第17話 理奈と添い寝
「つ、疲れた」
「お疲れ様。ちょっと休憩にしようか」
「僕も賛成だ。あまり根を詰めすぎてもあまり良い結果は得られないからね」
「ふぅ、私も疲れましたぁ」
俺と天雲さんが休憩をしようとすると、自分たちのテキストを解き進めていた詩織先輩とユアも俺たちと一緒に休憩を始める。
勉強合宿と言ってもずっと勉強を続けていくと、自然と効率は落ちていく。
効率が悪いまま惰性で勉強を進めてやった気になるのは一番良くない。
「後輩君はそこまで疲れた様子はないね」
「そうですか? まあ、俺は勉強がそこまで嫌いじゃないですから」
俺は自分の知らない知識を吸収するのがかなり好きだ。
知的好奇心を満たされるし、知らないことを知れるのは中々に気分が良いからだ。
「朔夜先輩って結構知的な人ですよね」
「そんなことないさ。ユアだって真面目に勉強してたじゃないか」
「私は、テストで良い点数を取って教員になりたいので。目標があると動けるタイプなんです」
「凄いね本当に。私そういうのできなから尊敬しちゃうな」
俺達は談笑しながら、勉強の疲れを癒す。
気が付けば二時間ほど休憩をしていて、俺たちは慌てて勉強を再開した。
ちなみに言うと、俺たちは全員でわからない所を補い合う形で勉強を教え合った結果かなり効率よく勉強できた。
最初の方に自信がなさそうにしていたユアも一日目の夕方くらいにはそれなりに自信がついたような顔をしていた。
◇
「ねぇさっくん。一緒に寝ていい?」
「……すでに寝る気満々じゃないか?」
一日目も終わり、風呂や夕食を済ませて早めにベッドに寝転がっていると寝間着姿の天雲さんが入ってきた。
いつも結んでいる髪を降ろしていて、薄い青色のパジャマを着用していた。
正直、ものすごく可愛い。
「えへへ、ダメ?」
「どうせ、強く拒んでも引かないだろ。君は」
「バレてたか。私は頑固だからね~」
無駄な抵抗はやめて俺はそのままベッドに寝転がる。
なんだか、疲れたし。
「天雲さんは本当に積極的になったね」
「そりゃ、なんとしても振り向いてもらいたいですから。もうちょっと詰めて」
「はいはい」
俺がベッドの端によると、天雲さんは遠慮なく俺の隣に寝転がってきた。
女の子特有の甘い匂いが鼻孔をくすぐってなんだか変な感じだ。
こんなに女の子と密着するのは初めてって言うのもあるし。
「昨日はありがとね。さっくん」
「別にいいって。俺はあの状況で当たり前のことをしただけだから」
目の前で助けれる人がいたら助ける。
それが俺のポリシーだ。
目立ちたくはないけど、それを理由にして誰かを見殺しにしたりするのはあまりにも後味が悪い。そんな思いをするのは御免だ。
「さっくんのそういう所凄く好き」
「抱き着いてくるなよ」
「好きだから良いじゃん」
天雲さんとは反対方向を向いて寝ている俺の背中に抱き着いてくる。
彼女の柔らかい双丘が俺の背中でむぎゅうっと潰れている。
凄くドキドキするけど、それを表に出すと天雲さんがつけあがる気がするから絶対に出さない。
「良くはないだろ」
「いいの~それより、私は名前で呼んで欲しいんだけどな」
「……」
別に名前で呼ぶことにそこまで忌避感があるわけじゃない。
でも、なんだか名前で呼んでしまったらいけない気がするんだよな。
何でなのかは自分でもわからないけど。
「だって、水城先輩もユアちゃんも名前で呼んでもらってるのに私だけ苗字にさん付けって距離があるじゃん」
「それはそうかもだけど」
「私はさっくんともっと仲良くなりたいな~」
天雲さんが耳元でささやいてくる。
それにゾクゾクっとしてしまう。
こんな超絶美少女にここまでされて襲い掛からない俺の鋼の精神に感謝してほしい。
「わかった。けど、一つだけ条件がある」
「何?」
「俺のことをさっくんとして見るのはやめてくれ。正直居心地が悪いんだ」
「……どういう事?」
天雲さんは再開してからずっと俺のことを小学六年生のころのさっくんとしてしか見ていない。
中学で変わってしまった俺からしてみると、ずっと昔の姿を見られているように感じて苦痛なんだ。
どれだけ気持ちを伝えられても、彼女が見ているのはさっくんで印南朔夜じゃない。
そんな気がして苦しいんだ。
「ようは、今の俺を見てくれってことだ。そうしてくれたら名前で呼んでもいい」
「わかった! 出来る限り今のさっ……朔夜君を見るようにする」
「ならいいよ。理奈」
今、さっくんと言わなかった時点で少しは今の俺のことを見てくれるようになればいいなと思った。
そして、少しだけ関係性が深まった俺たちはそのまま眠りに……
なんて出来ることなく、俺は心臓が高鳴りっぱなしで眠ることができなかった。
ふと、後ろを向いてみれば理奈が気持ちよさそうに寝息を立てていて少しムカついたのでデコピンをお見舞いしておいた。




