カルの防衛強化策と帰省
突然の魔物襲撃だったため、先ほど叫んで居場所を知らせてくれた女性を逃すことができなかったことをガーランド達は後悔していたのだが、幸い傷一つなく、無事だったようだ
「おそらく下にまだみんな囚われてます」
そう言って下層まで行くと、一室に女性ばかりひと塊になって身を寄せ合っていた
女性ばかり集められて数日、こんな部屋に囚われていたのだ
ガーランドは察して黙り込んでいると、一人の女性が言う
「いえ、あの盗賊達、みんなそう言う経験がないみたいで特に何もして来なかったんです。ただこちらを変な目で見てきて気持ち悪かっただけで」
「お、おう」
ガーランドはなんて言っていいか分からなかった
「たぶん私だけ特に反抗的だったから、あの部屋で一人縛られてたんだと思う」
助けを呼んだ女性が言う
「まぁ無事で何よりだ。帰るぞ!」
盗賊達はどうしようか、そう思っているとデイジーが草魔法の縄で縛っていた
ダンジョンの魔力は相当なものなので、何もしなければ半永久的に草が勝手に魔力を吸って成長し、盗賊達を飲み込んでしまうとのことだ
街の人に行って後で回収させよう
とにかく今は女性達を街に届けるのが最優先だ
デイジーは鉱石イグアナの素材も持って帰りたかったが、今は難しいだろう
ソリは偵察用の小型しか持って来ていなかったが、何回か往復してカルまで無事に届けることができた
女性達はソリに乗ると、初めて体験する速度と爽快感に大はしゃぎだった
「爺さん、依頼は完了したぞ」
街の唯一の出入り口である南門の前に行商人兼領主の老人が立っていた
「ああ。感謝する。 私ひとりの力では救出など到底無理だった」
「いいんだよ。誰も爺さんに行けなんて言ってないだろ?自分のやれることだけやりゃいいんだ」
「やれることか」
「辺境の村に大勢の移住者を移動させなくてはなりません。この街を経由地として使わせてもらえますか」
デイジーがすかさず交渉を始める
「ああ。」
「山まで続く道を舗装して、山の麓にも拠点を作りたいですがいいですか?」
「ああ。」
「それと!鉱石を国に納めてた話!ゆっくり聞かせてもらいますからね!」
デイジーがこんなに怖い顔するのをガーランドは初めて見た
カルを襲った魔物は話を聞くに、おそらくモヤの狼とゴイルのみだった
強敵は出ていない
カルの防衛をどうしようか考えていると、ガーランドは辺境の村がすぐそこまでだと言うことに今更気づいた
「ダガー達も呼んでくるか!村の様子も気になるしな、エルダも一旦帰るか?」
「うーん、でも、、」
デイジーの顔を見るエルダ
「いいですよ。久しぶりの帰省じゃないですか。それに狼とゴイルくらいならどれだけ来ようと一人で大丈夫です」
デイジーから了承を得たので、早速デイジーに山の麓までソリで送ってもらう
「この山だけなぁ、ソリじゃ無理だよなぁ」
ガーランドが言う
「そうですね。何かいい方法があるといいんですが、木を燃やす訳にもいきませんし。まずはこの辺りに拠点を建てたいですね。移住者は皆、必ずこの山を越えなければなりませんから」
デイジーの火力なら燃やし尽くせるだろうとエルダは想像する
「とりあえず、行ってくるな デイジーはどうするんだ?」
「私はソリでカルに戻り、あの領主に鉱石のことを聞きます。そのあとはゆっくりしますよ。流石にちょっと毎日色々ありすぎて疲れました」
「そうだな。エルダお前も疲れたろ おんぶして連れてってやろうか」
言うか言わないかの間にエルダの右ストレートが左脇腹に刺さった
「あんだよ、昔は肩車もしてたんだぞ!?」
「うるさいってば!!」
デイジーは笑っている
そんなやりとりをして、山を越えると、エルダにとっては久しぶりの帰省となった
「エルダ!なんか逞しくなったじゃないか」
ダガーが出迎えてくれた
「そうかな?」
「ああ。そうだ」
村が魔物の襲撃を受けているのもある程度想像していたが、案外平和そうだ
そしてまず目に付くのが北側の砦がとんでもなく進化している
首都の防壁に見劣りしないどころか、配置や設備を考えると村の砦の方が何倍も堅牢かもしれない
他にも村の建物自体見違えるように発展していたが、今はそれどころではない
カルに応援を呼ばなければ、デイジーが一人で戦う羽目になる
「そんなことより、カルが危ないんだ」
今まであったことを端的に話すがどうしても、色々あって長くなりすぎるし、自分で話していておとぎ話みたいだなとなってくる
それでもダガーは何も言わずに全て受け入れてくれた
「なるほどな。そんな大冒険の真っ最中ってわけだ」
「大冒険っていうか、とにかくカルに応援が欲しいんだよ」
「わかった!お前ら!山越えるぞ!支度しろ!」
ダガーが集会場の方に向かって大声を出す
ガーランドとガハガハ盛り上がっていたガット達が、手を挙げて承知したことを示してこちらに走ってくる
「団長の言ってること本当なのかい? すごい神話みたいなこと言ってるけど」
「まぁどこまで盛ってるか分からないけど、きっと概ね事実だと思う」
「すごいや!俺たちも戦うよ!」
ガットは少年みたいに目をキラキラさせている
「村の防衛は大丈夫なの?」
「ああ、調査団が研究を進めてわかったんだが、魔物のエサは魔力そのものだ。それはなんとなく察し付いてたろ? だから魔力を閉じ込めて、北の山に置いてくるんだよ。そしたらおそらくだが、それを喰って、しばらく来ない」
「閉じ込めるって?」
「マーカスが坑道内であの石に回復魔法を打つだけだ。そしたらもう魔力が入った石の完成だ。回復の魔石だな」
「それじゃあ魔物が強くなっちゃうんじゃ?」
「炎の魔石にしたら炎属性の強いやつが生まれちまうかもしれないが、回復なら別に大丈夫だろ。なんなら浄化されてんじゃないか? とにかくそれ始めてから魔物が来なくなったんだよな」
「それより急ぐんだろ?俺らはもう行けるぞ。エルダとガーランドは休んでな 色々あって疲れたろ」
「私も行く!」
「休むのも仕事だ!」
エルダはいつの間に現れたガーランドに簡単にひょいっと持ち上げられて強制的にお姫様抱っこの体制になっていた
「やめろって!」
エルダは足をバタバタさせて振り解こうとするが、ガーランドの優しい怪力によって解くことはできない
エルダはなんだか子供の頃に戻ったような気分になる
後ろを振り返るが、いつの間にかダガー達は出発していた
懐かしいガーランドの腕と、いつも当たり前すぎて意識してなかった風に舞うほのかな村の匂いに、少し心が軽くなるエルダだった




