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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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021ー1 魔精結晶さん?

【修正履歴】

2019年10月9日

○第21話を4分割しました。

○分りにくい表現を訂正しました。

○少し加筆しています。

○主人公等の思考を表す表記の方法を以下のように変更しました。


(主人公等の思考)

    ↓

────主人公等の思考。


なお、この変更は、順次行っています。

表記がしばらく混在しているので、お許しください。

【第百層。始まりの部屋】


 メロは、夢うつつの中で美しい旋律を聞いた。はっきりしない頭を振って意識を呼び戻した。


 横を見るとアメリアは、昨夜のうちにまた繭になったようで、白い糸に巻かれてマリのようになっていた。


 その横のベッドに、翔は、だらしなく涎をたらして寝ていた。


 メロ達は、百層に降りると、体力の回復のために寝る事にしたのだ。


 アメリアは、寝ている間に繭になったのだろう。


 どこかから流れてくる旋律は、女の子の声か? それともソプラノの美しい歌声のようだった。澄んだ綺麗な声だ。


 メロは、翔を起こそうかと考えたが、少し可愛いそうになって起こさなった。


 しかし一度、興味を持つと諦められない子供のような性格のメロは、後先も考えずに歌声の正体を探りに行くことしたのだった。


 妖精や妖怪の中には、歌って惑わせるような者もいると聞く、しかし正体が見たくなったら我慢の出来ないメロだった。


 メロは、一人で『始まりの部屋』を出た。第百層がどのような構造になっているのかは、まだ不明だった。見た感じは、今迄の迷宮と変わりなかった。


 メロは、『微光ランプ』の魔法を唱えた。第三グレイドの『光沢フルライト』の魔法は、攻撃魔法では無いので、まだ覚えていなかった。


 メロは攻撃魔法専門なのだ。『微光ライブ』の魔法は、弱い光が、自分の移動に追随してくれるのが、特徴の第一グレイドの便利な魔法だった。


 しばらく歌声を追いかけて行くと、暗闇の洞窟の先に光が見えた。


 さらに歩いてくと、大きな扉があった。


 その扉は、既に左右に大きく開いていた。


 そこから光が漏れていたのだ。扉は巨大なだけでなく豪華であった。


「凄い」


 メロは、扉の見事な彫刻に思わず呟いた。


 歌声は、扉の中から聞こえ続けていた。メロは、何の注意も払わず、後先構わずに、中に入って行った。


 扉の中は真昼の明るさだった。そこには、光が満ちた、大きな空間が広がっていた。見上げると青空が見えるのでは無いかと思ってしまった。


 しかし、実際に見上げると空でなく、洞窟の天井があり、大きな光り輝く水晶が見えた。よく見るとあの水晶は多分、第九十九層『水晶の大広間』の床部分のようだった。


 視線を転じて大広間の先をみると、そこには大きな宮殿が建っていた。


 歌声は、その宮殿から聞こえてきた。メロは迷わず歌声につられて歩いて行った。


 戸惑うなどといった普通の感覚が麻痺しているかのような行動だ。赤ん坊と変わらない。


 宮殿に近づくと、大きな泉があった。そのほとりに、一人の少女が佇んでいる後ろ姿が見えた。そして、その彼女が歌っているようだった。


 メロはスタスタと、どんどん構わずに近づいて行った。ほとんど間近まで近づいたが女の子は、気付かなかった。


 その少女の身長はメロよりも小さく、か弱くみえた。髪の毛が長く背中に垂れていた。肩が細くてその肩が、とても寂しそうに見えた。


 その少女はレベルは高くないが一目で普通じゃない、少女だと分かった。


「レベルも年齢も変。なぜ裸なの?」


 メロは、尋ねた。


 女の子が歌うのを止めて突然、振り返った。目に狂気が宿っていた。


 次の瞬間その女の子は、メロにいきなり攻撃をしかけてきた。


 ベニベドルから剣術を教わっていなかったら、もろに受けたに違いない。それほど鋭い攻撃だった。


 しかしメロは相当に腕が上がっていた。女の子の攻撃は、野生の鋭さは有ったが単調な攻撃だったので、メロはその攻撃を軽くかわすこのができた。


 その時、メロは女の子の瞳の異常さに気付いた。瞳孔が赤く怪しく輝き白目部分に赤い血管が浮き出ていた。それは狂気の表れに見えた。


 少女の目に潜む狂気が、目全体に広がり深まってゆくようだった。


 それと、同時に手から禍々(まがまが)しい魔力が湧き出てきた。女の子はそれを集めて、手の平に黒い塊を作り出した。


 女の子は、不気味にニヤリと笑うと、その黒い塊をメロに向けて投げつけた。


 メロは、一瞬避けるか叩き落とすかを逡巡してしまった。その一瞬の迷いがいけなかった、中途半端に避けてロッドで叩きおとした。


 恐ろしい衝撃波がメロを襲った。無意識に闘気バトルオーラを纏っていなければ完全にやられていただろう。


────どんな効果があるのか分からないものを叩くなど愚かだった。


 後悔の念が、灼熱の溶岩のように柔軟な思考をそぎ落としそうになるのを無理やり押し止め、心を静めようと努力した。


 メロは、心気を澄まして、相手の出方を見た。少女は今の攻撃でメロが倒れなかったのが不満そうで、首をかしげていた。


 可愛い顔と殺気立った目が対照的だった。


 メロは、女の子の情報をもう一度読み取ってみた。


『年齢0歳。レベル18。魔精結晶』


 メロの能力で分かるのは、ここまでだ。


 翔のように、詳細までは、分からない。でもこの女の子の情報はめちゃくちゃのような気がした。


────何。この子。裸だし。


 メロは、闘気バトルオーラを全開にして、女の子の攻撃に備えた。


 強力な闘気バトルオーラの気迫が少女を襲っているはずだが、女の子は気にもならないようだ。


 自分の闘気バトルオーラなど価値が低いと過小評価しているメロは、その不自然さが分かっていなかった。


 女の子は、恐ろしい勢いでメロに飛びついてきた。


 メロはロッドで女の子を突っぱねて、避けた。さすがに可愛らしい女の子に対して、ロッドで叩くような事はできなかった。


 女の子は、幾度もメロに飛びかかってきた。


 女の子の動きは、鋭く、俊敏だった。一つ一つの攻撃は、無駄が多くめちゃくちゃだった。


 もし、メロがベニベドルに剣を教えてもらっていなかったら、この女の子の攻撃に手も足も出なかっただろうと冷や汗がでる。それほど鋭く素早い攻撃だった。


 女の子も自分の攻撃がメロに少しも当たらない事に苛立っているようだ。


 女の子は、不思議な魔法術式を展開した。メロは、その魔法術式を見た事が無かった。


 手から、黒い剣のようなものが出てきた。


 女の子は、その剣を目にも止まらぬ速度でメロの顔面に叩き込んできた。メロは、それをロッドを軽く当てて逸らした。


 剣技の実力差がある時は、このような事ができるのだ。


 相手の剣先けんせんの軌道を少し変えると相手はバランスを崩して自滅するのだ。


 その隙をロッドで叩きつければ終わりなのだが、メロは、ここで迷ってしまった。


 女の子は異常な力を示し、崩した体勢から無理矢理黒い剣の方向を変えて、メロに一撃を浴びせようした。


 メロは、その手をロッドで押さえつけた。


「ギャー!」


 女の子は、気が狂ったような叫び声を上げて、無茶な姿勢のままメロに押さえつけられている手の傷付くのも無視し、剣を無理やり降り抜いた。


 メロは、必死に後ろに飛び退って、その斬撃をかわした。


 そのすきを狙い女の子は、先程投げつけた黒い塊を幾つも作ると、メロに向けて投げつけて来た。


 メロは、慌てて魔法防御マジックシールドを張って、黒い塊の爆発から逃れた。


 女の子は、不思議そうに何度も首を傾げている。


 全ての攻撃がかわされているからだろう。しかし攻撃され続けるメロも次第に肩で息をするほどに疲れてきた。


 長く迷宮を冒険してかなり体力がついたはずだが、女の子は平気そうなのに、メロは少し焦ってきた。このままではジリ貧だ。


────この小さく弱そうな娘をロッドで叩く事ができる?


 メロは自問したが、とてもできそうになかった。メロも困り果てた。その時だ、メロの視界に人影が入ってきた。


 素早く影は、メロの視界の端を動き、女の子を羽交い締めにした。


 女の子は「ギャーギャー」と凄まじい気の狂ったような大声で喚きたてたが人影は素早く、そして力強かった。


 その人影は、闘気バトルオーラを纏った翔だった。女の子はジタバタするが取り押さえられて何もできない。


「メロ。こんな小さな子をいじめたらダメじゃないか」


 翔が、メロを叱りつけた。


「ごめんなさい。突然話しかけたから怒ったみたい」


 メロが珍しく素直に謝った。


「この子は誰なんだ?」


「分かんない。魔精結晶さん?」


 メロは、翔に答えた。


「魔精結晶さん? 何だそれは?」


 翔は、呆れて聞き返した。


 そもそも、翔は裸の女の子を直視できず、羽交締めにしつつも、どう女の子に触ったら良いか分からずに困り果てているのだ。


 羽交締めの手が抜けて、思わず女の子の胸に手が当たり、慌てて別のところを掴んだりしている。


「翔。エッチ。ダメ。その子の裸を覗き見るな!」


 などとメロに叱られている。


「どうしたんだ? 騒がしいな」


 その時、繭になっていたアメリアがのんきに現れわれた。


「歌だ!」


 アメリアを見た瞬間にメロは思い付いたとばかりに叫んだ。


「その子は、歌が好き。アメリアの綺麗な歌声を聞かせてやって」


 アメリアは、不思議そうに三人の様子を見ていたが、メロの頼みを聞き入れたのだった。

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