015ー1 牙豚鬼(デンデオーク)
「翔。私に白魔法を教えてくれ」
突然、アメリアが意を決したような真面目な顔で言った。彼女は魔法剣士だったから黒魔法系の魔法は多く知っているが、白魔法はまだ数えるほどしか使えないのだ。
魔法を使えるようになるには、いくつかの方法がある。一番ポピュラーなのは、魔術職に就き、そのままレベルを上げる方法だ。そうすれば神々の恩恵で自然に使えるようになる。
しかし、神々の恩恵だけでは基本的な魔法しか使えないのも事実だ。
それゆえに、高価な魔法書を購入して修得する者や、誰かの弟子になって魔法を教えてもらったり、職業ギルドで魔法の修得をするのが普通だ。
メロは、育ての親のカロンが熟練の魔女だったため、さまざまな魔法を使うことができる。もちろん翔に言わせれば児戯に等しい下手くそな魔法だが、ユグドラシル世界の基準では、メロは高度な魔法を修得している魔術師に入る。
それに比してアメリアは、至高者の宮殿で魔術師から黒魔法を少し習っただけだった。
正式に習っていたので翔からも、なかなかの腕前だと褒めてもらっている。
至高者の職業になってからは、黒魔法よりも白魔法に適性があることが自然に分かるようになったため、改めて習いたいと思ったのだ。
「良いが、俺のはユグドラシルとは少し違う魔法になるかもしれんぞ」
翔が答えた。
「ああ。それでいい。頼む」
「分かった。それじゃ、ユグドラシルの初心者から中級者ぐらいまでの魔法を俺なりに解釈して教えてやる。まず、魔法にはナマというエネルギーの受容体がある……」
翔はアメリアに白魔法の講義を始めた。
☆
翔が意外なほど教えるのが上手いことに、アメリアは驚いていた。
「翔。前々から思っていたが、お前は教え方が上手い。それで飯が食えるぞ。たった一日で五つも白魔法を覚えられるとは思わなかった。翔の使う近代魔法とやらの発動要件はなかなか俊逸だな。発動時間が何十分の一にも短縮できるような気がする。それに消費MPの話は参考になった。それを気にかけて今後、魔法の術式のスリム化に励むよ」
「ああ。アメリアはなかなか筋が良い。ん?……アメリア、メロ。どうやらお客さんのようだぞ」
翔は話の途中で、魔物の騒がしい鳴き声が聞こえたので、そちらの方を見た。
魔物達が雑木林から街道に出てきていた。
翔は、街道に現れた魔物のレベルなどを確認した。
「レベル11。牙豚鬼。体は小さいが、その分素早い。牙に注意しろ」
翔はそう言いながら、マジックバックからミスリルとアダマンタイトの合金でできた六角棒『神の手』を出した。もちろんイングベルトから貰った本物ではない。本物は“矢羽”のグアリテーロに進呈してしまったので手元には無い。
そこで翔は、この六角棒を『金棒』と呼んでいた。翔が創造魔法で創ったイミテーションだ。
見るとアメリアも、翔が作り直してやった魔法の剣をマジックバックから取り出した。
アメリアの出した魔法の剣は、グアリテーロに持って行かれた剣に比べ性能も見た目もかなり劣った。翔がわざとそのようにしたのだ。
周りに誰もいないことを確認して、翔は付与魔法と創造魔法を使い、アメリアの魔法の剣の性能を強化してやった。
使う前だけ性能を上げ、使い終わったら性能を落とすとともにマジックバックにしまうようにさせたのだ。そうすれば目立たないだろうとの配慮だ。
もちろん、人目がある時は魔法強化もしない。翔も人前では、ミスリルとアダマンタイトの合金ではなく、チタン合金の六角棒を取り出すことにしていた。
メロのローブも同様に、少しランクを下げたローブにしていた。翔はそのローブに防御と魔力強化の付与魔法をかけてやった。
とっさに翔はそれだけして、牙豚鬼達の前に立った。
牙豚鬼は全部で七匹だった。牙が大きく口からはみ出た、見るからに醜い魔物だった。大きさは翔と同じほどだ。頭に小さい角が二つ付いていた。肌色は人よりもかなり赤い。
────赤鬼君だな。
翔は魔物に心の中であだ名をつけた。
素早さのステータスが一番高いアメリアが先頭に立ち、白魔法の術式を構築し始めた。
「破魔光!」
アメリアが覚えたばかりの初級白魔法『破魔光(セイクリ




