012ー6 旅の始まり
2019年8月25日文章を分割しました。
【旅の始まり】
店の皆に大変感謝されて翔達は大金を貰い入った時よりもMPが増えた感じで武具屋を出てきた。
翔達が街道に出た頃には日は中天に差し掛かる時刻になっていた。
普通、旅は日の出とともに出発するのが基本なのに非常に遅い出発と言えるだろう。
しかし、街道には旅人が溢れていた。この分では魔物も出ないだろう。旅人の多くは商人や荷物を運ぶ荷役の馬車などだ。
翔達は、今日は隣町のヘニキスまで行くと決めている。アリスによると約30キロ余りの行程だ。
翔は、最初から普通のスピードで進めるとは考えていなかった。何しろ問題児のメロとアメリアを引き連れているからだ。翔自身だって、計画通りきっちり歩けるようなタイプではない。
実際に街道に出てすぐに想像した通り、メロは深くも考えず思った通りのことを直ぐに行動にしてしまうので、危なかしい事この上なかった。
アメリアも翔やメロと合わせて歩こうともしないので、たった三人なのに随分バラバラになってしまう。
そんな二人に合わせて歩くのも面倒なので翔も、ぼんやりと、適当に歩いて行く事にした。
アメリアは、どこかのスケベそうな商人とおしゃべりしながら歩いている。
メロは、荷物を引く馬みたいな可愛い動物に付いて先に行ってしまった。
翔は、そんな事に全く無頓着だ。同じ道を歩いているんだから大丈夫だろうと、決めてかかっているのだ。
「こんにちは」
声の方を見るとなかなか可愛い女の子が翔の横にスッと近づいてきて言った。
「お前は、クラン“矢羽”のメンバー、アンジェリーナ・ゾリだな。グアリテーロはまた何か用事なのか?」
翔が、横に立った女性を見ながら尋ねた。
「いいえ。皆さんが派手な格好になってるので、どうしてそんな格好になっているのかと思ったのよ」
アンジェリーナが答えた。
可愛く明るい良い子の雰囲気のアンジェリーナだが、何を言いたいのだろうかと翔は、不思議そうに彼女の顔を見た。
「あなた達は目立ち過ぎよ。もう少し大人しくすれば良いのに。そんなに目立って良いことがあるの?」
アンジェリーナは悪戯っぽく言った。
「俺たちは目立ってるのか?」
翔が不思議そうに尋ねた。
「ふふふ。その格好で目立って無いとでも? 気をつけてよね。期待のルーキーさん。じゃぁネ」
アンジェリーナは、悪戯っ子ぽい笑みを浮かべるて、それだけ言って去って行こうとした。
「ちょっと待ってくれ」
翔が呼び止めた。
アンジェリーナが振り向いた。
その目の前に彼女をモチーフした髪飾りを出す。
「今創った。忠告のお礼に持って行ってくれ」
アンジェリーナは不思議そうな顔になる。
「あんた。天然なの?」
「君はグアリテーロとは全然違うんだろ。君が何を言いたかっのか分からないが、グアリテーロの奴の手綱をしっかり握っててくれよ」
翔が言った。
「ふふふ、あんたは本当に天然ね。また会いましょう」
アンジェリーナはそう言うと、今度こそ歩き去ってしまった。
────変な奴だ。
翔は、そう思いながら、後ろを振り返った。キザ男のグアリテーロがいるんじゃ無いかと見たのだ。
しかしグアリテーロの姿は見当たらなかった。
次に前方を見たときにはアンジェリーナの姿も見えなくなっていた。
────良い子のお嬢さんみたいな女の子なのに忍者みたいなやつだ。
翔は呆れてそう思った。
街道では変わったことはそれだけだった。アメリアは、商人にお尻を触られたと言って怒って帰ってきた。
翔とアメリアは、そろそろヘニキスに着く。辺りは日が暮れてきた。メロは行方知れずだ。はぐれてしまったようだ。
「変な動物にでも、ついて行ってしまったのか。あいつも、もともとソロで冒険者をしていたような奴だから大丈夫だろう」
翔は、気にしない事にしていた。心配しても無駄だ。
アメリアも大して気にかけていないようだ。翔の言葉に返事もしなかった。メロのしたいようにしたらいいのだと考えているのだ。
もしメロのやりたいことを無理やり止めるようなことをすれば、逆にアメリアは許さなかったかもしれなかった。
もし、メロの自由意思で彼らから離れていくと言うなら仕方が無いことだ。誰も束縛せず、誰からも束縛されず。奴隷から解放されたアメリアは、今それを最も重視していた。
翔とアメリアが宿場町のヘニキスに入った時、メロが走り寄ってきた。
「翔の意地悪。私を置いて先に行っちゃった」
メロは、半べそをかいて翔の腕に掴まってきた。
「すまん。見失ったな」
先に行ってしまったのもはぐれたのも、メロの方なのだが、そんなことを言ってもメロには分からないだろう。
翔は謝ってやりながら、腕に掴まってブラ下がるメロの頭を逆の手でナデナデしてやった。
アメリアも近づいてきて、メロの頭を撫でた。
「よしよし」
アメリアもメロを慰めた。
その後どうしてここまで先に来たのか、理由を尋ねたところ、メロは馬車の馬のような生き物に興味があって付いて行ったところ、次第に眠くなったので馬車に乗せてもらって街まで寝てきたと言うことが分かった。どこまでも呑気なメロだった。
こうして無事? に三人は、宿場町ヘニキスに入ったのだった。
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【ヘニキスの宿場町を超えて】
ヘニキスは、復活都市の縮小版のような街だった。街は高い塀で囲まれ、その中に人が住んでいた。人口は、数千と言うところだろうか。小さな街だ。
その日は、いつものように三人で宿屋に泊まり、翌早朝に出発した。
「目的地は、ここから山道に入り半日だ。少し辛いが頑張ってくれ」
翔はメロを背負いながらアメリアに言った。
翔は、創造魔法で鎧に背負う機能をオーバーライトし付与魔法で動作の設定をした。それから鎧に自動的に山登りするように付与魔法をアメリアともどもかけてやった。
これで、鎧が勝手に山登りしてくれるだろう。
鎧が勝手に山を登っていくとは言え、楽なわけではない。特に完全に寝落ちしているメロを背負っての山登りは結構辛かった。
メロは山登りの途中で目を覚ました。翔の背中でしばらく楽しいんでいたがそろそろ飽きてきたようだ。
「翔。岩豚はなぜ山に、住んでるの?」
メロが尋ねた。
「豚鬼にしろ一角岩鬼にしろ、ゴブリンほど素早くない。身体は大きいが逆に見つかると人族にはいい餌食となる。その為人里離れた山奥に居を構える。山奥に隠れていると言う感じだな」
翔がアリスの解説をそのまま説明してやった。
「逃げるオークを退治するなんて、意味ない」
メロがそう指摘した。
「もっともだな。ちなみに一角岩鬼は、魔物としてはそこそこ危険な奴だ。普通はニダベリールなどの地中の世界なり、魔界なりで生活している奴なんだ。そんな奴がこれほど人里に近いところに巣を作ったのが間違いの元だ。魔物は本来人族を恐れて人里に近づかないものだそうだ、しかし、こいつらは経験不足なんだろうな」
翔が説明してやった。
互いにテリトリーは守らないと、滅ぼされるのだ。
「追い払えないの?」
「魔物は、自分たちが人族よりも上だと思えるほどに中途半端に強い上に頭がいい。なかなか逃げてくれないだろうな」
翔が、メロにも分かりやすいように説明した。
「ふーーん」
どうやら、メロは、興味が無くなったようだ。
「翔、昨日の夕飯美味しかったね。でもアメリアは残してた、疲れたのかな」
「アメリアもまだ仲間になって三日目だ。いろいろ考え事をしたかったのだろう」
「アメリア。昨夜、食事のとき考え事してたの?」
急な質問がアメリアに飛んだ。
「いいや。疲れて食欲が無かっただけだ。昨日は相当歩いたからな。メロは馬車で寝てきたからそれほど疲れなかったのだろう」
アメリアが説明してやった。
そんな話をしていたらオーク達生息地にたどり着いたようだった。




