024ー4 その笑顔を永遠に 4
【修行履歴】
2019年10月30日
①24話を6分割しました。
②文章の訂正をしました。
③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。
【ユニコーンを走らせて、復活都市に入る翔達】
冒険者ギルド復活都市支部の入り口で、翔達は、立ち止まった。
直ぐに、ギルドから大勢の冒険者がユニコーンを見たさに走り出てきた。
大騒ぎになった。
翔達は、ユニコーンから降り立つと、メロは、ユニコーンを冥界に返そうとして意識を向けた。
────みんな。ありがと。またね。
ユニコーン五頭は、メロから魔力を与えられて、嬉しそうに輝きを増した。
そのお礼なのだろう、ユニコーン達は、揃ってメロの前に前足を折って頭を下げた。土下座して挨拶しているように見えた。
メロは、一頭一頭の頭を撫でて行く。
「ありがとう。またね」
今度は、声を出して言った。
メロのその姿は、見物する冒険者達には、とても幻想的な光景に見えた。彼らは皆、息を飲んでメロとユニコーンの行動を凝視していた。
「メロ。さっさと来い」
その神秘的な光景に一声で水を差したのは、翔だった。
冒険者達からは、微かな唸り声が立ち上がった。
翔は、アメリア、レイラの二人に挟まれて美しい絵画の一幅のような立ち姿で冒険者ギルドの階段の途中で待っていた。
イリスは、メロの手を取って、翔達三人の方に走り寄った。
メロは、翔に飛びついて、背中に飛び込んだ。その姿を見た、冒険者達に、強い衝撃を与えた。
メロの可愛いらしさと美しい純白のユニコーンとが伝説の神話のような雰囲気を醸しだしていたのに。
鍔広の帽子を宙に舞わせてヤンチャな子供のように飛びついて行ったその事実が彼らには信じられない出来事に見えた。
突然の飛びつきにバランスを崩しそうになる少年を両脇に歩く長身の美女が二人がかりでしっかりと押さえようと駆け寄った。
更に黒髪の美しい女の子が、後ろから支える為に駆け寄って、五人が団子になって冒険者ギルドに入って行った。
四人の美女に囲まれた男の子は、彼女達とどれほど仲が良いかは一目瞭然だった。
それを見ていた冒険者達から大きなため息の音が漏れていた。
☆
翔は、冒険者ギルドのサロン側の入り口からギルドに入り、そのまま受付に向かった。
受付嬢は、いつもの愛想の良い笑いを浮かべて翔達を迎えた。
「メロ。重いぞ、いい加減に背中から降りろ」
翔は、後ろを向いてメロを叱りつけた。
「ヤーダ。馬に乗り疲れた。私は非戦闘系の冒険者だから無理」
メロは、頬を膨らませて言った。メロのわがままは、翔への甘えでもある。満更では無い、翔なのだ。
可愛く、柔らかいメロの感触も嫌ではない。しかし、口では、違うことを言った。
「馬に乗り疲れてどうして俺に乗るんだ? それに嘘をつくな。お前がこの辺の奴らよりもよっぽど優れた戦士なのを、俺は、知っているぞ」
「相変わらずですね。翔さん、メロさん、アメリアさん、イリスさん」
受付嬢は、爽やかな笑みを浮かべながら、言った。
『マリージョゼ・リバス。二十六歳。レベル31。鑑定士。魔法騎士』
「マリージョゼさん。久しぶり」
アメリアは、挨拶をした。
「マリージョゼ。レイラは初めてだな。こんどメンバーになった」
「こんにちは。マリージョゼさん。私はレイラです。“賢人会”の新メンバーよ」
「こんにちは、レイラさん。凄いのね。レイラさんは、戦乙女なんですね。レベルは53。半神」
「レベルは、復活障害で少し下がったわ」
レイラが答えた。
「半年でこんな方をメンバーにするほど凄いパーティーになるなんて、思いもしなかったわ」
受付嬢のマリージョゼがため息まじりに言った。
「マリージョゼさん。今日は、ゲイリー副支部長に会いに来たんだ。取り次いでくれないか」
翔は、首にメロをぶら下げながら言った。
その姿を笑いながら見ていたマリージョゼは、頷いた。
「貴方達が尋ねてきたら構わず通すように言われているわ。どうぞこっちに来て」
翔達は、受付嬢のマリージョゼに案内されて巨大な応接室に通された。
昔、パーティランクFをもらった時に通された応接室のようだ。間もなくして数人の人達が入ってきた。
うち二人は旧知だった。復活都市支部の副支部長ゲイリー・グレンジャーとその秘書マリナ・マクファーリンだ。さらに見知らぬ二人の男がいた。
その二人は、見るからに高レベルの冒険者が放つ闘気を放っていた。
一人は、見るからに聖職者とわかる聖職紋である鉤十字を付けたマントを着た長身の聖騎士風の中年のオッサンで、もう一人は魔術師風の風貌をもつ中年のオッサンだった。二人とも渋い雰囲気を醸し出したオッサン達だった。
世界樹ネットのインターフェイスであるアリスが見せてくれる二人の情報は以下の通りだ。
『レオン・ハルフォード辺境伯、冒険者ギルド復活都市支部支部長。41歳。レベル56。聖騎士。魔術師団長』
『マルク・ル・アセリン復活都市侯、冒険者ギルド復活都市支部理事長。46歳。レベル53。魔法総督』
二人とも大したレベルだし、驚きの肩書きだ。翔が、今回復活都市に来た目的である貴族と知り合いになる事が、早くも実現しつつあるようだ。
「ゲイリーのオッサン。久しぶり。トライアルに成功したら尋ねるって約束だったのできたよ」
翔は、応接室に入ってきたゲイリー・グレンジャー副支部長に挨拶した。
「ああ。本当にレベルアップ・トライアル・ルートをクリアしたんだな」
冒険者ギルド復活都市支部の副支部長ゲイリー・グレンジャーが応接用の反対側に据えられた椅子に座りながら言った。
「一時は、みっともない姿を見せた」
翔は、言った。
「そんなことはないわ」
そう言ったのは、副支部長の隣に座った、秘書のマリナ・マクファーリンだった。彼女はタイトな膝上のミニスカートから美しい脚を惜しげもなく出して余裕の笑みを浮かべていた。
彼女のその余裕の雰囲気が、彼女の魅力だ。大人の女性の色香を存分に発揮していた。
「貴方達は、最近の若者の中ではダントツのタフさよ」
「マリナさん。益々妖艶さを増したようだね」
翔は、マリナの美しい脚をよだれを垂らすように見るフリをしながら言った。
マリナはクスリと笑ってわざと脚を組み替えて見せた。翔は、思わす本気で脚に視線を向けた。メロが頬をプクリと膨らませて翔の腕をつねった。
「君達と挨拶するのは初めてだ、私は当支部の支部長のレオン・ハルフォードだ」
翔の真正面に座った、復活都市支部の支部長レオン・ハルフォードは、自ら自己紹介し、更に、横に座る男を示して、紹介した。
「こちらが、復活都市侯マルク・ル・アセリン総督閣下だ」
「お初にお目にかかる。期待のルーキー君達。私は、この復活都市の総督のマルク・ル・アセリンだ」
「ゲイリーのオッサン。このお二人はどうして?」
「そもそも、君達は注目の的だったんだよ」
ゲイリー・グレンジャー副支部長が笑いながら説明した。
「メロ君も、アメリア君も、イリス君もね。今度メンバーになったというレイラ君も我々は、興味深々なのさ」
「よく分からんな。冒険者ギルドってのはそんなに会員に興味を持つものなのか?」
翔が腑に落ちないと言うように聞いた。
「君らは特別に決まっている。ギルドは終末戦争を少しでも有利にするために必要な人材を常に探しているのだよ」
副支部長のゲイリー・グレンジャーが言った。
「俺達は、ただ自分達の目的のために頑張っているだけだ。そんな崇高な目的を持っているのはレイラだけだよ」
翔は肩、をすくめて見せた。
「もちろんだ。所詮、終末戦争どころか、次の蝕ですらいつ頃起こるのかも分からんのが本当のところさ。人は理想だけでは動かんさ」
ゲイリー副支部長は、笑いながら言った。
「おいおい。あからさまだな。お偉いさんの前でそんな事を言っていいのか」
翔は、ツッコミを入れる。
「君達は、この短期間で恐るべきレベルアップを成し遂げた。半年余りでレベル50以上もあげたのは龍種の血を浴びて不死身となったガウトランド王国シグルズ王以来だろう」
────アリス。ガウトランド王国シグルズ王って誰だ?
《伝説の神龍の血を浴びて不死身となった英雄王です。神剣グラムを操り、半神英雄となりました。先の九回目の蝕で命を落としました。神剣グラムは、孫の現冒険者ギルドの理事でもあるジークムンド・ノルドハイムが引き継いでいます》
アリスが教えてくれた。
「翔君は、世界樹ネットの端末と思考会話ができるのかい?」
驚くべき慧眼を発揮して尋ねたのは、支部長レオン・ハルフォード辺境伯だった。
「あなたは、どうなんです?」
翔は、回答を避けて質問した。
「私は辺境伯なんて位を持つ貴族だが、貴族などは責任ばかりの名誉職だと思っている」
レオン・ハルフォトードが柔らかい笑みを浮かべて言った。
翔は、眉を少しだけしかめてみせただけで黙って話の続きを待った。
レオン・ハルフォードは、腕を組んで考え込むように目を閉じた。
「私は貴族などになりたくもなかったし、それが凄いとも思っていない。しかし、貴族には幾つか特典があるのも事実だ。世界樹ネットの端末を使う事ができるのもその一つだ」
レオン・ハルフォードは、そう言うと目を開いた。
《気をつけてください。レオン・ハルフォードの話は翔様から情報を取ろうとする罠かと》
────分かっているさ。
翔は、心で答えた。
「レオンさん。何が言いたいかバカな俺にも分かるように言ってくれ」
翔は、少し真剣な表情になりながら答えた。
「つまりだ。貴族の特権とも言える『ネット権』を持ち、しかも端末は思考会話対応型ともなれば、君は王族を飛び越して神器の所有者って事になるんだが。君は、何者なのかと思ってね」
「あなたは、空想力が豊かですね。あなたの空想に付き合うは無理ですが」
翔は、笑って話を流した。
「翔。あまり失礼があっても」
そう言ったのはイリスだった。
「イリス。お前は分からん奴だ……」
翔は、呆れてイリスの顔を覗き見た。
イリスは、激昂すると我を忘れて狂気の戦士ベルセルクになる。その癖、普段はメンバーの中で一番の優等生で、冷静なようだ。
メロ、アメリア、レイラの三人も、翔とレオン辺境伯の真剣勝負のような会話になど、興味もないとばかりに全く無視しているのにだ。
メロなどは、いっそ居眠りすらしている。
「イリスちゃんだったね。成り上りの私への気遣いは無用だよ」
レオン・ハルフォードが軽く言った。
翔は、面倒臭くなったので本題に入る事にした。
「ところで、ハルフォード辺境伯。ゾリ伯爵と会いたいんだが、何とかならないですか?」
「ゾリ伯爵? アンジェリーナでも探しているのか?」
レオン・ハルフォード辺境伯は、単刀直入に尋ねた。
「オッサンは頭が良すぎだな」
翔は、驚いて、思わず呟いていた。
「俺は、“矢羽”のグアリテーロって隊長の居所を探してるんだ。今ある手掛かりはアンジェリーナの実家のゾリ伯爵だけなのさ」
「なるほど。アンジェリーナが実家に便りでも出していないか、ということだね」
辺境伯は翔の考えを読むように言った。
「オッサンは、あんた。友達。少ないだろう」
翔が突っ込みを入れた。




