は、か弱そうな子供だった。



 「あいつは『サイキックボーイ』か?」

 「あぁ、おそらくそうだ。変幻自在の超能力で自分よりデケェ敵も倒す。闘技場トップクラスの実力者だぜ―――」


 少年の姿を目にした観衆が、次第にざわめく。

 この少年は『サイキックボーイ』という通り名なのか。


 「ありがとう―――けど君は一体?」

 「また、あとでな。話はあいつに勝ってからだ」


 少年は俺からゴリラへと焦点を合わせ直した。

 同時に、ゴリラが体制を立て直した。

 そして、改めてこちらを攻撃しようとしてくる。


 「グゴォォォォッ!!」

 「サ(・)イ(・)キ(・)ッ(・)ク(・)!!」


 すると、突然少年が叫んだ。

 その叫びに呼応して、少年の左手が紫色に発光する。

 まばゆい光が放たれている。


 いや、違った。

 左手が発光しているわけではないようだ。

 何(・)か(・)が、その左手にはめられている。

 それは腕輪のようにも、時計のようにも見える。


 少年は左手を突き出すようにして、何(・)か(・)のパワーを放出した。

 すると、ゴリラの身体が紫色の光に包まれる。


 緑色の身体はそのまま宙に浮き、だんだん上昇していく。


 ゴリラはなんとか抗おうとするが、空中では成す術もない。

 もはや胸板も無用の長物だ。


 「グルァ―――ッ!!」

 「まだだ、まだ勝てない―――更に高くッ!!」


 そして、柵を越え、闘技場の建物すらも越えていく。

 どんどん高度を上げていく。


 「もっと高く!!勝つためにッ!!」


 少年が声を上げると、更に巨体は上昇する。

 ゴリラを見ようと観衆たちは顔をあげる。

 だが、あまりに高くて首がこれ以上曲がらないといった様子だ。


 ゴリラの身体は雲にすら届きそうだ。

 だが、ありったけの高度を稼がれた所で、ふとゴリラは落下を始めた。


 「勝つんだァァァァ!!」

 「エ、エ、エアァアアアアア!!!」


 少年は雄叫びを上げた。

 落下によって、聞こえてくるゴリラの悲鳴が乗数的に大きくなる。

 俺たちには見えていなかったが、押し寄せる死の予感に、ゴリラの顔は恐怖で引きつっていた。


 そして―――



 ―――バァアアアアアン!!



 ゴリラが地面と激突した。


 高所からの落下でだんだん速度が上昇していって、最後は目視で負えない速さとなっていた。

 衝撃もとんでもなかったようで、とてつもない爆音が轟いた。


 そして、落下の影響で10秒ほど地震が起きた。

 あたりには土煙が舞い、2分ほど消えなかった。


 そして土煙が消えた瞬間、地面に倒れた巨体の姿が露わになり―――


 「おおおおおお!!」

 「やるじゃん、サイキックボーイ」

 「その巨体はなんなんだー?グリーンピースさぁん?」


 観衆の拍手や歓声が絶頂を迎えた―――




 ゴリラは即死だった。


 高所落下に伴うショック死。


 落下死ではない。

 皮肉なことに、頑丈な胸板が衝撃を吸収し、落下死を防いだらしい。


 だが、心理的なショックはとてつもなく大きかったようだ。

 あのおぞましい巨体は、今や白目を向いて地面に伏している。



 にしてもあの少年、サイキックボーイとは一体何者なのだ。

 謎のバリアや、ゴリラを持ち上げるとてつもないパワー。

 魔法の類だろうか。


 だが、そんな詮索は後だ。

 まずは命の恩人に対して礼を言おう―――




 俺は少年のもとへ向かおうと、身体を向けた。

 そして、驚愕の表情を浮かべた。


 ―――少年が血を吐いて倒れていた。

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