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010ー4 割の良い仕事って知ってる? 4

2019年8月25日 文章を四分割しました。

 間も無く美しいキャリアウーマン風の女性を連れた偉そうなオヤジが入ってきた。


 翔が、彼らのレベルを表すタグを読むと以下の通りだった。


○オヤジのタグ

『ゲイリー・グレンジャー。魔法騎士長。42歳。レベル44』


○キャリアウーマンのタグ

『マリナ・マクファーレン。魔術騎士。31歳。レベル37』


 この二人のレベルは、あまり見かけない高さだった。


────アリス。こいつらはかなりレベルが高いな。


《人族で、このレベルになる者は、珍しいです。あるいは別の種族の血が混じっているのかもしれません》


────そうか。人族はそんなにレベルが上がらない種族なのか?


《レベル30までになれる冒険者は稀です》


────しかしこいつらの職業名が分からん。俺の世界では魔法と魔術は同じ様な意味だったが、こちらでは違いに意味があるのか?


《魔法は理論。魔術は実技です。職業名にそのどちらが使われているかでその人の目指すところに違いが見いだせるかもしれません》


「私は、ゲイリー・グレンジャー。当冒険者ギルド復活都市副支部長をしている」


「私は支部の監査役のマリナ・マクファーレンです」


 二人が名乗り握手する。握手はこの世界でも挨拶となっているのだとこの時、翔は、確信した。


 ゲイリー支部長が最初に話し始めた。


「早速だが。ゴブリン討伐。御苦労だったな。まさかあのような存在がいたとはな。当ギルドの調査不足だと認めざるを得ん。君たちが討伐してくれなかったら後数ヶ月で、この復活都市もゴブリンにひどい目にあわされていたかもしれん。今回の群れのボスは、かなり特殊なゴブリンだったようだね。

 マリナ。君から説明してやってくれ」


 話を振られたキャリアウーマン風の女性が頷いて説明を始めた。


「良く生還できたわね。ルーキーさん達。今回のクエストは、完全に、あなた達のようなルーキー向きでは無かったわね」


 そこでマリナは、話を止めて順番に翔達の顔を見た。


 何の考えもないメロがウンウン頷いているが翔もアメリアも黙って聞くだけだ。


 マリナは、そこで、軽く笑って見せた。


「冒険者ギルドからは、当初の設定をしていたクエストランクをランクFに上げました。あなた達では本当なら受けられないクエストだったし、あなた達のような冒険者に受けさせてはダメよね。それがギルドの責任だった。

 そんなわけで報奨金は、お詫びも合わせて25金貨に変更しました。

 あなた達が持ち帰ったボスの牙と爪を見せてもらったけど、牙はまだゴブリンナイトにもなってないのに爪はすでにゴブリンロードの特徴を持っていたわ。

 ゴブリンは頭が一番成長が遅いのね。だから成長の早いゴブリンは頭と体の成長度合いがかなり違うわけ。でも今回のゴブリンは異例中の異例だったわ。

 通常、ゴブリンナイトになってからゴブリンロードになるには個体差がかなりあって二十数年〜数十年かかるとされている。その間にコロニーがとても大きくなるのが普通ね。

 今度のゴブリンは、ゴブリンナイトよりも弱い個体とゴブリンロードの個体の特徴を同時に示しているわけなのね。これは数年でゴブリンナイトを飛び越してゴブリンロードになった事を示している。この成長速度で行けば数年後にはゴブリンロードを超してゴブリンジェネラルになる個体だったと私達は確信したわ。

 しかも、このゴブリンは、まだ本当に若い個体だった。こんな若い個体がこれ程早く成長したのを私は、初めて見るわ。しかも狂戦士バーサク化していたって言うし。そんなスキルを持っていたなんて、あまりにも特殊な個体だったようね。もしかしたら、ゴブリン達の戯言ざれごとと思われていたゴブリンキングの伝説が成就してしまうところをあなた達が呆気なく討伐しちゃったのかもね」


 ここでマリナは、また、ニッコリ笑って見せた。美しい笑いだった。


「こんな異例だらけのゴブリンを討伐したあなた達も、とても異例よね。一人はエルフ界の伝説的な至高者オプティマスだし、もう一人は魔術師ギルドの異端児メロさん。そして最後が正体不明の復活者さん。復活者さんは復活してからたった二十日でレベルゼロがレベル9になったそうね。復活障害でレベルゼロなんてのも異例よね〜。

 アメリアさんもたった半日でレベルアップしたんですってね本当。驚きを通り越して呆れるわ。

 ちなみにゴブリンはレベルを落とす魔法なんて持ってないはずなんだけど。どうしてレベルダウンなんてしちゃうのかしらね〜……」


 そこで、マリナはいったん言葉を濁し、翔とメロのレベルが落ちた理由を聞こうとしているようだ。


 交換トレード魔法のことは秘密にしろとメロとアメリアに言い聞かせているので三人とも黙っていた。マリナはクスリと笑って話を続けた。


「そんなあなた達も異例中の異例よ。私達はあなた達のことをとても期待しているわ。

 そこであなた達は、ギルドからお詫びとして特別にランクパーティーとしてFランクに登録させてもらうわ」


 会計担当のマリナ・マクラーレンはそう言って三人の反応を伺った。


────アリス。ランクパーティーって?


 マリナがあんまりドヤ顔で言ってくるので、翔は、アリスに尋ねる事にした。


《ギルドが認めたパーティーには、ランクが授けられます。冒険者の中ではランクのあるパーティーに所属するとランカーなどと呼ばれ、大変名誉なようです》


────成る程。お詫びに名誉をやろうってことか。ちなみにFって言うのはどれほど名誉なんだ?


《Gが最下位で一つ上の第9位ランクです》


────FならAから六番目だから第六位じゃないのか?


 翔は、指を折って数えながら尋ねた。


《Aの上にSランク、ダブルSがあり最高位がトリプルSです》


────成る程な。最下位ランカーみたいなもんだな。


《そうですね》


「ランカーに? 翔。凄い。やった!」


 メロは、大喜びだ。


 翔としては、メロが喜ぶなら別に否定する気も無い。


「くれるものは、有難く頂いておくよ」


 翔は、そう言って頭を下げた。その態度にマリナが驚きの表情を向けた。翔のような態度の男の子が優雅な仕草で、頭を下げるなんて言うのは、礼儀正し過ぎて奇異に映るのだ。


 そもそも、優雅に頭を下げる仕草は、ナイトが王に対して行う仕草だ。民衆には、縁のない行為なのだ。


 この男の子は、何者なのって顔になっているが、口では、別の事を言った。


「では、皆さんには、このカードを」


 マリナ・マクラーレンは、三枚のカードを出して、翔達に渡した。


 新しい冒険者カードだった。


 カードの縁が緑いろで右上にFランクと刻まれていた。


「ランカーカードがあれば、皆さんは、今後はサロンに出入りする事ができます。サロンにはランカーしか入れませんから、今までのようなルーキー目当ての嫌がらせは無くなるでしょう」


 マリナ・マクラーレンが美しい笑顔で言った。


「知ってたのか?」


 翔がイジメに合っている事を知っているのに驚いて尋ねた。


「ルーキー虐めは、恒例だな。俺も若い頃は虐めらられたもんだ」


 ゲイリー・グレンジャー副支部長が笑いながら言った。


「しかし、サロンではあからさまにそんな幼稚な事をするような奴はいないだろう」


「しかしダグ達もランクインしてるんだろう」


 翔は、疑問に思った事を尋ねた。ダグのレベルから考えるとランクインは当然だ。


「ダグ達は、君達と同じFランクだよ。しかし、俺は君達なら直ぐにFなんてランクは卒業してくれると予想してるがね。ダグ達は、Fランクになって、そろそろ七年になるな。彼等のくだらない行為には、私もとても大変失望しているんだ。彼等もそろそろ頭打ちになって、荒れているのだろうが、君らルーキーに手を出すなんて恥ずかしい事だ。ここ復活都市には、高ランクパーティーの出入りは少ないので、ダグ達も良い気になっているのかもしれん。しかし彼等が一番上ってわけでは無い。目ぼしいパーティーには、その辺は、良く言っておくから安心してサロンに出入りしてくれ」


 ゲイリー・グレンジャー副支部長がダグの代わりに謝るように頭を下げて言った。


 翔達は、報奨金を受け取って部屋を出てきた。


「良かったらサロンに、ご案内しましょうか? 中からでも行けますよ」


 案内の受付嬢がそう提案してきた。


 翔は一刻も早くギルドを出たかった。しかし。


「行きたい!」


 メロだ。


────まぁ、そう言うよな.......


 翔は肩をすくめて、諦めたように頭の中で呟いた。



☆☆☆



 サロンは、冒険者ギルドのエントランスホールよりも大きく綺麗だった。


 案内の受付嬢が施設の説明をしてくれた。


「おい。ルーキー君。ゴブリンロードをやっつけたらしいな。大したもんだ」


 そう言って、翔の前に立ったのは、まだ若い魔法騎士だった。


『グアリテーロ・デ・ミータ。24歳。魔法騎士。レベル28。ランクE“矢羽”』


 アリスがランクとパーティー名まで示してくれた。何かと気の利く女の子だ。


「ホープの君達は、今後はライバルだな。僕はグアリテーロ・デ・ミータだ。よろしくな」


 そう言って、その魔法騎士グアリテーロ・デ・ミータは、手を出してきた。


「俺は、ショー・マンダリンだ」


 翔は、人懐こい奴だと呆れながら手を握った。


 その瞬間、相手が、強い力で手を握ってきた。


 翔は、なるほどと納得した。グアリテーロとか言う男が翔を試してきたのだ。


 力比べだ。


「先輩。たかがレベル4の後輩を虐めないでくださいよ」


 翔は相手が強く握ってくる手を握り返しながら言った。


「いやいや。歓迎しているだけだよ」


 グアリテーロ・デ・ミータは、にこやかに笑いながら言って手を放した。


 次に、彼は、アメリアとメロにもそれぞれ挨拶した。彼は、キザな仕草で、手をとっ手の甲に口を付ける真似をする。


 キザな奴だと、翔は、呆れて見ていた。


「いやぁ。素晴らしい美しい女性方がサロンに入ってきてもらって、とても嬉しいね。ではメロさん。アメリアさん。今後ともよろしくね」


 そう言うと、グアリテーロ・デ・ミータは、スッと翔の耳元に口を付けてきた。


「翔君。なかなか良い趣味だね。それに、レベル4にしては、大した馬鹿力だね」


 グアリテーロ・デ・ミータは、そう呟き笑いながら去っていった。


 直ぐに、彼のところに四人の女性が近寄って来て周りを取り巻いた。見ていると必要以上に、ベタベタしているように見えた。


『セレナ・ベッティー。22歳。召喚魔法師。レベル18。ランクE“矢羽”』


『アリナ・バンフィ。20歳。女司祭シビラ。レベル17。ランクE“矢羽”』


『アルタ・ボタッツオ。19歳。トドナ僧。レベル19。ランクE“矢羽”』


『アンジェリーナ・ゾリ。17歳。聖騎士パラディン。レベル18。ランクE“矢羽”』


 女の子達は皆、相当可愛い。ダグ達よりもレベルが低いのにパーティーランクが高いのは、グアリテーロ・デ・ミータがパーティーをうまく動かしているからだろう。


 女の子ばかりなのにうまくパーティーを動かす、このグアリテーロ・デ・ミータと言う男を翔は、呆れて見送った。


 翔は、女の子と一緒にいる事を望んでメロやアメリア達二人を連れているわけではないが、可愛い女の子ばかりを四人も連れているグアリテーロ・デ・ミータは明らかに『可愛い』を基準に女の子ばかりを集めているのだろう。


 メロにしろ、アメリアにしろ無駄に可愛いのでこのグアリテーロ・デ・ミータが敵愾心を燃やして翔に宣戦布告しにきたということなのだろう。


「翔さん。早速ライバル出現ですね」


 案内役の受付嬢が楽しそうに言った。


「俺なんか、レベル28の大先輩になど、足元にも及ばんさ」


 翔が答えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【上級職に転職した補正の状況】

○翔、レベル4

○アメリア、レベル9

○メロ、レベル9

【魔法能力をレベルで評価したもの】

○翔、レベル7【1アップ】

○アメリア、レベル11【1アップ】

○メロ、レベル19【1アップ】

【クエスト完了獲得賞金】

○金貨25枚

【獲得素材等の売却収入】

○金貨8枚

【パーティーランク】

F【新】


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


10話 了

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