015ー2 いざ! 始まりの街へ!
2019年9月6日 15話があまりにも長いので八話に分割しました。
牙豚鬼を倒した、翔達は、集まった。
「良い感じじゃないかアメリア。白魔法を上手く使えていたよ」
翔は、アメリアの白魔法の『破魔光』を褒めた。
「ああ。なかなか使い勝手が良いな」
アメリアも新しい魔法を使う事が出来て嬉しそうだ。
「アメリア。凄い」
メロも手放しで褒めていた。
「メロ。お前のファアーボールも、あの気違いゴブリングレートの時とは、格段に強力になっていたぞ」
翔は、メロも褒めた。メロは、なかなか筋がいい。天性の素質が有るのだろう。
「本当だ。あれは、爆発の魔法と言ってもいい程の威力だったぞ」
アメリアもメロを褒めた。
アメリアは、実際メロの魔法の威力に驚きを持っていた。
メロは、翔の教えを守り暇があれば効率的な術式の展開を練習していたが、その効果が現れていたのだ。
今のファアーボールは、MPの消費が3ほどだったろう。燃費の悪いアメ車みたいな魔法の使い方が随分改善されていた。
しかし、メロは嬉しそうにしても、まだまだ納得していなかった。翔の芸術的な魔法を見て目標が上がってしまったからだ。
「メロ。あまり一つの魔法に拘り過ぎるのも効率が悪いと思う。今度は『爆発』を教えてやろう」
「本当? じゃあ。ぶっ放すから矯正して」
「待て待て待て。俺が教える本物の『爆発』は、お前がゴブリン本部を攻撃していた『瀑布』よりもずっと派手な魔法なんだ。誰も来なさそうな方向に放てよ」
「分かった。やってみる。.......我が名はメロ。偉大なる創造神エロヒムよ。我は求め訴えり。偉大なる御力と悪魔の王たる、バエル、ピュルサン、ビレト、ペイモン、ベリアル、アスモデウス、ザパンの名において命ずる。顕現せよ。『爆発』!」
早速、メロは、呪文を唱えて爆発をぶっ放した。
翔は、メロの術式の不完全な部分に手を加えていった。
「その術式では、ユグドラシルからの魔力とお前の魔力が噛み合わんだろう。ここは、こうやるんだ……」
そもそも、メロもアメリアと同様に黒魔法派ではない。彼女もユグドラシル上部の枝や葉か幹から白魔法系の魔力を得るタイプだ。黒魔法の魔力の源泉であるユグドラシルの根元から出ている黒魔法系のエネルギーを扱うのは得意ではないのだ。
しかし、メロは黒魔法系と最も相性の良い魔術師職を長年やっていたことも有って、アメリアよりも上手に世界樹の根っ子から黒魔法の力を吸い上げることができるようだった。
ただ、どうしても自分の得意な取りやすい世界樹の上部からの白魔法系の力を吸い上げて二つを混ぜてしまう悪い癖があった。
翔は、メロのような感覚派の魔術師に、できるけ分かりやすく説明してやった。
感覚で吸い上げる事ができる白魔法の魔力をメロの魔力と説明し、黒魔法の源泉を別の物と意識させ、黒魔法の力は、意識して吸い上げないと出てこないのだと意識付けしてみた。
これで、メロの頭の中でイメージして区別させ、これまでのようにアメ車の燃料の垂れ流し状態にならないように、上手く制御させる癖を付けさせてみたのである。
「分かった、こうだね」
メロは、早くも合点が行ったようで嬉嬉として頷いていた。
その現れは、次の『爆発』からだった。
派手な詠唱は止め、翔の組み上げた術式を真似て見事に魔法を構築して見せたのである。
「爆発!」
遥か遠くで巨大な爆発音が響き渡った。
「ほう。お前達は本当に優秀だな。一度で真似ができるとは」
翔は、今度ばかりはつくづく感心して言った。
「ちなみに、メロ。今のでMPはいくらぐらい消費した?」
「MP13」
メロは、無感情に答えた。
「お前の術式は……」翔はメロの術式をさらに添削してやる。「ここを……すれば、MPの消費がずっと抑えられるぞ」
翔は実際に魔法の術式を構築し、魔法陣を表しつつ、できるだけ丁寧に詳細を教えたのだった。
珍しくメロも口答えせずに、真面目に聞いていた。
「翔。なぜ使えもしない、高度な魔術に、それほど詳しいのだ?」
メロは、不思議になって改めて尋ねた。
「だから、俺は天才魔術師だったと言っただろうが」
「しかし、超イケメンだったとかも、一緒に言うから信じられなくなる」
「だから、天使レリエルの呪いだと説明しているだろうが」
「翔がイケメンのはずがない。それに天使が呪いなんてありえない」
メロがにべもなく翔のイケメン説を否定した。
「爆発如き、俺でも使えるさ。俺が見本で本物の魔術師の爆発を見せてやるから、真の俺の姿を想像でもしてみるがいい」
翔は、そう言うと、一瞬でバーストの術式を構築し発動してみせた。
翔の突き出した両手から、光球が物凄いスピードで飛び出したかと思うと、遥かな彼方に飛んで行った。
光球は、一瞬、消えたかと思うと、次の瞬間、見渡す限りの空が閃光で真っ白になった。
直後に、大地を揺るがすような轟音を鳴り響かせて、数度に渡って衝撃波が全身を強く打った。凄まじ爆発だった。
メロの爆発の十倍の爆発力はある。
メロもアメリアも思わず、手で頭を覆ってしゃがみこんでしまっていた。
翔は、平然と立ったまま、ドヤ顔でメロ達を見下ろし。
「消費MPは、たったの3だぞ」
と勝ち誇った様に言った。
「翔。最初からそうやって見せてくれたら分かりやすい」
メロが頰っぺたを膨らませて抗議した。
ところが、メロは、直ぐに、翔の術式を真似て『爆発』を発動した。
ドドドーン!!!
翔と同じぐらいの爆発が発生した。
その爆発を見て慌てて翔は言った。
「おい。メロ。俺が天才魔術師だったことの証明の方はどうなるんだ? あの爆発を見て何とも思わんのか?」
「メロでもできる。メロが天才」
「お前が天才なのは誰も否定せんぞ。しかし俺が天才だと言うことはどこに行くんだ? それに爆発如き小魔法ができたぐらいで大げさに言うな」
翔は、少し呆れながら言った。
「MP無しの癖に。天才はメロ」
二人の子供の様な口喧嘩に呆れて見とれているのはアメリアだった。
────こいつらは、上級魔法の爆発をバンバン練習でぶっ放して、この辺の地形が変わってしまうぞ。しかもあの爆発力は何だ? あれはもう超上級魔法、大爆発じゃないか!
翔達の旅は、大体このような感じで騒がしく楽しく、時に魔物を退治しながら続けられていたのだった。そして、もう直ぐ『始まりの街』だ。
メロもアメリアも文句も言わず、よく歩いた。ただメロは疲れると翔にぶら下がるようにして、負んぶの請求をするのだ。
翔は、道が捗らないので、仕方なくメロの言いなりになって背負ってやるのだった。
今もメロは、翔の背中で、お腹がすいたとグダグダ文句を言っていた。
「背中で暴れるな。危ないぞ」
翔は、メロを叱り付けた。
強化された翔の体力で、小柄なメロを背負って歩いても全く汗も出ない。どちらかと言うと華奢な翔は、前世では、味わった事がない体力に驚いていた。
「お腹すいた。お腹すいた。お腹すいた。お腹……」
メロは、背中の上で、子供のように喚きながら足をバタバタさせ始めた。
「もう直ぐ『始まりの街』だ。街に入ったら食事をする、それまで我慢しろと言うのに分からん奴だな」
翔はウンザリしたように言った。
「お腹すいた。お腹すいた。お腹すいた……」
メロの我儘は、どんどん激しくなった。
「分かった。分かった。昼飯にしよう」
翔は、ついに諦めて、そう宣言した。
「ご飯。ご飯!」
メロが喜んで、別の形でさらに暴れ始めた。
「こら! 静かにせんと放り出すぞ」
ついに、翔が切れて叫んだ。




