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平穏な高校生活を送っていたらなぜか銀髪碧眼転校生(幼馴染)に全力で言い寄られるようになってしまった件  作者: 夜空 叶ト


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第15話 体育館倉庫で閉じ込められる二人

「ねえさっくん」


「ん? どした」


「今ってどういう状況なの?」


「それは俺が知りたかったりする」


 そう。俺達が置かれている状況は普通では起こりえない状況だった。

 四月がもう少しで終わり、今日一日を乗り切ればゴールデンウィーク。

 そんな日に俺たちは何故か体育館倉庫に閉じ込められていた。


「これってどれだけ引いても開かない感じ?」


「少なくとも俺の力では開かないな」


「だよね。どうしよ」


 俺たちは体育の授業で授業で使った道具の片づけをしていたら、係の人が間違えて鍵を閉めてしまったらしいのだ。

 そして、今日は体育館を使う部活は全て休みで声を出しても誰かに気づいてもらえる可能性は低い。


「スマホは……持ってないよな」


「うん。体育の授業だからね。流石に」


「だよな。どうしよ」


 真夏とか、そう言う環境下じゃないからマジだけど。

 長時間ここに閉じ込められたら少しばかり不味いかもしれない。

 今日は普段よりもかなり気温が低い。

 確か十五度とかだった気がする。


「……とりあえずこれ羽織っておけ。寒いだろ」


「え? でも、このジャージもらったらさっくんが寒くない?」


「大丈夫だ。そこまで変わらないから」


 本当は少し寒いけど、ここでジャージを貸さないで天雲さんが風邪を引いたら目覚めが悪い。


「じゃ、じゃあ、ありがたく借りるね。えへへ」


「そうしてくれ」


「にしても、本当にどうしよ。このまま出れなかったらヤバくない?」


「かなりやばいな。死にはしないだろうけど」


 いや、このままゴールデンウィークに入って誰も学校に来なかったら本気で不味いかもしれない。

 そうなってしまったら、本気で死ぬ可能性が出てくる。

 だけど、ここで開かない扉を前に変に動くと無駄に体力を消費する。


「さっくんと一緒に死ねるならそれも良いかも」


「怖いこと言うなよ。何とかして脱出しないとな」


 と言っても、この体育館倉庫には窓がない。

 かなり上に通気口があるくらいで、人が出られる場所は鍵のかけられた入り口くらいしかない。

 その扉は鉄製でタックルとかをしても、絶対に破ることはできないだろう。


「うん。でも、何からする?」


「……やる事無いんだよな~」


 現状、俺たちに出来ることは何一つない。

 入り口は鍵がかかっていて、どうしようもない。

 かといって、通気口は絶対に人が通れるほどの隙間がない。


「だよね」


「とりあえずは、助けが来るのを待つしかないよな。もしかしたら、詩織先輩とユアが助けに来てくれるかもしれないし」


「……どうしよ」


 そこで、初めて天雲さんが震えていることに気が付いた。

 多分だけど寒いから震えてるとかそう言うのじゃない。

 俺も似たような症状が出たことがあるからわかる。


「天雲さん、もしかして暗いとことか狭い所って苦手?」


「はぁ、はぁ、な、なんで?」


「震えてるから。それに呼吸も荒いし」


「じ、実はね。どっちも苦手なの」


 目に見えて彼女は苦しそうだ。

 半分くらいパニック状態に陥っているのかもしれない。

 トラウマとか、そう言った類いだろうか。


「大丈夫か?」


「ちょっとしんどいかも。さっきから、呼吸しずらくて」


 言った通り、さっきから呼吸が荒くて肩で息をしている感じだ。

 この環境に長く居させたら気絶しかねない。

 何とかしないと。


「ちょっとごめんな」


「……はぁ、はぁ、ふぇ?」


 荒い呼吸を繰り返す天雲さんを抱き寄せる。

 冷や汗をかいているようで、少し湿っている。

 本当に大丈夫なのか。


「今は、俺の鼓動だけに集中しろ。他の余計な事は一切考えなくていい」


「う、うん」


 天雲さんを抱きしめて落ち着かせる。

 こうでもしないと本当に倒れてしまいそうだったから。

 その甲斐もあってか、先ほどよりも安定した呼吸をしている。

 少し安心したな。


「少しはマシになったか?」


「う、うん。暗いのと狭いのはマシになったけど。凄くドキドキしてそれどころじゃないかも」


「なんだそりゃ。とりあえず、パニックが治ったみたいでよかった」


「あ、ありがと。えへへ」


 天雲さんは俺の胸に頬ずりをしながら背中に手を回して抱きしめてくる。

 普段なら拒否していただろうけど、この状況では拒否をすることもできない。

 それに、こうして二人で抱き合っていたほうが温かくていい。


「なんか懐かしいな」


「うん。昔はよくさっくんに抱き着いてたな~」


「だな。確かに。だからこんなに懐かしく感じるのか」


「私はいつでもこうやって抱きしめてくれても構わないんだけど?」


「今回は例外だ。流石にパニックになりかけの奴に冷たくするほど腐ってないからな」


 あのまま放置していたら、高確率で天雲さんは倒れていただろう。

 この環境下で意識がなくなるのは不味い。


「ええ~別にいつでもしてくれて良いのに~」


「ないから。それよりジッとしてろ」


「う、うん」


 こうして、俺たちは抱き合ったまま時間を過ごした。

 時計が無いからどれくらい時間が経ったのかわからないけど、体感的に言えば二時間が経過したころだろうか。


 ガチャ


 そう言う音と共に体育館倉庫の扉が開いた。


「やあ、君たちの頼れる部長が助けに来たよ!!」


「大丈夫ですか、お二人とも」


「おっと、お邪魔をしたかな」


 詩織先輩がニヤニヤしながら、抱き合っている俺たちを見つめてくる。

 言いたい事はわからないでもないけど、先輩が来てくれなかったら本当に不味かったのでありがたい。


「いえ、本当に助かりました。天雲さん、大丈夫?」


「……」


 声をかけても反応がない。

 そう思って視線を下に向けてみると、天雲さんは気持ちよさそうに寝息を立てていた。


「寝てるみたいですね。どうします? 朔夜先輩」


「とりあえず保健室に連れてくよ。今の時間は?」


「あと三十分で最終下校時間ですけど、事情を話せば保健室を使わせてもらえると思います」


「そうか。じゃあ、二人ともついてきてもらってもいい?」


「勿論だとも」


「はい」


 こうして俺は天雲さんを抱きかかえて保健室へ。

 先生に事情を話して許可を貰い、天雲さんをベッドに寝かす。


「では、ここは私が見ておくので朔夜先輩は荷物を取ってきてください」


「助かる。じゃ行ってきます」


 俺は着替えを済まして天雲さんと自分の荷物を持って保健室に戻った。


「戻りました。天雲さんは起きましたか?」


「いいや。まだだね。一体何があったのやら」


「シンプルに体育館倉庫に閉じ込められてたんです」


「それだけで倒れますかね?」


 抱き合っている姿を見られているから、二人は事情を詳しく聞く気満々だった。

 隠すような話でもないから事情を説明した。


「なるほどね。それなら、パニックになるのも頷ける」


「ですね。助けが遅くなってしまい申し訳ないです」


「いやいや、助けに来てくれただけで本当にありがたいから。あのままだったら、マジでヤバかっただろうし」


 あの状況が長く続いていたら、もっと厄介な事になっていたに違いない。


「まあ、無事で何よりだ。それじゃ僕とユア君は先に帰るから後は任せたよ」


「お先に失礼しますね朔夜先輩」


「はい。二人とも本当にありがとう」


 二人は仲良さげに会話しながら帰っていった。

 明日は朝から合宿だから、きっとその準備もあるのだろう。

 何故か、集合場所が俺の家になってたし。


「さて、俺も天雲さんが起きたら帰りますかね」


 気持ちよさそうに眠っている天雲さんを見つめる。

 本当に綺麗で昔とは見違えた。

 でも、昔みたいに俺に懐いていて。

 どう対応すればいいのか困る。


「幸せな悩みなんだろうな」


 こんなことで悩んでいると他の男子生徒にバレたら普通に殺されかねない。

 はぁ、本当にどうしよ。

 頭を悩ませながら、残りの時間を過ごすのだった。



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