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平穏な高校生活を送っていたらなぜか銀髪碧眼転校生(幼馴染)に全力で言い寄られるようになってしまった件  作者: 夜空 叶ト


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第8話 修羅場を作り出す大和撫子(悪魔)

「おや、先客がいたか」


 話がうまく纏まりそうな所で、現状況下で一番聞きたくない声が聞こえてくる。

 屋上の扉の方を向いてみるとそこには、満面の笑みを浮かべた大和撫子(悪魔)が立っていた。


「後輩君じゃないか。こんな所で奇遇だね。せっかくだ、いつものように仲良く昼食でもどうかな?」


「……いつもっていつの話ですか?」


 俺が詩織先輩と昼食をとったことなんて学校ではない。

 プライベートで呼び出された時に数回一緒に食べたくらいだ。


「はっはっは。冷たいことを言うね。君は」


「真実を述べただけです」


「本当に面白いね君。やっぱり僕と付き合わないかい?」


「ちょっと待ってください!!」


 ここで、今までずっと黙ってきた天雲さんが口を開いた。

 正直、一番厄介な展開だ。

 この二人は水と油。混ぜるな危険。

 ハッキリ言って相性は最悪なのだ。


「おや、その綺麗な銀髪。君が後輩君の幼馴染ちゃんか」


 絶対に知っていただろうに、何も知らない風を装って天雲さんの方をチラリとみる。

 これ以上、状況をややこしくしないでくれ。


「そう言うあなたは?」


「自己紹介が遅れたね。僕は水城詩織。そこにいる後輩君が所属している文芸部の部長だよ」


 ニコッと微笑みかけて、お辞儀をする姿はまさに清楚な大和撫子。

 しかし、中身は人のことを弄って快楽を得るタイプの悪魔。

 ギャップがありすぎて風邪を引きそうだ。


「君の名前を教えてもらってもいいかい?」


「私は天雲理奈って言います。朔夜君の幼馴染で彼女候補です!」


「おい待て。最後の方に変な物が追加されてるぞ!?」


 いきなり彼女候補を自称し始めた天雲さんに動揺しつつ、詩織先輩の方を見る。

 先輩はニヤリといつもの恐ろしい笑みを浮かべていて、絶対にろくでもない事を考えている。


「デートすらしたことのない君が彼女候補ねぇ~君は案外初心な子なんだね」


 これ以上無駄なことを言わないでくれ。

 本当に、頼むから。

 頭痛がしてくる。

 なんで二年生が始まって早々、俺はこんなド修羅場に巻き込まれているのか。

 頭がおかしくなりそうだ。


「う、うぅ。やっぱりさっくんは黒髪で清楚な大和撫子が好きなんだ!」


「違うから。絶対に髪を染めてこようとかするなよ?」


 今すぐにでも走り出してしまいそうな天雲さんを止める。

 この先輩は本当に厄介ごとしか持ち込んでこない。

 あまつさえ、この状況をニヤニヤと楽しんで来ているのだから本気で救えない。


「後輩君は素直じゃないね。シンプルにその銀髪を褒めればいいのに。君の良いところは気遣いや思いやりが出来る所。悪いところは鈍感なところと思ったことを口に出さないことだとお姉さんは思うな」


「お姉さんって。歳一つしか変わらないじゃないですか」


「その一つが大きいんだなこれが。ま、いいや。僕はお邪魔虫みたいだから退散するよ。また放課後にね。後輩君」


 最後までニヤニヤしながら詩織先輩は屋上を後にした。

 本当に厄介ごとしか持ち込んでこない先輩だ。

 さて、これからどうするものか。


「……さっくん、私の髪のことそんな風に思ってたの?」


「当たり前だろ。そんなにも綺麗な髪を黒く染めるのなんてもったいない」


「……そ、そっか。じゃあ染めるのはやめる。えへへ」


「なんでそんなに顔が赤いんだ? 熱でもあるのか?」


 顔を真っ赤にさせてくねくねする天雲さんの額に触れる。

 めちゃくちゃ熱いとかそう言うことは無く、熱は無いようだった。


「ひゃ、だ、大胆」


「……まあいいや。それよりも話は終わったんなら教室に戻ってもいいか?」


「う、うん」


 依然として顔を真っ赤にしている天雲さんを置いて俺は一人教室に戻る。

 本当にあの先輩は今日あったら殴ってやろうかと本気で考えながら。


 ◇


「いやぁ~昼休みは本当に面白かったな~」


「マジで性格悪いですよ。詩織先輩」


「だって、ちょうど面白そうな場面に遭遇したものだからついね。そう怒らないでくれよ」


「怒りますよ。俺が恋愛系のトラブル一番嫌いだって知ってますよね?」


 この先輩は俺が中学に体験した出来事をしっている。

 だからこそ、ああいうイタズラはぜひともやめて欲しいものだ。


「知ってるとも。でも、あんな修羅場を見てしまったらいじりたくなってしまうじゃないか」


「質が悪すぎる……」


 あまりにも質が悪い先輩にジト目を向けてため息をつく。

 この人は何を言っても改善してくれないだろうし、諦めることにした。


「それで、君の後ろにいる銀髪の可愛い女の子は入部希望者かな?」


「らしいです。……はぁ」


 頭痛がしてくる。

 部活の場で絶対にそろってはいけない二人がそろってしまった。

 これは面倒なことになる予感しかしない。

 天雲さんが隣で入部届を書いている。


「後輩君? なんで君は退部届を書こうとしているのかな?」


「理由は聞かないでください。今までお世話になりました」


「逃がすわけないだろ?」


 途中まで書いていた退部届をひったくられてビリビリに破られる。

 きっと、この先輩に人の心はない。

 あってたまる物か。


「そういえば、文芸部って何をする部活なんですか?」


「君は何も知らないで入部届を書いたのかい?」


「そうです!! さっくんと一緒に居たいので」


「すごく真っすぐだね、僕と真反対で少し羨ましいよ」


 詩織先輩は天雲さんを真っすぐ見て羨ましそうにしている。

 この人も人のことを羨ましく思う気持ちがあったらしい。


「後輩君、今凄く失礼なことを考えていなかったかい?」


「気のせいでは?」


「また二人でイチャイチャして! 私がさっくんとイチャイチャするの!」


「しないから。どっちともイチャイチャはしないから」


 ナチュラルにどっちかとイチャイチャすることが既定路線になりつつある会話の内容を訂正しなければ。

 俺は誰ともイチャイチャする気なんて全くないのだから。


「ふふ。こんな美少女二人に言い寄られてその態度が出来る男子高校生は少ないだろうね」


「他の人のことは知らないですけど。俺はそういった類の修羅場はごめんなので」


「いっそのこと誰かと付き合えば、修羅場に遭遇しなくて済むと思うんだが」


「相手がいないですよ」


「僕がいるじゃないか」


 ドヤ顔でふふんという詩織先輩は確かに可愛いと思うけど、この顔は完全に僕をいじって楽しんでいる顔だ。


「私が付き合いたい!! さっくん付き合って!」


「……ダメだ。カオスだ」


 こうなっては収拾がつかない。

 俺は見切りをつけて文芸部の部室を走って飛び出した。

 逃げるのは恥ずかしい事じゃないんだ。

 自分の心にそう言い訳をして、俺は全力で学校を後にするのだった。


【理奈視点】


「逃げちゃった」


「だね」


「先輩のせいですよ」


「そうかな? 僕としては君にも責任の一端はあると思うのだがね」


 水城先輩と部室に取り残された私は内心少しだけ安心した。

 誰とも付き合う気がないということは、今となりに座って本を読んでいる圧倒的大和撫子の先輩にも恋愛的には興味がないという事だから。


「先輩は本当に朔夜君のことが好きなんですか?」


「僕の前ではさっくんと呼んでもらっても構わないよ? 変に広めるつもりもなければ、君たちの不利益になるようなことをするつもりはないからね」


 先輩は本から視線を外すことなく淡々と告げてくる。

 本当にそんなことをする気はないみたいだけど、私が一番聞きたいことを聞けてない。


「そんなことより! さっくんの事は本気で好きなんですか?」


「後輩としては好きだよ。弄っていて楽しいしね。だけど、恋愛感情はないかもしれないね」


「ほんとですか!?」


「ああ。彼が魅力的なのは認めるけど、僕はひねくれものは好きじゃないんだ」


「……どの口が言ってるんですか?」


 さっくんの数倍はひねくれてそうな先輩が何か言ってる。

 でも、この人がライバルじゃないなら安心!

 今の所さっくんに他の女の影無し!

 よしよし。


「君は本当に後輩君のことが好きみたいだね」


「勿論です! さっくんは私にとってヒーローなので!」


「なるほど。これは後輩君も苦労していそうだ」


 少し、呆れたかのような顔で見つめてくる先輩。

 なんかムカつく。


「どういう意味ですか?」


「だって、君は今の後輩君を見ていないじゃないか。それは彼にとって中々にしんどい事だと思うよ」


「だから、意味が分からないんですけど?」


 さっきから先輩が何を言いたいのかわからない。

 私がさっくんを見ていない?

 そんなわけない。

 私はずっとさっくんを見てる。


「わからないのならいいよ。だけど、アドバイスをするんなら君はさっくんではなく印南朔夜君を見るべきだと思うよ」


 先輩はそれだけ言って視線を本に戻してしまった。

 何を言いたいのかわからなかった私は水城先輩を置いて部室を後にした。

 もしかしたらさっくんに追いつけるかもしれないと思って。


【理奈視点終了】

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