第2話 初恋を叶えるために
【理奈視点】
お母さんの仕事の都合で春から転校することになった。
転校自体は小学生から中学生に上がる時にも一回したし、そこまで驚くことじゃなかった。
でも、一つだけ気になることがあるとすれば……
「さっくん元気かな~」
小学生のころ、いつも私と一緒に居てくれた男の子。
明るくて社交的で。
奥手だった私をいっつも引っ張ってくれたヒーローみたいな存在だった。
「あのまま転校せずにずっと一緒に居れたらどれだけ幸せだったのか」
タラレバを言っても仕方がない。
私は再会することができた時のためにいろんなことを頑張った。
奥手だった性格を直したし、勉強や運動にだって力を入れた。
おかげでクラスの中心人物になれたと思う。
この調子で高校生活も頑張ろう!
そう思って張り切って登校して私は驚いた。
アレ、さっくんじゃない!?
髪は伸びてメガネもかけている。
だけど、雰囲気というか空気感というか。
そう言うものが昔と一緒だ!
これ、絶対に運命でしょ!
しかも隣の席になれたし。
「やった!」
先生に指定された席に向かいながら誰にもバレないように喜びをかみしめる。
本当にこんな運命みたいなことがあってもいいのか。
そう思って、さっそくさっくんに話しかけてみる。
でも、さっくんは私のことを覚えていないらしい。
確かに髪の色も苗字も変わってるからわからなくても無理はないと思うんだけど。
気が付いてほしかったな~
◇
授業が始まるときに教科書がないのを口実にさっくんと机をくっつけてみる。
少しだけ動揺してそうだったけど、すぐに教科書を見せてくれる。
やっぱりさっくん優しい!
「ねぇ」
「ん?」
「その髪切らないの?」
「俺はこれくらいが落ち着くんだよ」
「ええ~でも、もう少し表情が見えたほうが落ち着くんじゃないの?」
さっくんの前髪で隠れた顔を見たくて、つい手で彼の前髪をサッと上げてしまった。
でも、それで改めて確信した。
キリっとした琥珀色の瞳。
小学生の頃よりも男の子らしい顔つきになってた。やっぱりイケメンだ!
「……本当に私たちってあったことないの?」
「さっきも言ったけどないはずだよ。流石に天雲さんみたいに目立つ子を過去に見てたら忘れるわけないから」
どうしてもさっくんのほうから気づいてほしくて聞いてみるけど、やっぱりわからなかったらしい。
う~ん、悲しいけど私の印象も昔に比べてがらりと変わってるから仕方がないのかな。
「……そかそか。さっきから変なこと聞いてごめんね」
じゃあ、機会を見て私が幼馴染であるって言って驚かせないとね!
にしても、やっぱりさっくんはイケメンだな~
◇
昼休みになった瞬間、私はクラスメイトに囲まれてしまった。
さっくんとすぐに話したかったのに……
なんとかクラスメイト包囲網を抜けてさっくんの後を追う。
「あれ? 屋上の扉開いてる?」
立ち入り禁止って聞いたけど、もしかしたらさっくんがいるかもしれないし。
そう思って扉を開けて屋上に出てみると、気持ちよさそうに昼食をとっているさっくんが目に入った。
「これチャンスじゃん」
それからさっくんと話してみて気づいたことだけど、私のこと自体は覚えてたらしいけど印象が変わりすぎて気づけなかったらしい。
まあ、そうだよね。
「そりゃあ、小学六年生のころに転校してから三年も経ったからね」
「それもそうか。じゃ、俺は弁当食べ終わったから行くわ」
「ちょ!? なんでそうなるの? 普通は幼馴染との感動の再会を祝して会話を交わすもんじゃないの?」
「いや、そういうのは良いかな。それじゃ」
さっくんは弁当箱を速攻で片づけて屋上を後にしようとする。
何とか引き留めようとしたけど……
「なんでそんなに避けるの!」
「避けてないよ。ただ、俺は平穏な高校生活を送りたいだけだから」
「ぐぬぬ~絶対にさっくんを振り向かせるから!」
「教室で絶対にさっくんって呼ぶなよ!?」
それだけ言って屋上を出て行ってしまった。
「……ええ」
もっと楽しい会話をしたり、今まで会えなかった空白を埋めるみたいに楽しい時間を過ごせると思っていたのに。
まさか、こんな風に避けられるなんて。
「私、嫌われるようなことしちゃったのかな」
心当たりはない。
転校するときもちゃんとお別れを言えたし、仲違いするようなことは無かったはず。
じゃあ、なんで?
「ま、まさかもう彼女がいるとか……?」
そうだったら私に興味がないのも頷ける。
いや、でも、ええ~
「そ、そうと決まったわけじゃないし! 少し観察してみることにしよう!」
まだ、私の初恋は終わってない!
もしかしたら、久しぶりに会ったから戸惑ってるだけっていう可能性もあるわけだし。
悲観しすぎるのは良くないよね!
できるだけポジティブ思考をしながら私は一人屋上でお弁当を食べることにした。
【理奈視点終了】




