ホルム代表、決断する
町中大騒ぎだったが、一人だけ顔が死んでいる者が、大通りから少し外れた路地にいた
こっちを見ている
ホルムの代表だ
デイジーは首都が破壊された時に、その様子を見に来たこの男の顔もボソッと名乗った男の名前も覚えていた
「何か問題でも発生しましたか?ハンスさん」
すすっと歩み寄って、デイジーが聞く
「あ、ああ。 デイジーさん。避難民を受け入れると言ったばかりでこんなことを言うのは本当に情けないのですが、恥を承知の上で申し上げます。 この街を捨てるべきか否か、ずっと考えています」
「どうしてですか?」
デイジーはハンスがなぜ悩んでるか想像はついていたがあえて聞いた。少し意地悪だろうか
「もうお分かりになっているでしょう。この街の守備隊は弱すぎる。平和な時代が終わろうとしているのです。ろくに訓練もせずに、スリを追いかけ回したり、住人のちょっとしたいざこざを止めることしか出来ない兵士では、この街は守れません」
「そうですか。ではどうするおつもりでしょう」
デイジーはこの後何と言われるかも容易に想像していた
「さらに恥を承知で申し上げますが、是非あなた達が向かうところに私達も住まわせてもらえないでしょうか」
私達も、と言うのは、おそらくホルムに住む全員のことだ
デイジーはハンスやハンスの家族だけどこか安全なところへ逃がしてほしい、ということなら断るつもりだったが、この男はそこまで落ちていないようだった
「私たちが目指すのは辺境の村です。私も首都を捨てるべきだと考えています。」
ハンスは驚きよりも正気なのか?という顔をしている
「本気で言っていますよ。今やあそこがランカスター共和国の最高戦力が集まっている場所と言って間違いありません。何日も捜索していますが共和国議員も騎士団も誰も見つかっていません」
それとあの日、共に竜と戦ってくれた、魔法学校の教員も
デイジーが続ける
「国としての機能はもう首都にはありません。首都に住みたいと願っている者もまだ大勢いるでしょう。ですがその人たちを説得して皆で辺境の村に行くべきだと思っています。首都に残ってもおそらく一年後、誰も生きていないでしょう」
残酷なことを言っているように聞こえるだろうか。想像しうる最大限に現実的なことを言っているつもりだ
「分かりました。よろしければ是非、辺境の村に」
「いいぞ!」
ガーランドがいつの間にかハンスの前に立っていた
「うちに来たいんだろ?歓迎するぜ!誰もいない村だったんだ。活気が出るのはいいことじゃねぇか。この街を捨てるのはもったいないがな。まぁなんか使えるだろ 魔物が住むわけじゃねぇし。あいつらそんな頭ないだろ」
デイジーはなんでも行動が早いガーランドに呆れつつも、頼もしく思った
「そういうことらしいので、早速街の皆さんにお知らせしてもらえますか」
「わかりました」
デイジーはハンスに言ったつもりだったが、
「みんなー!!!聞いてくれ!! 村長から話があるそうだ!」
ガーランドが大声で大通りに向かって叫ぶ
魔法で拡声してるわけでもないのにすごい音圧だ
「村長じゃないですよ!代表です ホルムの」
「代表だそうだ!!!」
その後ハンスからの重大発表があり、街の者は大急ぎで引越しの支度を始めるのだった
反対する者は誰もいなかった




