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4:メランポジウムの『ラージュ』とマツバボタンの『マーボー』

「うえ、うえぇぇぇえ!!」

「泣くな!泣くなって言ってんだろ!」



明るい黄色の花をしおしおと萎れさせビービーと泣く男の子の前で、顔を真っ赤にして自分も泣きそうに訴えるオレンジ色の花を咲かせる男の子。

緩い癖毛を泣くたびに揺らす彼はメランポジウムそっくりの花のラージュで、その前で怒鳴っているのはマツバボタンを興奮で満開にさせているマーボーだ。

涙で目を真っ赤にさせているラージュは元より、必死で歯を食いしばるマーボーも目が潤んでいる。

むしろマーボーの方が涙を堪えるのに必死で、顔がより赤いかもしれない。


何が原因で喧嘩をしたかしれないが、彼ら二人が喧嘩するなど珍しい。


生えてきた神様候補の中でもラージュの性格は飛びぬけて穏やかで、普段からおっとりと笑っていることが覆い。

ヒナとお揃いの格好をしたがる彼は、今日も色違いのTシャツとオーバーオールを着ている。

大人しい彼はいつだって元気よく遊びまわるみんなの後を追いかける末っ子気質で、外で遊ぶよりも本を読んでゆったりと過ごすことが多かった。


反してふるふると唇を震わせて涙を堪えるマーボーは、活発を絵に描いたような男の子だ。

いつだって元気一杯で、悪戯といえば彼とヒナ、そしてアールの手によりなされる。

五人の中で一番運動神経が良く、大人しくしているのが苦手な元気っ子で、喜怒哀楽もハッキリした性格だった。


一見するとラージュとマーボーは正反対の性格をしているが、意外と相性がいい。

大抵はヒナも含めて三人で遊んでいるが、二人でもアールとピースのように喧々囂々とやりあうことはない。


大人しい気質のラージュを、弟のように思っているらしいマーボーが手を引いて遊ぶ。

そんな関係が確立しているだけに、物珍しい光景に麻耶はうっかりと仲裁も忘れ見物してしまっている。




「マーボーの馬鹿!僕、マヤにあげようと思って作ったのにっ」

「俺だって、もっとよくしようとして手伝っただけじゃんか!」

「手伝って欲しいなんて僕言ってない!」

「でも、俺は手伝いたかったの!俺もマヤにあげたかったの!」

「だったら自分で作ればいいじゃない!僕、・・・折角、お花綺麗に編みこんで・・・っ、ひっ、う、・・・うえ」

「泣くなってば!ラージュの馬鹿!」

「馬鹿は、マーボーぉっ!返してよ!マヤのプレゼント、返して!」



嗚咽交じりの罵り合いに、なるほど、と麻耶は頷いた。

どうやらラージュが麻耶宛に花冠を作ろうとせっせと花を編んでいたところ、手伝おうとしたマーボーにより壊滅状態に陥ったらしい。

豪快な性格のマーボーのことだ。

繊細な作業をするラージュに良かれと思いしたところ、盛大に崩してしまったのだろう。

呆気なく想像できる光景に、腕を組み頷く。


状況を整理している麻耶を置いて、彼ら二人の喧嘩は継続していた。



「大体、『僕が』マヤにプレゼントするのに、どうしてマーボーが手伝うの?僕は、僕一人であげたいの!」

「どうして俺が手伝っちゃ駄目なんだよ!俺もマヤにプレゼントしたいんだ!」

「自分でやってよ!僕の邪魔しないで!」

「だって俺一人だと、出来ないだろ!頑張ったけど、全部駄目で、お前に返そうとやった分も、全部ぼろぼろで、だから、俺・・・」



ぐっと唇を噛んだマーボーの瞳から、ついに堪えきれなくなったらしい涙がぼたぼたと流れた。

その光景にラージュは瞳を丸くし、そしてマーボーが持つくしゃくしゃの花に視線を送る。

きっと怒りで見えてなかったのだろうが、始めからマーボーはいくつもの茎がくしゃくしゃに絡み合う冠もどきを持っていた。

泣き始めたマーボーにどうすればいいのかと視線をきょろきょろと彷徨わせ、結局どうすればいいのか判らなかったのか声を詰まらせてラージュも泣き出す。



「ごめんねぇ・・・一杯怒ってごめんねぇ」

「お、俺も、お前の壊して、ごめん・・・っ」



うっく、ひっくと涙を零して抱き合う二人に、麻耶は破顔した。

なんて可愛くて愛しい子供達だろう。

自我を通すだけでなく、悪いことは御免と謝れて一緒に涙を零すなんて。

しかもその要因は自分へのプレゼントだと知り、麻耶の心に温かいものがいっぱい溜まっていく。

ほこり、と優しい感情が生まれ、無性に彼らを愛しみたい。



「二人とも」

「・・・っ」

「マヤ」

「私、花冠が欲しいんだけど、作るの手伝ってくれる?三人で一緒に作ればきっと綺麗なのが出来ると思うんだ」



慌てて涙を隠す二人に、何も気付いていない顔で微笑む。

麻耶の提案を聞いた子供達は、俯かせた顔を慌ててあげると目をまん丸にして見上げてきた。



「一緒に?」

「俺たちで?」

「そう!三人で作ったら、きっと凄いのが出来上がるよ!それで、ヒナやアールやピースに見せてあげよう」



掌を差し出ししゃがみ込めば、おずおずと手を繋いで乗った彼らは、じょじょに表情を緩ませた。



「うん!僕たち、一緒に作る!」

「そんで、他の奴らにも出来たの見せてやるんだ!」

「三人で頑張ると、綺麗なのが出来るよね?」

「すっごく大きいのが出来るよな?」



泣いたカラスがもう笑ったとばかりに、きらきらと瞳を輝かせる子供達に瞳を細める。

繋いだ手をぶんぶんと振り回し、嬉しそうに声を上げる子供達の頭を順に指先で撫でた。



「出来るよ、綺麗で大きなやつが。三人で力を合わせたら、一人よりもうんと凄いのが出来ちゃうんだから!」



にっこりと宣言すれば、きゃあっと嬉しそうに悲鳴を上げた。



今日もぽかぽか陽気な一日。

全部で6つ作った花冠は、花を咲かせた子供達の頭で可愛らしく揺れている。


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