012ー4 付与魔法ってなんでも有りなの?
2019年8月25日文章を分割しました。
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そんな見物人達から少し離れて立つ集団がいた。
冒険者ギルドの副支部長ゲイリー・グレンジャーと彼の秘書兼経理担当のマリナ・マクファーレンの二人。そしてさらに二人の中年のおじさんだ。
中年のおじさんの一人は、冒険者ギルドの支部長で復活都市の総督付き貴族、レオン・ハルフォード辺境伯。もう一人は、冒険者ギルドの理事の一人にして、復活都市侯マルク・ル・アセリン総督と言うお歴々だった。
彼等は忍びで来ていたが、冒険者は皆、彼等が誰か知っていた。だから彼等の周りには遠慮して近づかなず、空間が出来ていたのだ。
「あれがゲイリーが言っていたルーキーなのか?」
尋ねたのは、冒険者ギルド支部長のレオン・ハルフォード辺境伯だった。
「支部長。あの子達が昨日報告した、ゴブリングレイトを退治した、期待のルーキー君達です。驚いたことに彼等は一昨日三人揃ったばかりの新生パーティーなんですよ」
答えたのは、副支部長秘書兼経理担当のマリナ・マクファーレンだ。
「彼等は見た感じより相当レベルが低いね。希少職のステータス補正値が高いのか。皆、妙に魔術のスキルが高いようだねぇ」
そう指摘したのは、マルク・ル・アセリン復活都市侯だった。
「復活都市候。あの少年の魔術は普通じゃありませんな。エルフの少女の治療魔術の術式補正をしたのを見たとき鳥肌が立ちましたよ。創造師と言う職業もよくわからない。付与魔法も使っているようだし。少女の方も精霊魔法を使っているようですな。何から何まで規格外の子達だ」
支部長レオン・ハルフォード辺境伯が意見を言った。言葉の端に驚きがハッキリ出ていた。
「辺境最強の支部長がそう言うのなら、彼等は本物以上なのだろうねぇ。それに例のイングベルト老人もあの少年に肩入れしているようだし。あの国宝級の武器を老人とは全然違う使い方をしていたねぇ。何から何まで信じられないことばかりだ。しばらく彼等をトレースしてくれ。タイミング良く面白い見世物が拝見できたよ。ゲイリー騎士長、呼んでくれてありがとう」
マルク・ル・アセリン復活都市候が感慨深げに言った。
彼らは、翔達が気付かない間に直ぐにその場を去った。去り際に別のブースの様子を見るなどして、ただの視察のように見せかけるなどの注意は払うことは忘れなかった。
しかし、あまりにも目立っていた翔達の模擬戦の様子を総督自らが見ていた事は噂のネタになる事は間違い無かった。
☆☆☆
翔達は、その後、冒険者ギルドを後にして、クエストの達成の為に、行きつけの道具屋と武器屋で装備の補強をすることにした。
その道すがら、アメリアは見るからにメロが特殊な趣味の持ち主であると思っていたが、翔までもが普通のセンスでは無い事に、つくづく感心されらるのだった。
翔の創る物は、どれも息を呑むほど綺麗だった。
例えば先程創ってくれた盾にしてもそうだ。普通、盾には模様や紋章をあしらうものだが、翔は昨日創った剣と同様、アメリアをモチーフにしたレリーフを付けたのだ。
盾の表面は美しい鏡面仕上げだが、盾の周囲を女神のようなローブを着たアメリアのレリーフが彫り込まれている。レリーフは表面の仕上げを微妙に変えて陰影を際立たせ、平らな表面にもかかわらず恐ろしく立体的に美しい像が浮き出ているように見えた。
かなり離れたところかでも盾の意匠がクッキリと見える。その美しさは言葉にできない。
とにかくハイセンスでとても綺麗だった。モチーフのアメリアが美しいと言うものあるが、翔のアーティストとしての才能は相当に高い。
メロですら、自身の裸身をモチーフにされた短剣のあまりの美しさに、エッチだとの批判を黙らせられていた。翔の意外な才能だった。
「翔。お前も少しは防具を変えた方がいいんじゃ無いか?」
アメリアが提案した。
「防具屋で見てみるつもりだ。しかし、先に旅支度だ」
クエストのユニオーガがいるのは、復活都市から徒歩で二日はかかる辺境の中の辺境にあるのだ。旅支度が必要だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【道具屋にて】
道具屋では大きなテントを買った。雨や寒さを凌ぐ為には必需品だ。寝袋。毛布なども大量に購入する。その他の旅の準備品なども買い込んだ。かなりの出費になってしまった。
「翔。高々二日の行程にしては買い込むな」
アメリアが指摘した。
「ああ。そろそろ復活都市ともおさらばだ。ここでのレベル上げには、限界を感じているんだ」
翔が説明した。
翔は、復活都市の偉いさん達が彼等に注目しているとは知らなかったが、ひとつ所にいると目立ってしまうと言うのも頭の隅にあった。
そろそろ、拠点を変えるべきだと考えたのである。
オーガ狩りは、腕試しのために受けたクエストだった。しかし腕試しをするまでもなく、今日の模擬戦で翔には旅立ちの時が来たと確信したのだ。
復活都市の領主が彼等に注目したその日なので、翔の絶妙な感覚と言わねばならないだろう。
「翔。これ欲しい」
メロは、いつものようにおねだりしてはばからなかった。しかし、メロが欲しがったのは意外な物だった。
メロが欲しがったのは簡易トイレだったのだ。
アメリアもナイスだと心で思ったが、しかし翔は許さないだろうとも思った。
「ああ。好きなだけ買っていいぞ」
意外な事に翔は反対する事無く許していた。
いつもなら無駄遣いするなと止める翔のはずがなぜか寛容だ。
「翔なら、野ぐそでもしていろと突き放すと思ったが」
アメリアが突っ込んだ。
「アメリア。可愛い顔で『野ぐそ』はやめておけ」
翔は、苦笑しながら忠告した。不自然にならない程度に、翔はアメリアの耳元に顔を近づけてから呟いていた。
「俺は魔術で金貨が創りたい放題なんだよ」
翔の驚きの告白だった。アメリアは薄々想像していたがその告白はあまりにも衝撃的だった。
「翔。これからは何でも買って良いか?」
アメリアも翔の耳元で聞き返す。
二人の内緒話を見咎めたメロがぷっくりと頬を膨らませて二人の間に入った。
「ダメ。メロにも聞かせて」
メロは、地団駄を踏んで叫んだ。
アメリアがメロの耳に口を付けて話した。
「ええ? つまんない!」
メロが大きなため息を付いて頬を膨らませた。
「何がつまらい?」
翔が聞き咎めた。
「だって、翔におねだりして困らせるのがメロの趣味。なけ無しのお金で買ってもらえるから嬉しい」
メロが天を仰いで叫んだ。
「メロ。お前は頭が良いのか悪いのか、頭がおかしいのか変人なのか全く分からん奴だな」
翔がつくづく感心して言った。
「何? 翔がメチャクチャ言う」
プーと頬を膨らませるメロだ。
メロとそんなバカ話しをしてから、翔が振り返ると、両手にたくさんの荷物を抱えたアメリアが立っていた。
「お前も。金の心配はいらんとは言え。俺のMPにも限界があるんだぞ。無尽蔵に金ができるほど甘くは無いぞ」
翔は、呆れて忠告したのだった。
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