折れた剣と推理と大宴会
地這竜の首が一刀両断される
ガーランドはそのまま一直線に落下しているので速度が止まらない
地面にぶつかりそうになる寸前でデイジーとエルダが魔法で受け止めた
「っしゃあああああぁぁぁ!!!!」
ガーランドは、拳を天高く掲げる
大歓声が巻き起こる
いつの間にか避難民達も見物に来ており、砦付近は人で溢れかえっている
と、ガーランドの元にデイジーがやってくる
どんな労いの言葉をもらえるだろうかとガーランドはうきうきだ
「ガーランドさん? 喜ぶのは結構ですが、もしかして私が差し上げた魔石、全てここに置いていたんですか?」
「ああ。」
「あの後、さらに全属性10個ずつは作りましたよね?」
「ああ。全部置いた」
ズドン、と脇腹にデイジーの右ストレートが入る
エルダよりは強くないけどちょっと痛いな、とガーランドは思った
「あの七色背中剣竜がおそらくその魔石の魔力を全て吸収してたんですよ!」
「だから俺はその名前認めてねぇって!ナナちゃんな」
デイジーはそんな突っ込みを気にせず続ける
「だからあんな全属性の魔法使ってたんですよ、たぶんですけど! だから私達が強化しちゃったんですよ!あの竜を!ほんとは突進と尻尾攻撃しかしない個体だったかもしれないんですよ!障壁すら本当は展開できない子だったかもしれないんですよ!」
「まぁまぁ倒せたからよかったじゃない。全員もれなく死にかけたけどね」
白熱しそうになる二人をエルダが制止して言う
「ああ。なんかクシャも助けてくれたしな」
「クシャって誰だっけ?」
「魔人だ」
エルダとデイジーは何も言葉が出なかった
魔人が人を助けた?と言うかいつの間に?なんの目的で?え、この戦い見てたの?で、今はどこにいるの?
と言うかいつの間に?
という疑問がいっぺんに頭に押し寄せて思考回路が寸断されたのだ
「とりあえず、竜の素材、集めましょっか」
エルダとデイジーは一旦魔人の話は聞かないことにした
「後すまん、剣壊れた」
ガーランドが右手に持っている片手剣は柄の部分しかなかった
竜の素材集めは難航した
とにかく胴部分が異様に硬い上に、ガーランドが持っていたランカスターの中では最上級品の鋼鉄製の片手剣も壊れてしまったので、ガーランドの怪力で切って貰うにもそれに耐えうる刃がない
まあ、あれだけ何度も魔法を付与して竜に一撃入れたらそうなりますよね、とデイジーは慰めの言葉でも言おうかと思ったが言葉にはしなかった。
ガーランドが竜の名前を認めるまでは徹底抗戦すると決めている
結局、竜の尻尾の部分だけは風魔法でなんとか切れるので、そこから着手する
「クシャが言ってたが、うまいらしいぞ。そいつ」
「なんですかそれ!?食べたってことですか?」
「久しぶりに見たなぁ とか言ってたぞ」
「ん〜 確かに竜は太古に存在していたと言われる伝説の生き物です。つまりその頃からそのクシャさんは生きていると言うことになりますね」
「めちゃくちゃつよそうだしな、あいつ」
「この竜も霧散しません。もしかしたらあの歯ミミズも雷蛙も太古の生物なのかもしれません。霧散しないと言うことは生物として存在していたと、逆に霧散するのは魔力で人工的というか意図的に作られた魔物と推察できます」
「難しいことはわかんねぇってエルダに言ってくれよ」
「エルダさんにも言ってますちゃんと」
「私はちゃんと聞いてるって そうですよねデイジーさん」
女性同士の絆はいつの間にか深まっているようだ
「ああ、でもいつもモヤのかかった狼出てくるだろ?魔物で あれのモヤかかってないやついたぞ、西の草原に ありゃ魔物じゃない普通の狼だな」
「それすごい発見ですよ!つまり魔力に影響されて魔物化するものと、人工的に作られた魔物がいると言うことです! トカゲと鳥と人間を合わせたゴイルは人工的にしか作りようがないですから!」
「お なんか俺らが草原行ったのも役に立ったみたいだな?」
そんな話をしながら尾の部分の解体をしていたが、鱗を剥いで、本当に食べれそうな肉が、なんならちょっと美味しそうな肉の部分が次第に見えてくると、いよいよお腹が空いてくる
「何千人分あるかわかんねぇけどよ!飯にするか! 竜討伐記念でよ!宴だ!」
ガットが取り仕切って、急遽、竜を囲むように即席の簡易的な屋台が組まれていく
竜の尻尾肉を色々な味付けや調理法で作る屋台がずらりと並ぶ
他にもパンや甘いお菓子を提供する屋台もあるようだ
村に引っ越して来た者が、砦及び先ほどまで戦場だった広場に行列を作って、押し寄せている
避難民達にも、こんな竜だって狩れる人間達がいるという、いい宣伝にもなっただろう
目の前で倒れる竜を見たらもう誰も疑う者はいない
クシャの言う通り尻尾肉は絶品で、誰もが今まで食べた肉の中で一番柔らかく、旨みが溢れてくると、みな絶賛していた
「!! わかりました!ガーランドさん!」
デイジーが尻尾肉の串焼きを食べながらガーランドに言う
「あの竜の背中の剣で新しい剣を作りましょう!」
「お、おう 誰もがきっとそう思ってたぞ。 素材としてはあれが良さそうだなって」
「そうですか」
デイジーは最高の考えが浮かんだと張り切って言ったのに予想外の返答が来て少ししょんぼりする
「鍛治職人、見つけないとな あと鍛冶場も作らねぇとな」
へこむデイジーを横目にガーランドが肉を頬張った




