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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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012ー4 付与魔法ってなんでも有りなの?

 そんな見物人たちから少し離れて立つ集団がいた。


 冒険者ギルドの副支部長ゲイリー・グレンジャーと、彼の秘書兼経理担当のマリナ・マクファーレン。そして、さらに二人の年配の男たちだ。


 一人は冒険者ギルドの支部長であり、復活都市の総督付き貴族でもあるレオン・ハルフォード辺境伯。もう一人は、ギルド理事の一人にして復活都市侯、マルク・ル・アセリン総督という、そうそうたるお歴々だった。


 彼らは忍びで来ていたが、冒険者なら誰もがその顔を知っている。そのため、周囲の者たちは遠慮して近づこうとせず、そこだけぽっかりと空間ができていた。


「あれが、ゲイリーの言っていたルーキーなのか?」

 尋ねたのは、支部長のレオン・ハルフォード辺境伯だった。


「はい、支部長。あの子たちが昨日報告した、ゴブリングレイトを退治した期待のルーキー君たちです。驚いたことに、彼らは一昨日三人揃ったばかりの新生パーティーなんですよ」

 答えたのは、秘書のマリナ・マクファーレンだ。


「彼らは見た感じより相当レベルが低いね。希少職のステータス補正値が高いのか……皆、妙に魔術のスキルが高いようだねぇ」

 そう指摘したのは、マルク・ル・アセリン総督だった。


「総督。あの少年の魔術は普通じゃありませんな。エルフの少女の治療魔術に対し、術式補正を行ったのを見たときは鳥肌が立ちましたよ。『創造師クリエイター』という職業もよくわからない。付与魔法も使っているようですし、少女の方も精霊魔法を操っている。何から何まで規格外の子たちだ」

 支部長のレオンが同意するように言った。その言葉の端々には、隠しきれない驚きが滲んでいた。


「辺境最強の支部長がそう言うのなら、彼らは本物以上なのだろうね。それに例のイングベルト老人もあの少年に肩入れしているようだ。あの国宝級の武器を、老人とは全く違う使い方をしていたしね……。何から何まで信じられないことばかりだ。しばらく彼らをトレースしてくれ。タイミング良く面白い見世物が拝見できたよ。ゲイリー騎士長、呼んでくれてありがとう」

 マルク総督が感慨深げに言った。


 彼らは、翔たちが気づかないうちに足早にその場を去った。去り際、他のブースを視察するふりをして、あくまで公務を装う注意深さも忘れなかった。

 しかし、あまりにも目立っていた翔たちの模擬戦を総督自らが観戦していた事実は、じきに格好の噂の種になるに違いなかった。


☆☆☆


 翔たちは冒険者ギルドを後にし、クエスト達成に向けた装備の補強をするため、行きつけの道具屋と武器屋へ向かうことにした。


 その道すがら、アメリアは「メロが特殊な趣味の持ち主であることは分かっていたが、翔までもが常人離れしたセンスの持ち主だ」と、つくづく感心させられていた。

 翔が創り出すものは、どれも息を呑むほどに美しかったからだ。


 例えば、先ほど創り上げた盾もそうだ。普通、盾には幾何学模様や紋章をあしらうものだが、翔は昨日創った剣と同様、アメリアをモチーフにしたレリーフを施したのだ。

 盾の表面は美しい鏡面仕上げになっており、その周囲を女神のようなローブを纏ったアメリアの姿が囲んでいる。仕上げを微妙に変えることで陰影を際立たせ、平らな面であるにもかかわらず、恐ろしく立体的な像が浮き出ているように見えた。


 かなり離れた場所からでも、その意匠はくっきりと見える。その美しさは言葉にできないほどだった。

 とにかくハイセンスで、洗練されている。モチーフであるアメリア自身の美しさもあるが、翔の芸術家としての才能は相当に高かった。


 メロですら、自分の裸身をモチーフにされた短剣のあまりの美しさに、「エッチだ」という批判すら忘れて黙り込んでしまうほどだ。それは翔の意外な才能であった。


「翔。お前も少しは防具を変えた方がいいんじゃないか?」

 アメリアが提案した。

「防具屋でも見てみるつもりだ。だが、まずは旅支度が先だな」

 クエストの対象であるユニオーガがいるのは、復活都市から徒歩で二日はかかる、辺境の中の辺境だ。入念な準備が必要だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【道具屋にて】


 道具屋では、雨風や寒さをしのぐための大きなテントを購入した。寝袋や毛布も大量に買い込み、その他の細々とした旅の必需品も揃えていく。かなりの出費になった。


「翔。たかだか二日の行程にしては、随分と買い込むな」

 アメリアが指摘すると、翔は淡々と答えた。

「ああ。そろそろ復活都市ともおさらばだ。ここでのレベル上げには、限界を感じているんだ」


 翔は、街の有力者たちが自分たちに注目していることまでは知らなかったが、「一箇所に留まり続けると目立ちすぎる」という懸念は常に頭の隅にあった。

 拠点を変えるべき時が来たと考えていたのだ。


 オーガ狩りは、本来なら腕試しのためのクエストだった。しかし、今日の模擬戦を経て、翔はもう旅立ちの時が来たと確信していた。

 総督たちが彼らに注目したまさにその日に、この決断を下す。それは翔の持つ絶妙な感覚ゆえと言えるだろう。


「翔、これ欲しい」

 メロがいつものようにおねだりをしてきたが、彼女が欲しがったのは意外な物だった。

 それは、簡易トイレである。

 アメリアも「ナイスだ」と内心思ったが、現実主義の翔は許さないだろうと予想していた。


「ああ、いいぞ。好きなだけ買っていい」

 意外にも、翔はあっさりと許可を出した。

 いつもなら無駄遣いを嗜めるはずの翔が、なぜか寛容だ。


「翔なら、『野糞でもしてろ』って突き放すと思ったんだがな」

 アメリアが突っ込むと、翔は苦笑しながら、周囲に不自然に思われない距離で彼女の耳元に顔を寄せた。

「アメリア。可愛い顔で『野糞』はやめておけ。……それとな、俺は魔術で金貨が創り放題なんだよ」


 翔の驚愕の告白。アメリアは薄々想像はしていたものの、はっきりと言葉にされるとその衝撃は大きかった。

「翔……じゃあ、これからは何でも買っていいのか?」

 アメリアも翔の耳元で聞き返す。

 そんな二人の内緒話を見咎めたメロが、ぷっくりと頬を膨らませて二人の間に割り込んだ。


「だめ! メロにも聞かせて!」

 メロが地団駄を踏んで叫ぶので、アメリアが彼女の耳元でそっと事情を話した。

「ええーっ? つまんない!」

 するとメロは、大きなため息をついて不満げな顔をした。


「何がつまらないんだ?」

 翔が尋ねると、メロは天を仰いで叫んだ。

「だって、翔におねだりして困らせるのがメロの趣味なのに! なけなしのお金で買ってもらえるから嬉しいんだよぉ」

「メロ……お前は頭が良いのか悪いのか、それとも変人なのか、本当によく分からん奴だな」

 翔はつくづく感心したように言った。


「ひどい! 翔がめちゃくちゃなこと言う!」

 プーッと頬を膨らませるメロ。

 そんなバカ話を終えて翔が振り返ると、そこには両手に溢れんばかりの荷物を抱えたアメリアが立っていた。


「……お前もか。金の心配はいらんと言ったが、俺のMPにも限界はあるんだぞ。無尽蔵に金ができるほど甘くはないんだ」

 流石の翔も、呆れたように忠告するのだった。


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