ガーランド、七色背中剣竜を斬る
「なんだあいつ!すげぇでかさだ!」
ガーランドが砦に駆けると、西の草原に探索に行かなかった防衛団が、すでに戦いを始めていたが、皆一様に様子を伺うだけで誰一人剣を振り上げてもいないし、矢を放ってもいない
しかし、件の巨体の周りには無数に矢が落ちており、矢が全く効果がないらしいということが一目で分かった
砦の中央には地を這う巨大な竜がいた
翼はないが、背中に剣状の大きな棘のようなものがいくつも突き出ており、それが様々な光を放っている
尾は胴と同じくらいの長さがある
あれで弾かれたら一発でおしまいだろう
巨大な頭部には3本の角が生えていて、後頭部から肩にかけて扇型の形をした盾のようなものが付いている
付いていると言うよりも体の一部となって、それを含めて頭部のようだ
竜の筋肉質な体を包む皮膚には細かな亀裂のような血管が波打っており、巨大な城壁が生きて動いているような威圧感を放ち、防衛団を硬直させていた
「あれは、七色背中剣竜ですね」
デイジーは自分の心の中で決めた名前をもう隠すつもりはないようだ
「言いにくいだろ!ナナちゃんだな」
「なないろせなかけんりゅうです!」
「いいからなんとかしろって!」
ダガーが言う
まずは定石通りデイジーが頭上に鋭い岩を生成し、地這竜に向かって放つ
が、地這竜に着弾するかと思われた瞬間、障壁に阻まれる
首都を襲った竜と同じだ
竜族は防御膜を展開できるのか?
デイジーは前回の竜の戦いを思い出す
魔法で作られたあの竜自身が展開していた障壁は、結局一度も破れなかった
「斬ってみるか?」
ガーランドが軽く提案してみるが、団員が駆け寄ってくる
「団長!矢も通じませんでした!」
「むぅ、、 矢もダメ。魔法もダメ。 どうすりゃいいんだ?デイジー」
エルダもこちらに駆け寄ってくる
「デイジーさん2人で魔力を1つのところに集中させるのはどうですか?皆さんも矢を放ってください」
マーカスもやってくる
「医療魔法しか得意ではありませんが、少しばかりの手助けならできるかもしれません」
だが、不用意に一箇所に集まりすぎたのが、そもそも問題だった
地這竜の背中の棘が赤、黄色、緑と、それぞれ別の色に光って魔法を放つ
炎、土、雷、草、水、氷の全属性の魔法攻撃がガーランド達目掛けて襲ってくる
デイジーは魔力を全開にして迎え撃つが、力負けする
直撃したその場所は、砦の一部が砕け、何人か転落した
「無事かみんな!」
ガーランドが叫ぶが、皆返事がない
辺りを見回すとガーランド以外意識を失い、黒焦げになっている
ガーランド自身も全身ひどいやけどだ
くそっ!どうする!
ガーランドは瞬時に判断する
「医療団!!!!!ここだ!頼む 受け取れ!」
負傷した全員を砦から投げる
医療団がなんとか風魔法を使って衝撃を和らげて、デイジー達を抱える
「俺がやるしかねぇよなぁ」
ガーランドは単身、砦から飛び降り、地這竜に突進する
地這竜の棘が光り、魔法弾が飛んでくるがギリギリのところでかわす
だがキリがない
幾重にも飛んでくる魔法弾に被弾しても突進し続けていた
「うおりゃ!」
太陽の反射でわずかに見える透明な魔法障壁に切り込むが手応えはなく、ガンッ!と跳ね返される
砦の脇の森の中で一番最初に目覚めたのはエルダだ
周りを見渡し、状況をすぐに察知して左手で自分を回復しつつ、右手でデイジーとマーカスを同時に治療する
デイジーは一番前に立って魔力を受け止めようとしたので大怪我をしている
全神経を集中させて治療する
マーカスさえ起きてくれれば2人で治療できるのに、と思うがマーカスも全身火傷がひどい
ガーランドは障壁を未だ破れずにいる
「ずりぃなおめぇ 正々堂々と戦えよな」
魔法弾をかわしながら魔法障壁を一箇所に集中して攻撃することは不可能だった
だがこうして時間を稼ぐ間に、デイジー達が復活してくれることを信じていた
魔法弾に気を取られて地這竜から目を一瞬逸らした時だった
地這竜は突然走り出してガーランドに突進してくる
ガンッ!
地這竜の角を剣で受けるが、何十メルの巨体の突進の力を全身に受けてしまう
「ぐはっ」
吹き飛ばされて、頭から地面に落ちる
体の感覚がない
骨が何本折れたかわからないが、動かねば
時間を稼がねばならない
だが、ガーランドは立てなかった
体にまるで力が入らない
倒れるガーランドに魔法弾が直撃する
意識が途切れそうだ
ここまでなのかよ
そう思った時だった
空から何か飛んできた
「おやおやおや、ガーランドさん。ずいぶん懐かしい亀と戦ってるじゃないですか」
亀?と思いふと声のした方を見上げると、ずいぶん前に坑道に墓参りしにきた魔人が空に浮かんでいた
「お、おう 確かクシャだったか」
「ええ。お久しぶりです」
相変わらず魔法弾が飛んでくるが、クシャに被弾する寸前に空中で弾ける
魔法障壁は見えなかった
「お困りのようで」
「いや、困ってねぇぞ 俺一人で行ける」
「ボロボロのようですが」
「準備運動だって 今からギタギタのグチャグチャにしてやるところだ」
「そうですか。 それなら私はこれで」
「いや!待ってくれ! すまん!きつい!」
「でしょうね。 では少しだけお手伝いしましょう ちなみにあの亀の肉はなかなか美味です」
そう言ってガーランドに魔力を流し込む
「あともうお分かりだとは思いますが、障壁には一点集中です。あれくらい一人で破れるくらいにならないと、みなさんを守れませんよ? それでは」
そう言って飛び去っていった
ガーランドは全身に力が戻ってくるのを感じる
一点突破だ
そう思い、また全力速力で地這竜に向かって駆ける
「今度は!ヒビくらい!入れよな!」
高く飛びながら剣を振り下ろす
再び甲高い音を出して剣と障壁がぶつかる
ガーランドは障壁に吹き飛ばされるが、少しだけヒビが入るのを見逃さなかった
いける!
心の中で自分を鼓舞して魔法弾を避けながら、ヒビが入ったところを再び狙おうとしていた時だ
「あそこです!みな、放て!!!」
矢と魔法がヒビが入った箇所に向かって一斉に飛んでいく
魔法障壁はガラスが割れるように砕け散った
「デイジー!エルダ!お前ら!」
「すみません、油断しました」
デイジーは本当に最大級に申し訳なさそうな顔をして言うのでガーランドは笑ってしまう
「がはっ いいんだよ! 倒すぞ!ナナちゃん!こっからが勝負だよなぁ!?」
地這竜を向いてガーランドが叫ぶ
何も言われずともデイジーがガーランドの剣に炎を付与する
地這竜がガーランド達を全員巻き込もうと、尻尾を巻き付けるように振り回す
皆、避けて次の攻撃に備える中、エルダの風魔法が地這竜の尾を切り裂く
地這竜の尾から血が吹き出す
ここぞとばかりに団員達も尾を狙い矢を放つ
地這竜が尾を庇うように丸くなる
ガーランドが地這竜に切り掛かるが、大きすぎて足元にしか届かない
だが足元も炎の剣は効いたようで、切断面から血飛沫が上がる
足を切られ地這竜の体勢が崩れる
「デイジー! 飛ばしてくれ!」
デイジーの風魔法がガーランドの足元に風魔法を打ち上げる
真上に大砲を撃ったかのように、ガーランドが宙を舞う
ガーランドは地這竜の頭部を捉える
狙いは扇の下に隠れている、僅かに見える首だ
ガーランドの体に水の膜が張られる
「おっ あれだな?」
ガーランドが地這竜の首を剣先で指し示す
水の膜が顔まで覆う
ガーランドは地這竜の頭上、遥か上で最高到達点に達する
達した瞬間、風が斜め下へと吹き付ける
この角度なら扇を避けて首に入れそうだ
風の抵抗を減らすべく、なるべく体を開かずに、ものすごい勢いで頭から落下する
空気抵抗に負けずに剣を振りかぶり、落下する勢いを使って一直線に振り下ろす
デイジーとエルダが剣が地這竜に触れようとする瞬間、竜の頭上に雷を落とす
炎と雷が触れた瞬間大爆発が起きた




