第6話 俺たちの後ろには銀髪美少女?
「後輩君は誰かと付き合う気はないのかい?」
「前にも言ってると思いますけど、そう言うのは中学の頃ので懲りてるんで」
「もったいない。そんなにもルックスが良いというのに。性格も悪くないし」
「そう言う詩織先輩はどうなんですか? 先輩だって凄く容姿は整ってますし、彼氏の一人や二人いるんじゃないんすか?」
詩織先輩は性格は置いておいて、見た目は驚くほどに良い。
スタイルだっていいし、見た目だけは非の打ちどころがないと思う。
性格は置いておくとして。
「君は僕が何人かと同時で付き合う不埒な人間だと思っているのかい?」
「それは言葉の綾ですけど。実際彼氏がいても不思議じゃないと思っています」
「はは、彼氏がいたらわざわざ休日に後輩君を呼び出して買い物に行ったりしないさ」
「それもそうですね」
「そこで諦められると僕が悲しくなるんだけど?」
詩織先輩に睨まれるけど、この話は諦めるしかないだろ。
言われてみれば、わざわざ俺を休日に呼びつける意味とか無いしな。
「ノーコメントで」
「コメントしろよ! 後輩君は本当に生意気だね」
「そういうキャラでやってるんで」
ジト目で詩織先輩に睨まれるけど、その視線を受け流して俺はドンドン歩く。
美人の怖い顔は本当に迫力がある。
詩織先輩のような文学美女ならなおさらだ。
「なんだか僕たちが会った頃を思い出すね」
「もう一年経ってますからね。懐かしいです」
「だね。あの頃の後輩君は凄く荒んでたからな~」
「掘り返さないでくださいよ。忘れたい過去なんですから」
高校に入学して一年目の頃。
俺は詩織先輩と出会った。
運命的な出会いがあったとかではなく、俺達の出会いは普通そのものだ。
「いや~僕にとっては面白い物だからね。最初の君はもっとトゲトゲしかったからね」
「だからやめてくださいって」
「たまにはこうして世間話をするのも悪くないだろう?」
「俺の昔話じゃなければ歓迎なんですけどね」
詩織先輩はクスクスと俺の方を見て笑ってくる。
相変わらずこの人は人を揶揄うのが好きらしい。
いつもいじられているこっちの身からしたら溜まったものではないが。
「そう考えると、君は随分丸くなったね」
「そりゃあ、高校では平穏な暮らしが出来てるので」
「なるほど。確かに君がこれまで全く注目を浴びることが無かったからね」
「ええ。ですけど、最近イレギュラーが」
「例の幼馴染君だろ? それならほら」
詩織先輩の視線の先には太陽を反射して光り輝く銀髪をした少女がいる。
何故か電柱の後ろに半分ほど身を隠した状態で。
「……もしかしなくても尾行されてます?」
「君は相変わらず鈍感だ。そんなのじゃあまた刺されてしまうよ?」
「やめてくださいよ。縁起でもない」
「それでどうする? このままイチャイチャするかい?」
小悪魔のような笑みを浮かべて詩織先輩がこちらに頭を近づけてくる。
周りから見ればカップルが身を寄せ合って歩いているようにしか見えないだろう。
後ろから天雲さんが見ていることを知った上でやっていると思うと本当に性格が悪い。
「詩織先輩が刺されても知りませんよ?」
「それは大丈夫だろう。そうなったら君が助けてくれる。違うかい?」
「そこまでわかっててやっているのであれば、なおさら性格が悪いです」
本当にこの人は……
いや、そんなことよりも早めに天雲さんを撒かないと。
多分、この距離なら俺だって確信はないはず。
髪を上げてるし眼鏡も外してる。
「で、どうするんだい?」
「そりゃ、撒くしかないでしょ。走れますか?」
「走るしかないんだろう? 安心してくれ僕は運動が大の苦手だ」
「どう安心しろっていうんですか……」
見た目通り詩織先輩は運動が苦手みたいだ。
どうしたものか。
全力で走れば撒けるだろうけど、多分詩織先輩がついてこれない。
「しょうがないですね。こっちです」
腕に抱き着いてきていた詩織先輩の手をがっしりと握って走り出す。
適当な路地を数回曲がって後ろに天雲さんがついてきていないのを確認してから手を離すと詩織先輩はぜぇぜぇと肩で息をしながら俺を睨んでくる。
「ま、まさかこんなに走らされるなんて。君は鬼か?」
「普段の自分の行いを振り返ってくださいね? 絶対に詩織先輩の方が鬼なので」
「それはそうかもしれないね。それよりも、ここはどこだがわかるかい?」
「わかんないっすね。適当に路地に入ったので」
「じゃあ、まずは大通りに戻ろうか。目的地のショッピングモールからだいぶ離れてしまっただろうし」
「ですね。行きましょうか」
しゃがみこむ詩織先輩に手を差しだす。
すると彼女はニヤリとしてその手をとる。
「こういう事をナチュラルの出来るところが君のモテる所以じゃないかな?」
「詩織先輩は変な勘違いしないでしょ」
「どうかな。僕だって乙女だ。君のようにルックスのいい男にこんな扱いを受けたらコロッと惚れてしまうかもしれないよ?」
「冗談キツイっすよ。先輩はそんな人じゃないでしょ」
詩織先輩がそんな風に俺に惚れる姿は想像がつかない。
だからこそ、俺は一年間この人と一緒にいるのかもしれないが。
「バレてたか。っと、こんな話をしていないで速くショッピングモールに行こう。目当ての書店がそろそろ開くころだ」
「はいはい」
すっかり新刊に興味を戻した詩織先輩が俺の手を引っ張って先導する。
俺はそんな詩織先輩に手を引かれながら目的地に再び向かい始めるのだった。
【理奈視点】
「さっくん凄くカッコよくなってたな~」
久しぶりに家に行ったけど、家も全く変わってなくて安心しちゃった。
この調子でさっくんと昔みたいに仲良くなりたいな。
「にへへ。学校が凄く楽しいや」
私はつい最近起こった出来事を思い返しながら頬を緩めていた。
大好きだった幼馴染の男の子に再会できたのだから、これ以上に嬉しいことは無い。
これからも幸せな日常を送れるとニッコニコで休みの日に駅前を歩いていると、凄く美人な人を見かけた。
「誰か待ってるのかな? すっごく綺麗な人」
クラシカルワンピースを着た長い黒髪に紫紺の瞳をしている絶世の美少女。
ああいう見た目の人を大和撫子って言うんだっけ?
本当に綺麗。
「……え?」
そう思って見ていると、どうやら彼女の待ち人が来たみたい。
あんなに美人な人を待たせる男の人が、どんな見た目をしているのか気になったからそっちを見てみて私は言葉を失った。
「さっくん!?」
そこにいたのは紛れもない私の幼馴染だった。
しかも、学校の時みたいなボサボサの髪に眼鏡って言う地味な格好じゃない。
しっかりと髪をセットしていて、眼鏡も外していた。
正直言って、ものすごくカッコいい。
「な、なんでさっくんが」
その衝撃過ぎる光景に一瞬思考がフリーズしてしまったけど、こんなことをしている場合じゃない。
二人が付き合っているか確かめないと!
それから私は二人を尾行したけど、気づかれてしまったのか途中で撒かれてしまった。
「そ、そんな。さっくん、彼女いたの?」
そんな話は聞いたことないし、さっくんも言ってなかった。
でも、腕組んでたし。
凄く仲よさそうに話してたし……
「どうしよ!? さっくん盗られちゃう」
私の方が先に好きだったのに、高校で現れたポッとでの泥棒猫にさっくんが取られちゃう!?
それだけは嫌だ。
なんとしてもさっくんを振り向かせないと。
【理奈視点終了】




