決戦前夜
デイジーはガーランドが見えなくなると病室を飛び出し真っ先に坑道に向かった
まだ安静にしていてください、と坑道内で散々言われたがそんな時間はない
竜が来るなら入り口だけではダメだ
坑道全体を高硬度な土魔法で覆わなくてはならない
魔属性を閉じ込めた魔石は意外と簡単に扱うことができた
魔属性の魔石を持ちながら、無属性の魔法を放とうとすると紫色の魔法弾が飛び出たのだ
これを散々試験用の防御壁に放った結果、全ての属性の耐久力はそこまで違いがなかった
が、デイジーには一つ試していないことがあると気づいていた
「おそらく聖属性ですね」
そう言って、神々の結晶から聖属性を抽出しようと手を伸ばす
「ダメですよ! それ! また気絶しますよ!?」
ギルが止める
「大丈夫ですよ あの時はちょっと緊張しすぎてました」
「デイジーさん!私がやります!」
息を切らしたエルダが坑道の入り口に立っていた
「川工事の目処がついたので、来ました」
何をやるかは全くわからなかったが、デイジーを再び気絶させまいと、とにかく急いできたのだ
「エルダさん! んー、では、そうですね どちらが向いているか試してみましょうか ここに、ほんのり力をこめて下さい 本当にほんの〜りですよ」
そう言って実験を始めたが、結局エルダは聖属性を魔石に込める方が向いていた
デイジーが結晶に魔力を注いで聖属性を展開し、エルダがそれを魔石に込める
そうやってどれくらいの時間作業したかわからないが、聖属性の魔石が木箱一杯分できた
竜の棘が塗布された土魔法の壁の近くに聖属性の魔石を置いて、魔属性の魔法弾を打ってみる
すると見事に相殺しあって、壁に当たる寸前に紫と淡い白の光を放って爆発し霧散した
坑道内に色とりどりの大歓声が起きる
「魔石も砕いて練り込んでみましょうか」
デイジーの探究心は終わらない
そうしてどれだけ経ったかわからないが、わかったことがある
魔石は砕いて練り込まない方が良かった
土魔法で作った壁の近くに聖属性の魔石を置いた方が確実に魔属性を防いだ
魔石を砕いて練り込むと、ムラがあり相殺されない箇所があったのだ
だがもちろん漆黒竜の魔属性の力はこんなものではないので、まだまだ改良しなくてならない
全員徹夜で実験を行い、一つの答えが出た
聖魔石の強化は他の属性の魔石で出来るということだ
聖魔法の近くに炎や氷、草などの魔石を作って置くと単純に聖属性の威力が上がるようで、魔属性の弾とぶつかる時の淡い白い光が何倍にもなり、魔弾の消滅も一瞬になった
どういう原理か気になるが、今はなぜそうなる?と研究している暇はない
あとは量産して坑道の全方位を覆うだけだ
全てが終わるまで、どれだけ経ったかわからないが、竜はまだ来ていないようだった
「ガーランドさん 出来ました 街の人を避難させます シェリにも以前もらった無線機で連絡しますがいいですか」
「ああ、来てくれるなら心強いが、死んでもいいやつだけ来いって言ってくれ」
そうして住民の坑道内、最奥部への避難が始まった
皆、反対するものはいなかったし、異論を唱える者もいなかった
誰もが魔物の恐怖を知っているし、竜の恐怖も知っていた
そしてガーランドなら倒せるかもしれないと、地這竜の戦いを見て、皆感じていた
そもそも家や仕事や食事まで用意してもらって、デイジーに、ガーランドに反対できる者などいなかった
「ああ、こちらデイジーです サラマンドさん!? 聞こえてますか?これ サラマンドさーん」
デイジーが魔力を込めて、もらった魔法の無線機に向かって話す
「ああ デイジー久しぶりだな 何かあったのか」
「これ声ガビガビですね」
「話せるだけマシだろう 何言ってんだあんた で、何の用だ?」
「あの首都襲った漆黒竜を村に呼んで倒します」
「何言ってんだ! 正気かあんたら」
「良ければ、死ぬ覚悟のある方だけ応援に来て下さい」
「おい!何だそれ! 本気で言ってるのか!?」
「ええ」
「了解っす!」
エマだ
「お前勝手に了解すんなよ! ランカスターがこんなにイカれてるとは」
「エマさん ありがとうございます」
デイジーはニコニコだ
いつの間にかもう夜だった
今日避難民は不安な夜を過ごすことになるだろう
幸い、エルダが坑道内にも川の水を引いてくれたし、排水機能も出来ている
食料も可能な限り、今運び出している
あとは、どう戦うか綿密に考え、全員の意識を一致させることだ
デイジーは作戦の最終案を伝えるために集会場へと向かった




