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第5話 元獣は食料を観察する

ブックマークありがとうございます!

 出会った四匹のうちの一匹が腹を空かせているため何がいいか探していると、いつもの木の実がある場所の近くにいることに気が付いたため、木の実を持てるだけ持っていくことにした。


 どれを食べるのか分からないためそこにあるすべての種類を持っていくことにし、念のためあの棘も持っていくことにした。


「にゃ~」


 木の実を取っていると何処からか少女にとって聞きなれない鳴き声が聞こえた。


 少女が今まで聞いてきた声は威嚇する声や唸り声、苦痛に歪む声や、嘆き悲しむ声等だけであった。しかし、今聞こえてきた鳴き声は警戒心などが全く含まれていなかった。


 興味を持った少女はすぐに鳴き声をしたものを探すと、簡単に見つけることができた。


「にゃ~」


 そこには白い毛並みに茶色や黒が混じっている小さな動物だった。木の実を取ろうと爪を立て高く跳躍するもあと少しのところで届いていない。


「にゃ~……にゃ?」


 木の実が取れないことにたいして悔しそうにしている姿をしばらく観察していると、不意にその動物と目があった。


 水を覗き込んだ時に見た自分と同じ金の瞳を持った小さな動物はじっとして動こうとしなかった。そのため少女も観察を続けた。


 お互いが視線を外すことなくしばらくの間見つめ合い続けていると、先に動いたのは少女だった。


 観察に飽きた少女は耳の片方をピクリと動かした後、口に大きな笑みを浮かべた。


 それを見た小さな動物は肩を大きく揺らし顔を青くする。


「にゃ、にゃにゃ~!」


 逃走を図ろうとした途端に少女が小さい動物に襲いかかった。その日、いつも静かな森の中で一匹の情けない叫び声がこだました。






 四人は一先ずこの場にとどまることにした。


 食料調達、もしくは森からの脱出を考えたが、ここは一歩動けばそれだけで死んでしまいかねない危険地帯。体力がなく、しかも空腹の状態でそんな行為に及べば絶対に死んでしまう。故に四人は体力の回復と同時に残った所持品や武器の損傷具合を確かめていた。


 しばらくして四人ともある程度回復したところで、なんとあの獣の少女が見たこともない様々な木の実や山菜、何故か果実らしきものを腕一杯に抱えて戻ってきた。


「こんなに……いったいどこにあったんだい?」


 目の前の信じられない光景に目を疑ったレティは素を出してしまい、しまったと思いい少女を見たが特に気にした様子がなかったので一先ず話しても大丈夫だということがわかった。


 しかし、少女がしたのはある先ほど少女が出てきた木々の間を指さすだけ。


「はぁ」


 森の中にあったということだろう。だが、レティはその森の中のどこにあったのかが知りたかったがそれ以上聞く勇気がなかったためにレティは黙り込んだ。


「えぇっと、食べ物を持ってきてくれてありがとう。それで~、その、口に銜えているのは……」


 少女の口には毛深い四足歩行の四人にとってとても見慣れた動物が、否、愛玩動物が銜えられていた。

 背中を銜えられているせい皮が伸び、脱力したかのような格好をしている白に茶色や黒が加えられている良く見知った獣。


「猫ね」


 紛れもない猫だった。それは三毛猫と呼ばれるごく一般的にみられる特にこれと言って希少価値があるわけでもない猫。ただし、極端に雌が多く、雄の場合は希少とされているが、残念ながら少女が銜えているのは雌だった。


「ぐわ」


「にゃ!」


 少女が口を開けると当然のごとく猫は重力に従った地面へと落下するが、さすが猫というべきか、見事空中で体制を整え四本足で綺麗に着地した。


 しかし、見事に着地して見せた猫は、すぐに首を少女に捕まれ、そのまま荷物のように持ち上げられてしまう。


「食べる」


「にゃぁ!」


 雰囲気で察したのか猫は酷く狼狽した声を上げる。本当は人間の言葉が分かっているのではないかという錯覚さえしてしまいそうになる。


「って、いやいやいや! さすがに猫は食べないよ! それに生だし」


「焼いてあったら食べるんですか。リッチェルさん、あなた、こんな可愛い動物を食べるのに戸惑いはないんですか!」


「いや、戸惑いはないとは言えないが、やっぱり緊急の時には……な?」


 信じられないものを見るかのようにエルはリッチェルを見据える。


「確かに、私達の命には代えられないし」


「他に食うもんがなけりゃぁ生でも食べるかもなぁ」


 目の前の毛のない動物達が餌を前に言葉を言い合っている。なぜ早く食べないのかが疑問に思う。


 空腹な獣ならば相手が何であろうと、どんな物でも腹が満たせるのならば何だって喰らいつくす。生き物は食べなければいけない、食べなければ苦しいし、食べなければ辛いのをみんな知っているから。


 だが、目の前の毛のない動物達は苦しいのに餌に齧り付こうとしない。そこで、少女は生きていたら食べれない者たちなのかもしれないと考え、目の名前の小さい動物を殺そうとする。


『お主ら! 儂のことを何食量扱いしておるんじゃ!』


 突然聞こえてきた声にその場の全員が辺りを見渡すが、言葉を言いそうな動物は見つからず、かといって聞きなれた声でもないことにリッチェル達は警戒し、少女は耳をあちこちに向けている。


『無視をするな! ここやここ! 目ん玉磨いてよー見んかいな!』


 声の咆哮に同時に視線が向くとそこには心底威嚇しているが全く出来ていない可愛らしい猫が毛を逆なでて虚勢を張っていた。


『儂の意思を無視し続けた挙句、あまつさえ食料扱いするとかどうなんじゃ、お主等』


「ね、猫が喋ってる!」


 最初こそ有り得ないと思っていたが目の前で見れば信じるしかない。四人は驚愕し代表としてレティが声を上げる。


『なんじゃ! 猫が喋るのが尾かいいと思うとるのか小娘!』


「えぇ!? だ、だって、猫って普通喋らないじゃない。喋ったとしてもにゃ~、ぐらいしか聞いたことないわよ?」


『うっ……確かに、じゃが、儂はこうして喋っておる。他の猫と同じにするんじゃないわい』

「そ、それは、すみません」


 代表としてリッチェルが謝罪文を言う。


 年老いた老人のような喋り方をする猫を見た四人は同時に思う。ある程度成長した亜獣や魔物などではあえて人の言葉を使うことがある。だが、人類が誕生した中で人の言葉を解す動物は目撃例がない。


 つまり、今この場にいる四人こそが第一発見者という称号を得たのだ。


『わかればええんじゃ』


「しかし、不思議なことがあるもんだなぁ。猫が喋るのも、今俺達がこうして無事でいられるのも不思議なこった」


『かぁ~、これだから人間は安保なんじゃ』


「んだとごらぁ!」


 自分達よりも背丈が小さく力も弱い動物に安保呼ばわりされたギデは憤慨する。


『よいか? お主達の声はこの森の中にかなり響いておる。普通ならば今頃腹をすかせた害悪共の血肉になっとったところ。じゃが、ここにいる嬢ちゃんが殺気を周囲にばら撒いているせいで、大抵の亜獣共は寄り付かんのじゃよ』


 説明を受けた四人は驚きながら少女を見るが、やはり何も感じることはなかった。


『嘘は言ってはおらんぞ。現に今儂は濃厚な殺気に当てられて気が狂いそうじゃ。お主達人間は殺気に鈍感じゃ。獣なら生まれた時から持っているはずの危機察知能力がお主達は欠如しておる。まさに弱者じゃ』


 猫に言われたくはないと思ったが、人間である四人はそれを否定することはできなかった。


 森精霊のように魔力を多く内包しているわけでもなく、地精霊のように鍛冶が得意なわけでも力が強いわけでもなく、海棲獣のように水の中でも呼吸ができるわけでもない。


 海棲獣は人間とほぼ同じ能力しか持たない。ただ、陸か海のどちらで生活している死か違いがない種族。しかし、海棲獣は移動方法さえ確立してしまえば陸上でも生活可能なのだ。今現在では海棲獣に人間の足を付ける事ができる魔法具がすでに作られているため、今現在の最弱種は人間と言っても過言ではない。


 しかし、人間も努力をすれば力をつけるし、殺気にも敏感になる。だが、やはり努力が必要なのは人間だけなのは違いない。


『しっかし、この嬢ちゃんは何者なのじゃ? 頭には儂らと同じ耳があるし尻尾が二本もある。全く持って不思議じゃ』


「いや、俺はこの嬢ちゃんよりもまずお前の存在が不思議だ。なぁ、お前は何なんだ?」


『にゃ?』


 言葉をかけながら猫に手を伸ばし、首の皮を掴んで持ち上げたギデはそのまま自分と同じ視線にまで猫を持っていく。


「俺はお前みたいな喋る猫ってぇのを知らねぇ。正直に言うが、気味が悪い。俺が知っている猫は人間の言葉は喋らねぇんだよ。それに、お前は頭がいい、まるで、人間みてぇによ」


『……』


 厳つい言葉で脅すように話しかけるギデに対して猫は何も口にしない。そこでふと、それを見ていたリッチェルが昔動物を飼っていた友人の言葉を思い出した。


 動物には声帯は存在するが人間のように流調な言葉を話すことは構造上できない、と言っていた。ならば、目の前にいる猫はいったいどうやって声を発しているのだろうか。


 そんな思い悩む様子を観察している少女は、特に猫が喋ることを気にすることはなく、ただ何が起こるのかをじっと見ていた。


『なんでだとお主等は考える?』


 表情があまりない猫の顔がニヤリと笑った気がした。


「突然変異とか?」


「魔素を多量に吸収して亜獣化したとか?」


『いやいや、残念ながらハズレじゃ』


「じゃあ、何なんだよ……いってぇっ!」


 流石にいつまでも持ち上げられていたのが不快に思ったのか猫は爪を立ててギデの顔を容赦なくひっかいた。


『いつまでも持っておるではないわ。年上を敬うことを知らんガキめらが』


「ガキって、じゃあお前はいくつなんだ?」


 これでも大人の自負を持っているリッチェルの言葉を待っていたかのように猫は再び口に笑みを浮かべながら人間達を見上げて言う。


『儂の名前はアイデン。御年九十八の、お主等と同じ人間じゃよ』

猫のしゃべり方を大阪弁しようと思ってたんですけど、

のじゃ喋りが好きだったので年寄りに設定にしました。

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