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平穏な高校生活を送っていたらなぜか銀髪碧眼転校生(幼馴染)に全力で言い寄られるようになってしまった件  作者: 夜空 叶ト


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第1話 印南君の壊れる平穏な高校生活

 平穏な高校生活。

 そんなものに憧れる高校生はそこまでいないと思う。

 高校生であれば華やかな青春を夢見たり、楽しい生活、刺激的な生活を送ることを望むものだろう。

 だが、俺は違う。


「お前っていっつもそうやって座ってるよな。もう少し誰かと話したりしねぇの?」


「俺はこんな風に誰とも話さずに教室の隅で窓の外を眺めてる方が楽しいんだよ」


 教室の左端一番後ろの席に座りながら俺は窓の外をゆっくり眺める。

 頬杖をついて眺める窓の外は桜が咲き誇り、暖かな春の風が俺の体を撫でる。


「相変わらず変わってるなお前。てかそのボサボサの髪、そろそろ切らないのか?」


「切らないね。俺はこれくらいの髪の長さの方が落ち着くんだよ」


「マジで変わってるな。高校二年にもなって、そんな創作物の中に出てくる陰キャのような生活してるなんてさ」


「別になんだっていいだろ? 宮田には関係ないんだからさ」


 宮田みやた かけるは高校一年の頃から同じクラスでこんな風にどうでもいい事を話す仲だ。

 金色に染めた短い髪、カラコンでグレーの瞳。

 身長は高い方で、少しチャラ目な印象を受ける。


「そうは言ってもな。印南いなみはなんでそんなに目立つことが嫌いなんだ?」


「何だっていいだろ。それよりほら、そろそろSHR始まるぞ?」


「そうだな。じゃ、俺は戻るわ」


「うい~」


 こうして俺の平穏な日常が進んでいく。

 このまま高校二年も終わって気が付けば三年になって。

 大学生になるんだろう。


「俺はこれくらい平穏な方が性に合ってていいな」


 再び頬杖をついて窓の外を眺める。

 やはり気持ちのいい春の風が頬を撫でる。

 これからもきっと平穏な生活が続いていくのだろう。


「お~い、席に座れ~」


 やる気のない気だるげな担任の声に従ってクラスで談笑していたクラスメイト達はそれぞれの席に座る。


「はい、今日からみんなは授業が始まるわけだけどそんな君たちに朗報だ。転入生が来るぞ~」


『マジか!?』


『それって女子ですか!? いや、美女ですか!?」


『転校生……ついに俺たちにも春が!!』


 男子たちが一気に騒ぎ始める。

 確かに転校生なんて高校生活において一大イベントだろう。

 まあ、俺には関係のないことだが。


「じゃあ、入ってきてくれ」


「はい!」


 鈴のなるような綺麗な声を発して教室に入ってきた転校生を見たクラスメイト達は数秒間フリーズしていた。

 理由は俺にもわかる。

 入ってきた彼女の容姿がとんでもないほどに整っていたからだろう。

 透き通るような銀髪にサファイアのような綺麗な青い瞳。

 スラっとした体形にメリハリのある体型。


「ありゃあ、男子からの人気が凄そうだな」


 ぼそりとそんな感想が口から出てしまうほどには素直に美しいと思った。


「初めまして! この度、都立西ケ峯高校に転校してきた天雲あまくも 理奈りなです。わからないことも多いので優しくしてくれると嬉しいです!」


 元気に挨拶をしてお辞儀をした彼女に拍手が巻き上がる。

 クラスメイト達は美少女の転校生が入ってきたことに喜びを隠せないでいるようで、歓喜の雄たけびを上げている奴すらいた。


「じゃあ、天雲は一番後ろに開いている席に座ってくれ。え~隣の印南に何かわからないことがあれば聞いてくれ」


「はい。わかりました」


「……」


 マジかよ。

 なんでこんなに目立つ人間が俺の隣の席に座ることになるんだ。

 このままじゃあ、俺の平穏な高校生活がぶち壊されかねない。

 早急に席替えをしてもらいたいものだ。


「これからよろしくね! 印南くん」


「ああ、よろしく天雲さん」


 引きつりそうになる表情筋を何とか引き締めてなるべく笑顔で返す。

 ここで彼女から反感を買ってしまったら、尚更面倒なことになる。


「じゃあ、連絡事項を伝えるぞ~」


 それからは特に何か問題が起きるようなことは無く、淡々とSHRが進んでいった。

 気になることがあるとすれば、時々難しそうな顔をしながら天雲さんが俺の顔を見てくることくらいだ。


「……なにか?」


「いや、前にどこかで会ったことなかったかな~って」


「ないと思うけど。というか、天雲さんみたいに綺麗な銀髪の人に会ったのは今日が初めてだし」


 そもそも、この日本で暮らしていてここまで綺麗な銀髪をしている人を見るのなんて珍しいと思う。

 瞳の色に関してもそうだ。

 だから、こんなにも特徴的な人を見たら忘れるはずはないと思う。


「そっか。変なこと聞いてごめんね?」


「いや、気にしないでくれ」


 それだけ返答すると彼女は前を向く。

 俺もそれにつられて前を向いた。

 以降、難しい顔で見つめられるようなことは無かった。


 ◇


『ねえねえ、天雲さんはどこから転校してきたの?』


『彼氏とかっている?』


『好きな人は?』


 HRが終わった瞬間に天雲さんはクラスメイト達に囲まれていた。

 俺は変なとばっちりとかが飛んでくるのが嫌だったからその場を退散することに。


「宮田、お前は行かなくてもいいのか?」


「いけねえよ。あそこまで囲まれてるし、さすがにあそこまで美人だと緊張する」


「そんなもんかね」


「そんなもんなんだよ。お前は良いよな~隣の席でさ」


「そこまでいいもんでもない。何なら変わって欲しいくらいだ」


 有名人の近くにいると何かと注目を集めてしまうかもしれない。

 もう修羅場を経験するのなんて御免だ。


「俺も変われるなら変わりてぇよ」


 宮田はため息をついて肩を落とす。

 肝心なところで行動できないところがこいつの残念なところだと思う。


「それよか、印南は話に行かなくてもいいのか?」


「興味ねぇよ。俺は平穏な暮らしができればそれでいいんだからさ」


 変な問題に巻き込まれないならそれでいい。

 まあ、下手に近づくと何かに巻き込まれそうだからできる限り距離を取りたいところではあるんだけど。


「本当にそればっかりだよな。お前は」


「良いだろ別に。じゃあ、授業始まりそうだからそろそろ戻るわ」


「ああ。またな」


 俺が席に戻るころには天雲さんに群がっていたクラスメイト達も席に戻ったようだった。

 これで少しは落ち着けるな。


「印南君、教科書見せてもらってもいい?」


「……ああ、まだ届いてない感じ?」


「そうなの! なんか配送の遅れで来週くらいまで届かないらしい」


「そういう事ならわかった。いいよ」


「やった! ありがとね」


 天雲さんは嬉しそうにガッツポーズをすると机を俺のほうにくっつけてきた。

 なんだか距離感が近い女の子だな。

 こんな距離感で近づかれたら、普通の男子ならコロッと恋に落ちてしまいそうなものだ。

 彼女のあだ名を勘違い男製造機とかにしてもいいかもしれない。


「ねぇ」


「ん?」


「その髪切らないの?」


「俺はこれくらいが落ち着くんだよ」


「ええ~でも、もう少し表情が見えたほうが落ち着くんじゃないの?」


 言いながら彼女は俺の目にかかっている前髪をサッと上げる。

 いきなりなんてことをするんだ。

 今日が初対面のはずなんだが……


「……本当に私たちってあったことないの?」


「さっきも言ったけどないはずだよ。流石に天雲さんみたいに目立つ子を過去に見てたら忘れるわけないから」


 なぜ先ほどからこんなことを聞いてくるのか。

 まあ、気にしても仕方ないか。


「……そかそか。さっきから変なこと聞いてごめんね」


 そう言う彼女の顔は作り物みたいに美しかった。

 うん、やっぱり見たことないし会ったこともないな。

 その横顔を見て俺は改めてそう確信するのだった。


 ◇


「はぁ、なんか疲れた」


 二年生になって初めての授業と言う事もあって、精神的に疲弊した俺は屋上で一人昼飯を食べていた。

 昼休みになるとここで一人で過ごすというのが高校一年間で培った俺のルーティンという奴だ。


「この昼休みの時間が癒しだなぁ~」


 自分で作った弁当を食べながら外の景色を眺める。

 まだ桜は咲いており、暖かい陽光が全身を包んでくれる。

 何て心地のいい日なんだろう。


「あ、こんなところにいた!」


「……」


 俺が優雅な昼休みの時間を噛みしめていると屋上の扉が開かれる。

 そこから入ってきた人物は一日にしてクラスの中心人物になった天雲さんだった。

 いったいどうしてこんなところにいるんだ。

 俺の予想では今頃クラスの女子たちに囲まれて教室で昼食をとっているはず。


「屋上って立ち入り禁止じゃないの?」


「そうだけど、ここの鍵って結構緩くてさ。ガチャガチャすると割と簡単に開くんだよ」


「確かに開いたけど、というか開いてたけど」


 どうやら俺がちゃんと閉めていなかったらしい。

 自分の不出来を呪うばかりだ。


「……それでなんでわざわざこんなところになんで来たんだ?」


「いや、印南君と一緒にお昼食べようと思って!」


「なんでなんだ……」


 ことごとく、俺の思惑が外れる。

 絶対に関わり合いになることは無いと思っていたのに。


「だって私、印南君に絶対に会ったことがあるから」


「……ないって」


「いいや、絶対にあるよ! 髪が伸びてメガネもかけてて雰囲気は完全に変わってるけど、絶対にさっくんだもん!」


「その呼び方……もしかして理奈ちゃん?」


 小学三年のころに知り合った女の子に確かに理奈という名前の子がいた。

 でも、苗字は天雲じゃないし髪の色も銀髪じゃなくて黒髪だった。

 しかし、言われてみればあの子の瞳の色も綺麗な青色だった気がする。


「そうだよ! やっと気づいてくれたねさっくん!」


「……だいぶ変わったね」


 見た目も性格も何もかも変わっているような気がする。

 昔は俺の後ろをついて歩いてきてオドオドしていたのに、今となっては元気いっぱいなクラスの中心人物だ。

 昔の俺と立場が完全に逆転している。


「そりゃあ、小学六年生のころに転校してから三年も経ったからね」


「それもそうか。じゃ、俺は弁当食べ終わったから行くわ」


「ちょ!? なんでそうなるの? 普通は幼馴染との感動の再開を祝して会話を交わすもんじゃないの?」


「いや、そういうのは良いかな。それじゃ」


 下手に天雲さんにかかわると面倒なことに巻き込まれそうで仕方がない。

 ぜひとも距離を置かせていただきたい。


「なんでそんなに避けるの!」


「避けてないよ。ただ、俺は平穏な高校生活を送りたいだけだから」


「ぐぬぬ~絶対にさっくんを振り向かせるから!」


「教室で絶対にさっくんって呼ぶなよ!?」


 高校一年のころに何も問題が発生しなかったというのに、高校二年は二日目にして大問題が発生してしまった。

 これからどうなるかわからないけど、学校での立ち回りを気をつけないといけない。


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― 新着の感想 ―
小6で転校して高二で再開なら4年か5年では?
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