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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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015ー8 蝶々は蛹に戻れるのか?

2019年9日6日第015話があまりにも長かったので八話に分割しました。

 翔達は、全ての魔物の素材の鑑定が済のて買取カウンターから受付に戻った。


 一角岩鬼ユニオーガ討伐の報奨金と合わせて七十五金貨あまりが支払われた。


「翔さん。凄いです。こんなに一人で持ち込まれたのは初めて見ました」


 エミナは、既に相当に興奮していた。もはや、翔達の実力を疑うどころか、賞賛することにためらうことは無かった。


「ああ。そうなの。それより『レベルアップ・トライアル・ルート』クエストの受付をサッサと済ませてくる?」


「すみません。疑った言い方をしてしまって。翔さんは私の常識で判断してはダメな方なのですね。もう、突っ込みません。でもレベル8がどうしてもチラついちゃいます」


「そのようだな。だからサッサとレベルを上げるための『レベルアップ・トライアル・ルート』だろ?」


「はい。承知しました」


 翔の横柄な態度も今では違和感がなくなっていた。


「それでは『レベルアップ・トライアル・ルート』クエストの受付をします。このクエストについて、何か質問は有りませんか?」


「どんなクエストか一応説明してくれ」


「承知しました。しかし、私も知らないクエストなので端末の情報を読ませてもらいますね」


「それで構わない」


「これは、戦女神ヴァルキューレのブルュンヒルデ様が設計された冒険者支援ルートです。創られたのは、ギルドの草創期ですね。このクエストは最近は使用された事はありません。まずルートの初めとして、肩慣らしという事らしいです。それでは概要を説明しますね、、、、え? す、水晶迷宮の……き、九十九層を、さん? 三度往復した後に最下層の百層にあるラスボスを討伐し魔精結晶を採取。それを、十? 十回も行った後、今度は五百?、すみません。五百層もある金剛迷宮を同じように攻略……。次に私はどこか知りませんがサバン魔峡にて魔精結晶を採取だそうです。しかも条件があり、そこの魔物を全て狩り取ると書かれています。それからギカン火山の巨人族ギガンデス狩りを行う……」


 ここでエミナは端末を読むのを止めて翔を見た。顔が青ざめている。


「……。翔さん。これは神話のような内容ですね」


「もういい」


 翔が遮った。翔は薄々想像していたが相当にえぐいクエストのようだ。


 その内容が難しい事は、受付嬢の態度を見なくても翔にも容易に想像できるほど難しそうな内容だが、受付嬢の態度が翔の気分を更に落ち込ませた。


────アリス。本当に大丈夫か?


《もちろんです。何度も死ぬでしょうが、復活できます。それがトライアルと言う意味です》


────マジかよ.......


 翔はそう思いながら迷妄めいもうした。


 エミナは、迷妄する翔の姿を見て少し安心した。


────諦めるのだろう、、、、


 そう思った。


「もう、説明は良いからサッサと登録してくれ」


 翔はウンザリしたような声で言った。


「本当に登録するんですか?」


 エミナの声は裏返っていた。


「サッサとしろと言っている」


「す、すみません」


 翔から叱責されてエミナは慌てて登録手続きをした。


「登録が済みました」


 エミナは、そう言うとクエスト証明書を翔に渡した。そのエミナの手は震えていた。


「ありがとう」


 震えるエミナの手に苦笑しつつ、それでも翔は礼を言ってサッサと立ち去ろうとした。


「待ってください。パーティーの皆さんの情報を入手するためにランクカードを預かっています。更新が済んだようなのでお返しします」


 エミナが先程預かったカードを端末から抜きとった。


 その一瞬に、ステータス合計の欄が彼女の目に入った。


 エミナはふとアメリアの数値の変化に注目してしまった。彼女ステータスの合計値は、確か千六百余りだったはずだ。その数値が千九百キッチリになっているのが見えた。丸い数字になったので見間違えではない。ザッと暗算するとレベル換算で約18に変わっていた。


────こんなに数値が上がるなんて、、、、


 そう思いながら、ステータスが上がったのなら条件クリアに支障がないのだから問題はないだろうと構わずカードを翔に渡した。


 翔は、カードを受け取るとさっさと去って行った。


 残されたエミナは、クエスト受付の残務処理をしていて飛び上がった。


 クエスト受付の注意事項に、赤く点滅する注意メッセージが表示されたのだ。見ると【即時報告規定適用】と書かれていた。


 こんな規定は見たことが無かった。


 エミナは、何だろうと規定集をひっくり返して確認した。


 規定集には、『可能な限り速やかに理事会に報告するよう取り計らう』とあった。


 エミナは、今日が理事会だと知っていた。直ぐに知らせなければならないだろう。


 エミナは、後の事を隣の別の受付嬢に任せて後ろのドアーに走って入って行ったのだった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




【エミナが理事会に駆け込んで間もなく。ギルド本部の理事会会場では……】


 エミナが理事会で即時報告規定に該当するクエストである『レベルアップ・トライアル・ルート』クエストが申請された事を報告し、それに神々の代理人として理事会に出席していた理事アデル・メイシー半神英雄エインヘリャルが食いついた。


戦女神ヴァルキューレのブリュンヒルデ様に報告せねばなりません。その申請した者はどんな冒険者なのですか?」


 エミナは、翔達のレベルやステータスの事一角岩鬼ユニオーガ討伐の事などを詳しく説明した。


「……それから、彼らのメンバーの一人、アメリア・ラサーンの能力ですがレベルは下がっているのに前回からなぜかステータスが三百以上も急に上昇しました。変わったのは職業がレア職のオプティマスという職業に変わったというところでしょうか」


至高者オプティマスに変わったと?」


 神々の代理人アデル・メイシー半神英雄エインヘリャルが尋ねた。


「はい。至高者オプティマスです」


「恐らくその娘は至高者オプティマスの脱皮を行なったんだろう」


 そう言ったのは、理事、火の妖精種ユッシ族の長、ベルンハルト・シェーペリだった。


「我々が住むエルフピラタ、皆さんはアルフヘルムと呼ぶ光の妖精の世界に住む古の神々、至高者オプエィマスは、脱皮をする度にステータスが上がるという事を聞いた事がある」


「ほう。受付のお嬢ちゃんの話からすると、なかなか面白いルーキーが現れたようじゃな。“賢人会”とは気宇が大きい。はははは」


 楽しそうに笑ったのは、大賢者ゾングアルス・リルドベリだった。


「大賢者殿がお認めになるルーキーとはなかなか先行きが楽しみですな」


 若手の理事ジークムンド・ノルドハイムが手を叩いて言った。


「アデル様、先程そのトライアルとか言うクエストを戦女神ヴァルキューレブリュンヒルデ様に知らせなければならないと仰っていましたが、どのようなクエストなのですか?」


 オロフ・グルブランソン理事長が尋ねた。


「はい。皆さんはご存知無いかもしれませんが、戦女神ヴァルキューレの筆頭であるブリュンヒルデ様はとても性急で勇ましく、かつ優しい女神様です。彼女は、その性格そのままに、人々を成長させることを最優先とした過酷な支援ルートを作られたのです。未だにクリアした者はいませんし、この一千年の間、トライアルに挑戦するものすら皆無となっていました。しかし、ブリュンヒルデ様は、せっかく作られたこのルートに強く心残りがあり、一人でもクリアされる事を心から願っていたのです。その為なら多少の助力もしようとずっと仰っておられました。たがら、誰かがトライアルに挑戦する時は間髪を入れず報告せよと厳しく言いつけられていたのです」


「そのように、常に女神様は、心を砕いてくださっておられるのですね」


 ゾングアルス大賢者がしみじみと言った。


「そもそも、あまりに過酷なので、冒険者が気の毒になり、トライアル参加資格を非常に高くされたのが、トライアルに参加する冒険者を激減させた原因だと伺っています。そのように優しいお方なのです」


 アデル・メイシー半神英雄エインヘリャルが語った。


「では、私は直ぐにアースガルズに赴きブリュンヒルデ様に知らせに参ります」


 そう言うと、アデル・メイシー半神英雄エインヘリャルは、転移魔法を発動して消えた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




【それから約一時間│後、アメリアを休ませている料亭にて】


 アメリアは、白い糸に包まれたまゆのようになっていた。その横ではメロが幾つもの空にした食器を並べてまだ食事中だ。


 そこに翔がギルドから戻って入って来た。


「それで?」


 翔が部屋の有様を一目見るなり尋ねた。


「翔。アメリアがさなぎに戻っちゃった」


 メロが訳の分からない事を言った。


────アリス。この状況の理由が分かるか?


《申し訳ありません。理由は分かりません。見たところ成虫になる前の蝶々のようですね。アメリアの羽の形状から想像すると、メロさんの言うようにサナギであるのかもしれません》


────放っておいて大丈夫か?


《生命反応などは異常がありません》


「メロ。よくこんな状況でこんなに食べられたな」


 翔は、アメリアのまゆの横に座るとメロを睨みつけた。


「アメリア、好きでなってるんじゃないの?」


 メロが聞いた。


────確かに、繭になりたかったんだろうな。


 翔は自分の考えをグッと飲み込んで言った。


「分からん」


 翔は、繭まで近付くと、そっと繭を撫でてみた。絹のような肌触りだ。


「どうやって体中を糸で巻いたんだ?」


「分からない」


 メロは心ここにあらずと、食事に夢中だ。


「それよりもお前、あれからずっと食べ続けているのか?」


 翔は、そう言いながらメロの方に向いて、メロが食べている料理を眺め回した。


「だって美味しかったんだもん」


 メロは、ペロリと舌を出しながら言った。


 見た目は可愛いがやる事は傍若無人だ。


「本当に、美味しそうだな」


 翔の後からいきなりアメリアの声が聞こえた。


 翔は、その声に驚いて振り向くと、そこには、アメリアが普通に座っていた。興味深そうにして、メロの食べっぷりを見ていた。


────あの繭はどこに行ったんだ?


 翔が不思議そうにアメリアを見た。アメリアは少し上気したような顔色でキラキラ輝いて美しさが増して見えた。


「アメリア。大丈夫か?」


 翔が尋ねると、何の事だと言わんばかりの顔でアメリアは不思議そうな顔で翔を見返した。


「少し横になったら随分楽になった。前よりもずっと調子が良いくらいだ」


 アメリアは、伸びをして見せた。豊満な肢体が魅力的だ。


 それを聞いたメロが、ドヤ顔で翔を睨みつけてきた。何でもなかったでしょうと言いたいのだ。


 何でも無いどころか、翔達は知らなかったがアメリアのステータスは三百以上も上昇していた。三百と言えばレベルが六つは上がった事になるが、誰も気付いていなかった。


 翔は、皆を見回して言った。


「アメリアが休んでいるうちに冒険者ギルドに行ってきたぞ。『レベルアップ・トライアル・ルート』のクエスト登録はなかなか通してくれず苦労した。ちなみに、お前らに相談する暇がなく申し訳無かったが、パーティー名の登録をした。メロが押していた“賢人会セイジボード”で登録したが良いか?」


 翔が問いただしたが二人に異存はなかった。


「賢人会とはまた凄い名前を思いついたな」


 アメリアが言った。


「いやいや。メロがイレーネに教えてたんだ。メロ。お前にしては堅苦しい名前だな」


「何を言う。このユグドラシルでは賢人とは、ラグナロクを救済する救世主の事だ。賢人会ならその集まりみたいな意味だろう」


 アメリアが教えた。


「そうなのか。そんな意味があったのかメロ」


「違う」首を横に振るメロ。「美味しい鳥。ソーセージのような味がする。私の大好物。ラグナロクでも、半神英雄エインヘリャルを率いて戦う」


 何を言ってるか分からない。


「メロ。お前の言っているのはセージバードの事だろう。セイジボードとは、読みが違うぞ」


 アメリアが突っ込んだ。


 翔は頭を抱えた。翔は、そもそも自分達のパーティーにそんな大層な名前をつける気は無かったのだ。


 しかしソーセージバードと賢人会セイジボードを取り違えるとはメロらしい。


 まぁ、パーティー名は、気に入らなかったら変えたらいい。それよりもメロとアメリアに、覚悟を確認する方が大事だと翔は思った。


 それほど、次のクエストは困難なクエストのようだ。


「お前達、聞いて驚くなよ。『レベルアップ・トライアル・ルート』は、最初水晶迷宮とか言う百層もある恐ろしい迷宮を合計三百回も繰り返し踏破しなければならない。復活魔法がかけられているが何度も死ぬだろうな。次に金剛迷宮という迷宮を同じ回数上下しなければならない。しかもその迷宮は五百階層もあるそうだ。何度も何度も、嫌と言うほど死ぬだろうな」


 翔は、驚かせるつもりは無いが一応言説明した。もしここで怖気付くようではパーティーは解散だ。


「メロは、復活魔法が得意。何度も死んだもん。たがら、復活都市にいたんだよ」


 何でもなさそうにメロが言った。


「私も、バカ貴族に何度と殺された。復活するなら大丈夫だ」


 アメリアも同じように言った。


────こいつらは、ぼんやりしているように見えて凄い奴らなのかもな。


 翔は改めて娘達を見た。


《本当です》


 珍しくアリスも驚いているようだ。


────ただ、鈍感なだけかもな。


 そう翔は結論付けた。


「明日から、死のレベルアップトライアルだ!」


 翔が宣言するように言った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【アメリアの脱皮後の成長の様子】

○アメリア

 レベル11

 戦闘レベル18相当【6UP】

 魔法レベル19相当【6UP】

 全体のレベル19相当


015 了

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