街へ
エルダは今や村の顔役のような女性だ
行商人の手配も彼女が行なっているようだし、井戸の管理や、作物の管理を取り仕切っているのも彼女
さらには村おこしのイベントを年老いた村長に変わって積極的にしようとしている
年はガットと近かった気がする
まだまだ若いこれからの村を担って行く世代だ。無事に旅を終えなければならない
なぜ彼女がそこまで村人達から信頼されてるといえば
「なぁエルダ。どこで医療魔術の勉強してたんだ?これから行く街か?」
「いえ違うわ。もっと中央寄りの街。名前はホルムっていうんだけど」
「そうか。お前だけだもんなそんな留学みたいなことしたの」
「基礎魔法だけ覚えて帰ってきちゃったんだけどね。あの村はお金も手も足りないから」
それでも村長はエルダならと村で前例のない医療魔術の学校に通わせた
村に学校はなく、エルダは子供の頃、行商人から廃棄寸前のボロボロの本を何冊ももらって自力で読み書きを覚えた そんな子は今まで村にいなかったのだ
医療魔術は発動までに時間が少し必要だし、毎日何人も診られるわけではないが、ポーションが簡単には買えない村では非常に貴重だ
「でもさっき魔術じゃなくてポーションで回復しようとしちゃったけどね」
罰の悪そうにエルダが言う
「緊急だったからな仕方ない。それに応急手当てならポーションが一番だ」
「中央に行けばより高度な魔術も勉強できるし、それにガットの腕を繋ぐ魔術もあるかもしれないんだけどね」
そう言ってエルダが少し悔しそうな顔でどこを見るでもなく景色を眺めていると
「飯にしよう。水場がある」
前方で馬に乗っていたダガーが言った
現在地は村から1日ほど馬車で進んだ、草原地帯
先程まで山道だったが少しひらけて来た
山水が流れてなだらかな川になっている
「この調子だと明日には街に行けそう。村の馬って案外優秀かもしれない。」
エルダがダガーにそういうとガーランドが水汲みから帰ってきた
「綺麗な水だな。飲めそうだ。ほら」
「ありがとう。まだ日が高い。進めるだけ進みたいな」
ダガーがそう言って持っていたパンをひとかじりするとガーランドが首を傾げた
「むぅ」
「どうしたガーランド」
「本当に誰にも会わないな。この1日、街に向かって歩いたが行商人もいなかったぞ」
「今通って来た山の先はうちの村だけだし、そもそもうちの村には名前もついてない時点でお察しだろ。存在すら知られてないんだよ」
ダガーがわざとらしく呆れたような諦めたような声で返す
「私は諦めてない。必ずいい村にして見せる。あなた達にももっと戦いやすいような環境にする。もう怪我人なんて出したくない」
エルダが歯を食いしばるように言う
「そうだな。急ごうガット達にいいポーションを飲ませないとな」
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