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闇めくトレジャーハンター・ゼロ ~異能の原石で誰もが能力者になれる8つの世界が交差するとき、架け橋を【盗む】冒険の旅が始まる~  作者: ちーかま
第1章 襲撃者C/立志編

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3話「不動と令嬢」

――― 同時刻 『導騎士団』本部―――




 この男は、常に冷静だ。


 組んだ両手に顔を預け、机に肘をつくようにして椅子に座っている。

 まったく微動だにしない。

 そして、力まぬようにつぶられた両目は、まるで世界の現実ではない、真理の側を見ているかのようだ。

 なんなら、視覚がなくとも「見る」ことができそうに思える凄みが、この男にはある。

 


 グゴゴゴゴ―――



 男の右眉がピクッと跳ねた。

 だが、この男は動じているわけではない。


 「地震か?」


 「そのようです」


 主からの問いかけにクールに答えたのは、『導騎士団』副団長のマルカだ。


 「まったく、物騒な世の中です。おかげで仕事は無限に入ってきますが」


 彼の両目の下には、黒とも紫ともいえない、不健康そうな色の濃いクマがある。

 日頃の重労働のため、寝ることも満足にできないのだ。


 「君は休もうとは思わな―――」

 「騎士団を畳んで頂ければ、仕事がそもそも来ないので休めるかと。」


 「来た仕事は全てこなす、その姿勢はたいへん好ましいんだがなぁ―――」


 マルカの鋭い皮肉を受けても、この男は動じない。

 もっとも、先程の発言が真意でないことくらい、この男には分かる。


 アンサー。

 それがこの男の名だ。

 『導騎士団』団長、不動のアンサー。

 憲兵団の最高指揮権を与る者にして、憲兵団最強の称号を持つ者でもある。


 左手には、六角形の腕輪が付けてある。

 錆びた歯車が何層にも重なったデザインで、中央には正方形の出っ張りがある。

 よく見ると、正方形の表面には微妙な凹凸があり、なにかを読み取る役目を持った機械のようだ。

 そして、この世界において、そのような機構を備えた道具は()()の他にない。


 ウォッチ『Σ(シグマ)』はまるで彼の不動なさまを映し出したかのように、一切のブレもなく時を刻んでいる。





 ――― 同時刻 『オピカス社』本社―――


 一人の少女が、眠りから目覚めた。

 ダイニングでミネラルウォーターを一杯飲むと、窓のそばに立って、景色を眺める。

 高層ビルの最上階、部屋の一面を占める大きな窓からは街をよく見渡せる。

 果てしなく続く、コンクリートと金属ばかりの街。

 だが、ドット単位で輝く建物の光は、人々は今この場所で生きているという事実を示し、多少の暖かみすら感じさせる。



 わたしは、この街が好きだ。


 そしてこの街は、わたしたち(オピカス)のものだ。



 少女はふっと笑みを零して、ベッドで再び眠りについた。

 この街、もといこの国の夜は明けることがないから、いまは何月何日の何時だ、なんてことは彼女には分からない。

 ただ、「今は朝の10時だ」と言ってしまえば、それをこの街に適用するだけの力が、オメガビジネスにはあった。


 少女の首には、胸元まで垂れる銀色のネックレス。

 その先には、Ω(オメガ)のデザインをあしらったパーツが付けられていた。



 リーナ・フィン・フィルは、大企業『オピカス社』会長の一人娘である。

 そして、オピカス社の運営する私設武装部隊『(ツイ)』に所属する優秀な戦闘員でもある。

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