024ー5 その笑顔を永遠に 5
【アンジェリーナ・ゾリの実家、ゾリ伯爵邸にて】
行儀良く座るイリスとレイラを見ながら、翔は二人を連れてきて正解だったと確信していた。礼儀作法に自滅したメロと、人間の貴族を嫌うアメリアは留守番だ。
翔はレオン・ハルフォードの紹介状を手に、士官を望む有力冒険者という触れ込みでゾリ伯爵への謁見を果たした。
ゾリ伯爵は、娘のアンジェリーナを彷彿とさせる鋭い眼光を持つ男だった。翔はアリスの助言通り、魔法で創造した名剣『水晶剣』を献上。ランクAパーティ“賢人会”の実力を示し、食客としての逗留を認めさせた。
話題が娘のアンジェリーナに及んだ時、伯爵の顔に疲れた父親の影が差す。しかし、その対話を遮るように、招かれざる客が扉を蹴破って現れた。イレーネの主、フランツ伯爵である。
「ゾリ殿、こいつらは詐欺師だ! 私の騎士を誑かした泥棒猫め!」
逆恨みによる一方的な罵倒。抜刀して襲いかかるフランツだったが、翔にとっては児戯に等しかった。翔が放った最大級の闘気に当てられ、フランツは意識を失い吹き飛ぶ。
「悪いが伯爵、士官の話は白紙だ。こんな奴の言いがかりに付き合ってられん」
翔はフランツを投げ捨て、立ち上がった。困惑するゾリ伯爵に対し、翔はアンジェリーナの現状と、彼女が信じる道を進んでいることを告げる。
「もしあの子に会うなら、いつでも帰って来いと伝えてくれ」
大貴族の仮面を脱ぎ、一人の父親として零された言葉。翔は頷き、献上した剣の刀身にアンジェリーナの楽しげな姿をレリーフとして刻み、邸を後にした。
☆
邸を出て歩きながら、翔はレイラを宥めつつ、アリスに問いかけた。
(アリス、あの写真立ての横にあった小箱……包装紙に見覚えがあるな)
《『始まりの街』の雑貨店『パニエ商館』のもののようです》
アンジェリーナが大切にしているであろうその場所。翔たちは次なる目的地を『始まりの街』に定め、再び歩み始めた。
【伯爵の涙と不吉な闖入者】
・ゾリ伯爵邸にて、名剣を献上し食客の座へ。
・逆恨みに燃えるフランツ伯爵の襲撃と、翔の圧倒的な一撃。
・父としてのゾリ伯爵から、娘アンジェリーナへの伝言。
・新たな手がかりを追い、一行は「始まりの街」へ向かいます。
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