024ー2 その笑顔を永遠に 2
【修行履歴】
2019年10月30日
①24話を6分割しました。
②文章の訂正をしました。
③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。
「話は、変わるがイレーネは一人でレベルアップ・トライアル・ルートに挑戦したのではないんだろう」
翔は、話題を変えて、イレーネの近況を尋ねた。
「隊長のガーハード・オレク、聖騎士のレーベン・マーズ、召喚士のディリア・シュトローメンの三人が一緒だ」
ブリュンヒルデが答えてくれた。
────そうか。あの、いけ好かない貴族は、抜けたか。良いパーティーになりそうだ。
翔は、嬉しそうにそう考えていた。
「有難う。彼等を宜しく頼む」
翔は、そう言うと頭を下げた。
「ふふふ。お前は礼儀正しいのか無礼なのか分からん奴だな」
ブリュンヒルデは、翔の礼を見て言った。
「私も今回は、いろいろ考えてルートを微調整したさ。お前達には、そう言う意味でもいろいろ助けてもらった事になる。困った時があったら尋ねて来い」
────女神さんの家に尋ねていけるんかい。
翔は、心の中だけで突っ込んでいたが、口では黙って礼をした。これは口元が変な歪み方をするのを隠すためだ。
ブリュンヒルデは、尊大に「うむ」と頷いていた。
メロ、アメリア、イリス達は、横目で翔の口元を見て、三人三様で呆れていた。女神が後ろ盾になってくれるのだ、こんな有難い事はないだろう。人によっては泣いて喜ぶだろうに、三人は翔の不遜な態度に、ヒヤヒヤした。
「レイラ。お前の友達の天使のアルメルスがお前と話したいそうだ」
画面にレリエルとは全く違う感じの美しい天使が入ってきた。美しい白肌が輝いている。
「レイラ。貴方に緊急で知らせたい事があるの」
その天使は、緊張した面持ちで言った。
「どうしたの?」
レイラが復活障害で憔悴した顔をして、肩で息をしながら言った。
その天使は、レイラ以外の人達を一目見回した。
「レイラ。復活障害だそうね。大丈夫?」
「大丈夫よ。話とは何なの?」
レイラは、先を促した。
「この人達がレイラが言っていた人達なのね。こんにちは、皆さん。皆さんの事は、いつもレイラから聞かされているわ。翔様は、とてもエッチなんですってね」
天使アルメルスは、胸の辺りを隠すようにして言った。
「おい。俺を、どんな風に言ってんだ?」
翔は、レイラに言った。
レイラは、いたずらっ子のような笑みを見せた。
天使アルメルスは、くすりと笑った。
「翔様。大丈夫ですよ。レイラさんは、翔様の事をしきりに話してましたが、決して嫌そうには、話してませんでしたわ。私の名はアルメルス。平の天使です。突然、話に紛れ込んで済みません。私達の上司の天使長は、力天使のレリエル様です」
「何?」
翔は、驚きの声を上げた。
「レリエルがどうしたというんだ?」
「私達は、天使長から貴方を探すよう申し付けられたのです」
「アルメルスさん。どういう事ですか?」
レイラも尋ねた。
「レリエル様は、どうやら半年程前から翔様の行方が分からなくなったようなのです。私達、平天使は、人間界に出入りが自由なので天使長レリエル様から、直接人間界に入って翔様の情報を収集するように命じられたのです。しかし、翔様の人物像を聞くと、どうもレイラさんがいつも噂していたショー様と同一人物なのが分かりました。
レリエル様は、とかく悪い噂の絶えない天使長様。私達も悪事に加担しないように気をつけて、お仕事をしているの。
レイラさんのお話と重ね合わせるとレリエル様のご命令は、とても怪しく感じたの。
それで、一先ずレイラさんに伝えにきたの。事情をブリュンヒルデ様にお伝えしたところ、レイラさんは、その翔様とパーティーを組まれて修行の旅に出られるとか」
天使アルメルスは、心配そうな顔で事情を説明した。
半年前と言うと、翔達がレベルアップ・トライアル・ルートに入った頃だ。
「俺の行方が分からなくなった事の理由をレリエルは何か言ってなかったか?」
翔は尋ねた。
「はい。何か女神様が隠蔽に関わる魔術を使われたようだと」
天使アルメルスが答えた。
「つまり、魔術師の第二職を隠してもらった時の効果で俺の行方が分からなくなったんだな。ますます、俺達の個人情報を何とかしないとやばそうだな」
翔は、暗澹とした表情でつぶやくようにいった。
「アルメルスさん。ありがとう。助かります」
レイラは、言った。
「レイラさん。久しぶりにお会いしました。随分ご立派になられました。私から祝福を授けさせてください」
天使アルメルスは、そう言うや投げキッスをした。
不思議な光がレイラを取り囲み、キラキラと輝いた。レイラの復活障害で憔悴しきった顔が生気を帯び、みるみる普段の美しい上品で生き生きとしたレイラの顔に戻って行くのが分かった。
「アルメルスさん。感謝します。これで直ぐにでも翔達と一緒に旅に出れますわ」
レイラは、可愛い顔に笑みを浮かべて言った。
────さすがに天使だ。
翔は、密かに驚いていた。天使の使った祝福とは、回復系魔術の最高位の魔術のようだ。その魔術は翔も知らない種類の魔術だった。翔は、その術式をじっくりと見つめていた。
画面にブリュンヒルデが現れた。
「天使長レリエルとは、どんな関係なんだ?」
ブリュンヒルデが尋ねた。ブリュンヒルデの目が興味深そうだ。
「俺は、あいつから酷い目に合わされたんだよ」
翔が答えた。
「酷い目か。具体的に説明するつもりはないか」
ブリュンヒルデが問うた。
「俺はある者から、天界の住人は、たとえどんな罪を犯そうが罰せられる事はないと聞いたことがある。下手に告げ口すると逆恨みされかねないんじゃないか。できれば俺の事は、レリエルに黙っていて欲しいね」
翔は、改めてお願いした。
「まぁ。その通りだな。主神オーディン様のお妃様フリッグ様に目をかけられているような天使長が、たとえ多少の悪戯をしても誰も何も言わないな」
ブリュンヒルデが笑いながら答えた。
「あいつは、転生女神フォーチュナーの使い天使だった頃に、神器『転生車輪』を悪用して多くの逸材を自分の傘下に加えたと聞いている」
────なるほどな。
翔は、初めてレリエルがなぜ自分を転生させようとしたか理由を知った。
「俺は、街で一度レリエルに有った事がある。その時も酷い目に合わされた。今度会えば何をされるかわからない」
翔は、改めて詳しい理由を言わない説明をした。
「それは、気の毒な事だったな。お前の事はレリエルには、内緒にしてやろう。レリエルは、実力のある天使だが、あまりにも悪目立ちし過ぎている。たとえブリック様のお気に入りでも、このまま昇天して神籍に入る事は、無いだろう」
ブリュンヒルデは、言った。
昇天して神籍に入る。それがレリエルの目標なのだろうか。翔は、興味があるが、あまり立ち入った質問をしない事にした。
とにかく翔の転生の秘密は、レリエルに絶対に知られない事だ。そんな事になればレリエルは、全力で彼を消しにかかるだろう。
「ブリュンヒルデ様。ヴェルダンディ様。俺達は、グアリテーロの消息を探す。目的を達したら褒賞を頂きに来ます。世話になりました」
翔はそう礼を言った。
メロ、アメリア、イリスが翔を見習って礼をした。ブリュンヒルデとの話中に誰も何も言わなかったのは、翔とレリエルとの事を彼女達なりにいろいろ考えての事だろう。
後で、レイラも含めてもう一度詳しく説明しようと翔は考えていた。




