017ー2 復活は、死ぬよりも辛い?
さっと、翔が六角棒を構えた。少し大袈裟なその動作は明らかな照れ隠しだったが、それが戦い再開の合図となった。
レイラの剣撃が翔を見舞う。明らかに手加減された一撃だったが、それでも恐ろしい速度と威力だった。
剣撃は翔が隠蔽して構築した魔法障壁に激突し、轟音を上げた。何重にも重ねた障壁が次々と突破される。
レイラは、まさかそんな場所に障壁があるとは思わず、目を丸くして驚いた。
しかし、その衝撃は翔たちに大きなダメージを与えていた。やる気のない手加減した一振りでさえ、受ける方は必死だ。気を抜けば意識を失いかねない。
メロは片膝をつきながらも、最強の精霊ウリスクを召喚。爆発の魔法を無詠唱で連発した。
レイラはその構築速度に驚きつつも、爆風を剣で軽快に切り裂いていく。だが、彼女が次の動作に移ろうとした瞬間、腕が翔の仕掛けた隠蔽機雷に触れて爆発が起きた。
小さな爆発だったが、レイラの隙を作るには十分だった。その刹那、翔は金棒を無数の針に変え、四方からレイラを包み込むように放った。
「っ!」
本気でひやりとしたレイラが全力で飛び退く。だが、その先には翔の機雷原を正確に避けて突っ込んできたアメリアの剣があった。
翔のトリッキーな攻撃を予測した、見事な連携。アメリアは宙に浮くほどの速度で切り込んだ。
しかし、その鋭い刺突でさえ空を切る。レイラは余裕を持って回避し、アメリアの剣先を跳ね上げた。
「……少しだけ、お返しね」
レイラが軽く叩き込んだ剣撃の衝撃だけで、アメリアは何メートルも弾き飛ばされた。
加勢しようとした精霊ウリスクも、レイラの容赦ない横薙ぎの一撃で霧散する。衝撃波だけで翔たちの全身に痺れが走った。
次の瞬間、レイラは全力の斬撃を放った。
自分たちが真っ二つに切り裂かれる感覚。意識が暗転する中、翔は必死に防御術式を三人同時に展開した。
────少しでも、死の恐怖を和らげたい。
消えゆく意識の中で、翔は自らの稚拙な魔法を嘆きながら、深い死の暗闇へと飲み込まれていった。
☆☆☆
【天界にて】
「ご苦労様。彼らはどうだった?」
ブリュンヒルデの問いに、レイラは戦いの様子を詳報した。
最後にパーティー名が『賢人会』だと伝えると、ブリュンヒルデは一瞬目を点にしたが、レイラの「彼らは大真面目だった」という補足を聞いて、高らかに笑った。
「なるほど。我がコースをそれほど真面目に目指してくれるのだな」
ブリュンヒルデとレイラは、翔たちが世界を救う大志のために、あえて魔精結晶を断り、厳しい試練に挑んでいるのだと完全に勘違いしていた。
☆☆☆
【復活の天宮にて】
「三人同時とは珍しいですね。翔さん、お久しぶり」
シスター・サラの優しい声で意識が戻る。翔は憔悴しきっていたが、記憶を維持したまま復活を遂げていた。レベルは一つ下がり、7となっていた。
翌朝、宿舎にギルドのゲイリー副支部長と秘書のマリナが現れた。
「驚いたよ。あの伝説のトライアル・コースに挑戦したそうじゃないか」
彼らは、ユニオーガ退治の功績として、翔たちにランクEのカードを手渡した。
驚くべきことに、復活都市の冒険者たちの間では、翔のことは「凄まじい復活障害を乗り越えて即座に復帰した男」として噂の的になっていた。
「皆、今度こそ君がリタイアするって噂しているわ。でも……」
マリナが顔を近づけ、翔をからかうように微笑む。
「あなたは最短記録をまた更新した。今の話だと、まだ頑張るのね?」
「当たり前だ。最初から分かってて挑戦してるんだ。回復次第、また行くさ」
翔の揺るぎない決意に、ゲイリーは晴れ晴れとした顔で笑った。
「君は本当に、我々には測れん器の持ち主のようだ。次に会う時はレベル差でビビらせてくれるのを期待しているよ」
別れ際、マリナは寝ている翔の頬にキスを残した。
「死の恐怖を物ともしない貴方は、とてもいい男に見えるわよ」
去っていく二人の背中を見送りながら、翔はふと気づく。
なぜか、格上であるはずのゲイリーとのレベル差による威圧感を、以前ほど感じなくなっていた。
【試練の間・初挑戦結果】
○翔:Lv7(1 DOWN)/戦闘Lv23相当・魔法Lv11相当
○アメリア:Lv10(1 DOWN)/戦闘Lv12相当・魔法Lv13相当
○メロ:Lv10(1 DOWN)/戦闘Lv10相当・魔法Lv21相当
018 了
更新しました!
Lv51の戦乙女に真っ向から挑んだ翔たちでしたが、結果は無残な全滅……。
しかし、その勇姿は神々やギルド幹部たちを大きく動かしたようです。
ランクEへの昇級、そして謎の「レベル差の違和感」。
一歩引いたことで見えてきた強さの階段を、翔たちは再び登り始めます!
次回、再始動。お楽しみに!




