ランカスター大輸送計画
ソリを主軸とした輸送計画が本格化していた
日が経つほど、首都の建物は次々と倒壊しており、このままこの街で暮らしたいと希望する者は皆無だった
首都ミドガルディスからホルムまで馬で走ると2日掛っていたのが、今やソリを飛ばせば、その日のうちに到着出来るどころか、日の位置がほぼ変わらないのだ
それを可能にした一番の立役者は巨大歯ミミズの黒殻だ
あの甲羅のような物体はいくら地面を滑っても全く磨耗しなかった
ガーランドが磨いた直後と同じ輝きを今も放っている
もちろん、今の首都にはあれ程の耐久性のある人工物を生成できる力はない
「もっと湧いてくれたらなぁ」
と今日もソリでホルムに人を運ぶ道中、デイジーは呟くがそんなに甘くはない
首都前の平原及び、砂漠地帯に奴が出現することはなかった
今のソリは4台だ
これを最大限に有効活用しなくてはならない
首都の建物はいつ倒壊してもおかしくない
「ホルムにどれくらい運べたんだ?」
デイジーの隣にいるガーランドが聞く
ガーランドは護衛のために毎回、全ての移動で一番前のソリに乗っている
「ざっくりとですが、一回に4台のソリで約400人運べます。それを日が昇ったときから、暗くなるまでだと4往復くらいが限界です。つまり日が昇って沈むまでに1600人くらい移動できます。そしてそれを始めて今日で4回目の朝ですね」
当初は飛空艇で子供達を送る計画だったが、かなり速度が出て安定しているため2日目以降は子供もソリに乗せている
むしろこうなってくると手すりや屋根を、もっと改良した方がいいとの意見のが多く上がる
ふかふかな椅子を設置してくれなど
デイジーは頭が痛い
「意外と順調だな」
ガーランドがそんなデイジーの悩みなど知る由もなく、純粋な感想を述べる
つまり今ホルムには6,400人の避難民がいる
ハンスの指揮で、ホルムでは避難民のために、仮設住宅を建てている
きっとハンスは今、目を回しているはずだ
「そういえばあの蛙は素材にできたのか?」
「いえ、まだどうするかは考えていませんが、ぬるぬるして気持ち悪いんですよね。あまり触りたくないです。でもやっぱり消えないですね」
あれから5日経っても蛙は予想通り、消えなかったのだ
「あの皮、テントにできるんじゃないか?このソリの屋根とか」
「!!!! それです!」
デイジーが急に大声を出したかと思うとソリの制御が一瞬緩み、不安定な挙動になる
乗員から悲鳴が上がる
ガーランドは二重の意味でびっくりしてソリから落ちそうになる
「危ねぇぞ、デイジー!なんだ急に!」
「すみません、、、」
何日かして、首都からの避難民を全てホルムへと移動させることが出来た
事故もなく、全員を送り届けれたことに皆喜び、最後の便が到着した時には大歓声が上がったが、食料も安定しない、魔物がいつ来るかわからないので、気を緩めるわけにはいかず、皆で宴をしようとはならなかった
「じゃあ落ち着いたら村で盛大な宴をしないとな!」
ガーランドはそう言って、休む間もなく蛙の皮を切りに行った
ガーランドが休まず動いてくれているのだ
デイジーも自分もできる限りのことをしなくては、という気持ちになる
ここまで順調に移動できたのは僥倖だが、問題はこの先だ。
川の横断と、沼地がある
それまでに幾つかの集落があるが、そこで暮らす者達も村に連れて行ったほうがいいだろう
それ以外にも街はまだまだたくさんある
しかし全て回っていては時間がいくらあっても足りないし、ソリの数も限られている
まずは今いる避難民を村に連れて行かなければ
村の発展も急務だ
まずは辺境の村に一番近い街、カルまで避難民を連れて行こう
村に行くにはその先の山を越えなければならない
山をソリで駆けるのは不可能だろう
ソリ用の道を舗装するか、迂回できるところを探さなくては
明日の朝、ガーランドとデイジーを連れてカルに偵察に行こう
デイジーはそう頭を整理して、ガーランドを手伝うべく川に向かった




