シェリ王国、動く
「隊長!見てください!あれ!」
束の間の昼休憩でぼんやりと海を眺めていた部下がそう叫ぶ
「あぁ〜?なんだ〜??」
男は、あれ見てください系の発言を聞くと碌なことが起きないのを知っているので気だるそうに空を見上げるが表情は一変する
あの方角はランカスターの首都、ミドガルディスのはずだ
光の柱が空に向かって高く伸びている
海の向こう側だぞ?
どんな光だ 一体何があったんだ?万年平和のランカスター共和国様だぞあっちは
隊長と呼ばれた男。シェリ王国守備隊隊長サラマンドは隣国の異変に気づき直ぐに指示を出す
「ミュラー、計測器だ。あれ多分魔力だろ。観測所に連絡!」
「おいっす」
命令されたのは金色がかった薄い橙色の髪に猫のような耳を生やした女性兵士で名はエマ。磨き上げられた短いサイズの鎧の左胸には守備隊副団長を表す印が刻印されている。豹の亜人だ
隊長だけはエマを姓の方のミュラーで呼ぶ。理由はわからない
「俺は王に話を付けに行く。あれが本当に魔力だとしたらまずいぞ。ランカスターに魔物が出る。あそこの国俺らと違って魔物と戦ったことないだろ」
「了解っす」
軽く敬礼の姿勢をとって、エマは通信機のところへ向かう
機械に自身の魔力を送り込むと少し耳が不快になるような高い音が響き、すぐに魔力観測所に繋がる。
便利すけど、この不快な音がするのは改善点すよねぇ
そんなことを思いながら話し始める
「こちらエマ! 聞こえるっすか?」
ミュラーが短く告げると、機械内部の魔石が激しく震え、雑音に混じった声が聞こえる
「聞こえてるぞ。ランカスターの光のことだろ?もう観測できてるよ。魔力だ。しかもとんでもない濃さと量だ。多分もうちょい近くで観測してたら機械が吹っ飛んでただろうな。細かく言ってもわかんねぇだろうからとにかくとんでもねぇって伝えといてくれや」
「シドさん、ありがとっす。じゃあもう切るっすね隊長にそのまま伝えるっす」
サラマンドの方は王に謁見しているところだ
「今、ミュラーに確認させていますが、おそらくさっきほどの光は魔力かと」
「ふむぅ。困ったことになった。わしも言われて一瞬だけ見れたんじゃが、あれの出どころはなんだと思う?サラマンド ランカスターが何か兵器でも作ったのかのう」
「計りかねます。あれほどの強大な魔力の爆発が急に起きるなど前代未聞ですので。が、しかし一つ言えるのは爆発地点はおそらく壊滅的かと。こちらからでも見えたあの魔力を、技術のないランカスターが制御できたとは思えません」
王は目を瞑って思案した
「行ってみなければ分からぬか。ランカスターとは表立ってのやり取りこそ今はないが敵対国というわけでもない。様子を見にいってみよ。必要とあらば支援を。それと、あの飛空艇を使ってよい」
「はっ」
頭を下げて膝を折り、返事をする
「隊長〜。やっぱり魔力っすよ〜!!!」
遠くからミュラーの声がする
あいつは、、国王に聞こえるだろうが、ばか
サラマンドは王の間から踵を返し、外套をはためかせながら隊員を招集するべく、詰所まで急ぐのだった




