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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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014ー2 レベルアップ・トライアル・ルート

【修正履歴】


2019年9月7日


○分りにくい表現を訂正しました。


○少し加筆しました。


○主人公の年齢17歳を明記しました。


○第14話を二分割しました。


○主人公等の思考を表す表記の方法を以下のように変更しました。



(主人公等の思考)


    ↓


────主人公等の思考。

「ちょっと待っててくれ」


 翔はそう言うと会話を中断した。少し思いついたことがあったので、アリスと話そうと目を閉じたのである。

 アメリアは、またまた瞑想に入ってしまった翔の顔を、不審そうにじっと見つめた。


────また悪い癖が出た。何か思案したいのだろう。


 アメリアはそう考えて、翔に話を合わせることにした。


「何をアリスに聞くつもりだ?」

「ああ。魔界のヒエラルキーをね」


 翔は軽く答えた。


────アリス、ウコバクとバルバルスのことをもう少し詳しく教えてくれ。アメリアの仇なのに、何も分かっていないんだ。


《はい、翔様。ウコバクは魔界の皇帝ベルゼブブの配下であり、ベルゼブブ帝国の外交官です。外見は小悪魔のような親しみやすさを持ち、他種族との交流に長けた知名度の高い悪魔です。諸侯としての序列を持つほどではありませんが、中堅クラスの貴族であり、階級は従男爵バロネット。レベルの情報はありませんが、推測では120〜200といったところでしょう。アメリアの話ではエルフたちを魔神復活の生贄にしようと画策していたとのことですが、それはベルゼブブ皇帝に捧げるという意味かと思われます》


《次にバルバルスです。第五位階の力天使ヴァーチュースから堕天して悪魔となった有力諸侯の一人です。階級は大公爵。三十の軍団を率いる魔界の公爵の中でも、序列八位という極めて高い諸侯序列を持つ大貴族です。レベルはレリエル様より遥かに上で、バルバルスはほとんど魔王と同義の大悪魔と言えます。レベルは500を超えると思われます》


(何だと? 500以上……? ウコバクですら俺たちからすれば恐ろしいレベルなのに、バルバルスは天文学的な強さじゃないか。しかしバルバルスも元は天使だったんだよな。天使ってそこまで強くなれるのか? レリエルも放っておいたらそんなレベルまで上がるのか?)


《レリエル様もまだお若い天使ですので、今よりもっと強くなられても不思議ではありません》


────俺は本当に、いつかレリエルに追いつけるのか?


《翔様なら、必ず追い抜かれることと確信しています》


────考えるのも嫌になるほど、先の長い話だなぁ……。


 翔は頭を抱えたい気分だった。アメリアの希望を叶えるとなると、もはや魔王討伐レベルの話になる。


────バルバルスの持っている序列や、魔界の階級についてもう少し詳しく教えてくれ。


《はい、翔様。魔界は弱肉強食の戦争が絶えない世界です。勢力図は常に変化しています》

《序列の最高峰はルシファー、あるいは魔界の皇帝ベルゼブブでしょうか。アスタロト魔王も最有力の一角です。彼らに匹敵するような『魔王』を冠する有力な大悪魔は、他にも六人存在します》


────王級以上の悪魔が九人もいるのか? そんなにいたら飽和状態にならないか?


《魔界は広大です。大ユグドラシルを支える根っこの大部分を占める広大な世界なのです。実際、魔界には魔王に匹敵するほど強力な大悪魔が数え切れないほど存在します》

《彼らは魔界の爵位を有する諸侯として、無数の大軍団を擁し大きな勢力を持っています。諸侯は軍団の規模、領土、過去の戦歴から序列が付けられており、バルバルスはその序列の第八位という高位に位置しています。この序列は全部で三百位ほどまでありますが、序列外の悪魔にも有力な貴族や、自称大総統、大統領などの無位無官の大悪魔が乱立し、戦争に明け暮れています》

《しかも『蝕』が起これば、これらの序列を大きく飛び越えるような、新たな有力魔王が誕生するかもしれません》


────また『蝕』か。


《はい。蝕はユグドラシルにとって非常に重要なキーワードです。なぜなら無数にある予言のほとんどで、蝕は終末戦争『ラグナロク』の引き金になるとされているからです》


────蝕によって魔王が誕生すると言っていたよな。でも、すでに九人も魔王がいるなら、ただの十人目になるだけじゃないのか?


《仰る通り、有史以来、蝕は数え切れないほど起こりましたが、ラグナロクは起こりませんでした。また実際の蝕には、大規模なものから小規模なものまで様々な形態があります。小規模な蝕では、魔界の貴族階級程度の魔族が誕生しただけの取るに足りない事件だったこともあります。しかし、大規模な蝕によって強力な魔王が誕生しているのも事実です》

《予言では、蝕が引き金となって魔界に大戦争が起こり、その大戦争が原因で世界が滅びると、様々な神々や巫女たちによって伝えられています》


────恐ろしい予言だな。世界が滅びるなら魔界の住人も困るんじゃないか?


《そうです。さすがに魔界でも世界の破滅を望む者は稀です。そのため、蝕には全世界で対抗することが暗黙の了解となっています。つまり、誕生した魔王は速やかに退治されるのが慣わしなのです》


────蝕をどう対処するかより、魔界が争っているうちに攻め滅ぼせばいいんじゃないか?


《そもそも、魔界を平定しても魔界以外の者には何のメリットもありません。魔界は人が住むのに適さない土地です。さらに、予言が必ず当たるとも限りません。何より魔界の悪魔たちは非常に強力です。以上の理由から、本気で魔界に戦争を仕掛ける者はいません》


────アリス。どうもユグドラシルは『神々の黄昏ラグナロク』というか、神様の影が薄い気がするんだが。


《いえ、そうとは言い切れませんが、レリエル様に見られるように、神々が本来の聖職を天使に丸投げするのが現在の風潮です。その結果、翔様が経験されたような様々な歪みが生じています》


────ラグナロクは、そんな世界への審判とでも言うのか?


《神々の中にはそのように考えて、世界を変えようと本気で願う方もおられます。オーディン様は人間、亜人、精霊などから優秀な魂を召し上げ、ヴァルハラに集めて来るべきラグナロクで戦える戦士軍団を作られています。冒険者によるレベルアップシステムも、オーディン様の後押しで戦女神ヴァルキューレの方々が始めた事業です》


(なるほど。職業やレベルといった神々の恩恵があるのは不思議だと思っていたが、そんなカラクリがあったのか。要は神々が、魔王討伐からラグナロクの対応まで、すべてを俺たちに丸投げしたってことじゃないか)


《蝕はユグドラシルのあらゆる場所で何度も起こっています。ユグドラシルでは千年ごとに暦を分けて表しますが、現在は『青の暦』の四百八十二年です。この四百八十二年の間に、蝕は九度起きています。人間には頻繁とは思えませんが、悠久の時を生きる神々にとっては飽き飽きする事件なのです》


────やっぱり神様、黄昏たそがれてんじゃん。


 翔がツッコミを入れたが、アリスは神々の悪口に呼応しようとはしなかった。

 アリスの返答がなくなったので、翔は会話を切り上げて目を開けた。

 すると、すぐ目の前でメロとアメリアが、期待に目を輝かせてこちらを覗き込んでいた。


「なんだ? お前ら、何を期待してるんだ?」

「翔、何か新しい魔法とか見せてくれるの?」

 メロが尋ねる。

「随分長い瞑想だったな」

 アメリアが言った。

「ああ。ウコバクはレベル120〜200だそうだ。バルバルスに至っては魔王級に強いらしいぞ」


 翔はアリスから得た知識を披露した。


「だろうな」

 アメリアは何の疑いもなく頷いた。

「お前、魔王級に強くなるつもりなんだな?」

「当然だ」

 アメリアは迷うことなく言い切った。

「アメリア、かっこいい! メロも魔王級になる!」

 メロが無邪気に叫ぶ。


 翔は、呆れるのを通り越して二人の楽天主義に感動してしまった。


「お前らはそうやって簡単に言うけどさ……」

「考えるのはお前の役目だ。あれだけ長く瞑想していたんだ、良い考えが浮かんだのだろう?」

 アメリアが無茶な振りを投げてきた。

「ちょっと待ってくれ。もう少し考えさせてくれ」


 翔は慌ててアリスとの会話に戻った。


────アリス、どうしよう?


 結局、翔も丸投げだった。

 しかしアリスは嫌がる様子もなく答えた。


《『レベルアップ・トライアル・ルート』のクエストを受けてください》


────レベルアップ・トライアル・ルート? それは何だ?


《先ほども申しましたが、オーディン様の後ろ盾で戦女神ヴァルキューレの筆頭ブリュンヒルデ様が作られた、古い冒険者支援ルートです》


────聞いているだけだと難しくて分からないな。


《失礼しました。そもそもオーディン様がラグナロクに備え、聖兵を作るために英霊をヴァルハラ宮殿に集める事業を始められたのがきっかけです。英霊を集める役目はブリュンヒルデ様をはじめとする戦女神たちが担っています。ところが、彼女たちはあまりにも英霊が少ないことに悲嘆し、ユグドラシルのすべての善なる住人のレベルアップを推し進める事業を企画したのです》

《この事業には戦女神のほか、運命の女神ノルンたちも参加しました。人々のレベルを効率的に上げ、英霊に育てようと様々なシステムが導入されました。その中の一つ、ブリュンヒルデ様が初心者向けに設定されたのが『レベルアップ・トライアル・ルート』です。古代に作られたものですが今でも機能しており、初心者を確実に真の勇者へと導いてくれる優れたルートです》


────勇者? なぜか嫌な響きだな。しかし、なぜそれがクエストになっているんだ?


《古いクエストですから、今では知る者も少ないでしょう。しかし神々が支援して作られたルートですので、レベルアップに適した設定に加え、各ステージの終わりには特典が設けられている、非常にお得な内容となっています》


────どうしてそれほど素晴らしいクエストが忘れ去られたんだ?


《はい。ブリュンヒルデ様は、大変男勝りな女神様ですので……》


────待て待て、女神に男勝りなんてあるのか?


《はい。女神様ですが非常に負けず嫌いで男勝り、それでいてとてもお優しい方です》


────おいおい、それと廃れた理由が結びつかないんだが。


 翔は嫌な予感がして食い下がった。


《はい。ブリュンヒルデ様は、少々性急な性格の女神様なのです》


────だから?


《そのルートはあまりにも厳しい設定だったため、誰一人としてクエストをクリアできなかったのです。そこで、別の戦女神であるゲルヒルデ様やオルトリンデ様が、難易度を下げた支援ルートを多数作られました。現在ではそちらのルートを使うのが一般的になっています》


────おい、アリス。誰一人クリアできなかったほど厳しいクエストを、俺たち如きが踏破できると思うのか?


《翔様なら大丈夫です》


────お前、どうも俺を過大評価しすぎじゃないか?


《そんなことはありません。翔様ならきっと完遂されると信じています。それに『レベルアップ・トライアル・ルート』には、ブリュンヒルデ様の優しい心遣いが詰まった仕掛けがいくつもあります。クリアすれば、素晴らしい成長が期待できるでしょう》


 翔は疑わしそうに首をひねった。


────しかし、もし失敗したらどうする?


《安心してください。ブリュンヒルデ様のご加護により、命を落とすことは決してありません。ルート全域に復活呪文がかけられています》


────そんなオマケまであるのに誰も挑戦しなくなったってことは、相当エグいコースなんじゃないか?


《『レベルアップ・トライアル・ルート』は、仮にクリアできずともレベルの限界を大きく押し広げる素晴らしいシステムです。私を信じて、諦めずにトライしてください》


 翔は大きな不安を感じたが、アリスがここまで推薦するなら、これまでの信頼関係もあり素直に従うことにした。


────よし。そのクエストはどこの冒険者ギルドでも受けられるのか?


《いいえ。『レベルアップ・トライアル・ルート』のスタートは、冒険者ギルド発祥の地『始まりの街』でしか受けることができません》


────『始まりの街』?


《はい。戦女神たちが冒険者のスタート地点とした街です。他の戦女神たちが作ったルートの多くも、ここを起点に設定されています。そのため現在でも、あらゆる種族の冒険者が集う国際都市として発達した大都会です。場所はここから東に百二十キロほど行ったところにあります》


────お前が『始まりの街』に行くことを勧めた理由はよく分かった。確かに冒険者ならそこから始めるのが筋だな。とにかく行ってみるよ。ありがとう、アリス。


 翔が礼を言って目を開けると、案の定、メロとアメリアの期待に満ちた瞳が目の前にあった。


「メロ。お前はなんで復活都市にいたんだ? 『始まりの街』になぜ行かなかった?」

 翔は、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。


「『始まりの街』に行くつもりだった。道に迷って、辿り着いたのが復活都市」

 メロはなぜかドヤ顔で説明した。なんだか彼女らしい。


「それより翔、何かいい案を思いついたのだろう?」

 アメリアが期待を込めて尋ねた。


「ああ。だが、お前ら覚悟しろよ。凄く難しいクエストを用意してやる。とりあえず『始まりの街』へ出発だ」

 翔は宣言するように言った。


「やった!」

 メロが子供のようにはしゃぐ。

「やっと『始まりの街』で冒険が始められる!」



【ヘニキスの街から宿場町までのレベル上昇】


○翔:レベル7【1アップ】

○アメリア:レベル11【1アップ】

○メロ:レベル11【1アップ】


【魔法能力をレベルで評価したもの】

○翔:レベル10【1アップ】

○アメリア:レベル14【2アップ】

○メロ:レベル20【1アップ】


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