025ー1 ポップ、ステップ、大要塞 1
【神聖国アガリアン、街道を南下する翔達】
目指すは南方の商都アッティーラ。そこからグアリテーロの故郷、夢燦河への直航便が出ている。
平穏な旅路を破ったのは、メロの鋭い感知能力だった。
「翔。魔物の群れが来る。右手の森林の奥から……数が多いわ」
翔の探知魔法が捉えたのは、七千八百匹という異常な規模のゴブリン軍。将軍級が率いている可能性が高い。翔は即座に周囲数百メートルへ思念波を放ち、旅人や商隊へ警告を発した。
「警告! ゴブリン軍接近中。安全を求める者は我らに参集せよ!」
街道は大混乱に陥るが、Cランクパーティ“祝福の風”のリーダー、グスタフらが翔の元へ駆けつけた。翔はイリスに斥候隊三百の排除を任せ、レイラとアメリアを本体の強敵排除へ向かわせる。
残った翔とメロの役割は、集まった百人以上の避難民を守り抜くことだ。
「これから砦を作ります。大きな音がするので耳を押さえて!」
翔は無詠唱で第六グレイド魔法『爆発』を発動。地を穿ち、水魔法で堀を、地魔法で島を作り、瞬く間に難攻不落の砦を完成させた。その様子を見ていた魔術師セキ・コーエンは、伝説級の所業に腰を抜かす。
さらに翔はメロに防衛を命じる。
「メロ。Lv.40程度の魔物を百ほど出して外を守らせろ」
メロが召喚したのは、黒曜犬や龍牙兵といった深層階にしか棲まない伝説の魔物たち。軍勢を前に号令を下すメロの姿は、もはや神の代行者の如き威厳を放っていた。
「メロ、俺は隊長格を叩いてくる。ここを頼むぞ」
「頑張って、翔!」
翔は空へと飛び上がり、ゴブリン軍の本隊へと旋回していった。後に残されたコーエンは、空飛ぶ少年と伝説を操る少女を前に、ただ呆然と立ち尽くすのだった。




